株式投資用備忘録

株式投資用の備忘録です。


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昨今の日本株市場において、「ROE経営」に対する意識の高まりが感じられる。

つい数年前のこと、私がまだアナリストだった頃の記憶として、「無借金経営」であることをプラス面として主張する企業は少なくなかったが、今では好財務というだけでは投資家に評価されることはなくなってきているように感じる。蓄積した株主資本をどう成長に活かし、あるいは株主に還元するのか、という点に経営者、投資家双方の主眼が移っている。

このような市場環境の変化を踏まえ、1960サンテック(以下サンテック)について、備忘録として考察する。

結論としては、サンテックは今後数年間において積極的な増配と自己株買いを実施する可能性が高く、その結果、現状3%程度である同社のROEは最低でも5%程度まで上昇するだろうというものである。

 

※【お願い】当ページでのコメントは、あくまでも個人的見解に基づくものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。また記載内容についても、100%正確であるとは限りません。くれぐれも投資は自己責任でお願い致します。

 

サンテックの現状

同社は東京に本社を置く、独立系の電気工事事業者である。

HPで開示されている決算説明会資料によると、売上の約60%が内線工事、約25%が電力工事、10%強が空調給排水工事となっている。

http://www.suntec-sec.jp/uploadimages/topics/setsumeikai_suntec_2017_06.pdf

比率はまだ高くはないが、近年は空調給排水工事の受注・売上が伸びている。これは2014年に同事業を展開する武蔵野工業社を買収し、体制が強化されたことも理由の1つとなっている。

http://ke.kabupro.jp/tsp/20140320/140120140320024269.pdf

また、2017年3月期の短信によると、売上の10%超が清水建設向けとなっている。

加えて、売上の1/3が海外での売上となっている。

http://ke.kabupro.jp/tsp/20170512/140120170505459321.pdf

事業内容は上述の通りだが特筆すべき点は少ない。堅実な経営を行っている企業である。

 

一方、財務体質に於いては、上場企業の中でも相当上位に入る健全性を有している。

純資産は約300億強、総負債が約135億であるが、換金性が高いと考えられる資産として、現金が約78億、受取手形・完成工事未収入金が約183億、投資有価証券約40億、投資不動産約45億等を保有している。

http://ke.kabupro.jp/tsp/20170512/140120170505459321.pdf

株価純資産倍率(PBR)は6/23引け時点で0.43倍、時価総額は約130億だが、先程の換金性の高い資産から総負債を引いた金額は約215億であるから、タダより更に安い水準で取引されている計算になる。

 

日本のROE経営の現状

アベノミクスが始まった2013年頃より、日本市場に於いてROE経営なるものが少しずつ、しかし確実に浸透しているように感じる。

背景としていくつか重要な変化があるのでこれを紹介する。

①:伊藤レポート

2014年8月に経済産業省から公表された「伊東レポート」では、企業が目指すべきROEの水準として8%という水準を明記している。以下当該箇所を引用する。

「ROE を現場の経営指標に落とし込むことで高いモチベーションを引き出し、中長期的に ROE 向上を目指す「日本型 ROE 経営」が必要。「資本コスト」を上回る企業が価値創造企業であり、その水準は個々に異なるが、グローバルな投資家との対話では、8%を上回る ROE を最低ラインとし、より高い水準を目指すべき。」

http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140806002/20140806002.html

 

②:ISSの議決権行使基準

同じく2014年11月、議決権行使助言大手の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(以下ISS)が発表した2015年度の議決権行使の助言方針として、過去5年間のROEの平均値が5%を下回る場合には、株主に経営トップの取締役選任議案に反対するように勧告する、とした。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO79444080X01C14A1DTB000/

こちらは5%という水準ではあるものの、伊藤レポートと同じくROEの重要性とその下限を示したという意味で重要である。

 

これらの変化の背景として、日本企業のROEがグローバルな観点では見劣りするという事実がある。

大和証券の調査によると、米国企業のROEは16%程度、欧州が約11%に対して、日本企業のROEは8%に留まっている。

http://www.camri.or.jp/files/libs/386/201703271233181258.pdf

平均をとれば日本企業はROE8%という水準を達成している訳であるが、当然に平均以下の企業が多く存在するわけであり、また欧米に比して水準が低いというのは事実として重要と考えられる。

 

蛇足ではあるが、欧米の主要な企業は、高いROEを実現するために、有利子負債を上手く活用している。一般的に、有利子負債の金利水準は、投資家が求めるROEよりも低く、また金利については損金となり税効果が発生することもあり、企業の永続性を脅かすような過剰な水準でないならば、日本企業も積極活用すべきものである。

しかしながら、日本企業は実質無借金の企業が現在も増加しており、これも日本企業のROEが低い理由である。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO17587800S7A610C1DTA000/

 

ROEの重要性と複利の効果

釈迦に説法であることは明白だが、改めてROEの重要性を確認したい。

ROEとは投資家が投じた資金がどれだけのリターンを生むのかという指標そのものであるから、基本的には高ければ高いほどよい指標である。

また、ROEはある程度長期で考えるべき指標であり、複利の効果を考えた時、ROEの多寡は大きな意味を持ってくる。

ROEが3%の企業が10年間経営を行った時、投資家が投じた資産は約34%増えることになるが、ROEが5%なら約63%、8%なら約116%、10%なら約159%の増加となる

 

サンテックのROE経営

話をサンテックに戻す。改めて、同社のROEを確認すると、昨年度の実績でわずかに3.2%であり、伊藤レポート水準には遠く及ばず、ISSの基準からも程遠い。

一方で、同社がROE経営を意識していないかと言えば、過去については疑問符のつく経営と言わざるを得ないものの、昨年度に策定した3カ年の中期経営計画からは、変革の息吹が感じられる。

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material_for_fiscal_ym&sid=30839&code=1960

資料の中で、株主還元について興味深い記述があるので引用する。

「第11次中計期間(筆者注記:2017年3月期~2019年3月期の3カ年)における株主還元については、配当・自己株式取得を通じて、株主還元率原則100%を目指し、積極的な株主還元を行う。

 ⇒第11次中計期間における株主還元の考え方を明示」

ROEを上げるためには分子を増やす(=利益を増やす)か分母を減らす(=株主資本を減らす)しかないが、総還元性向100%を目指すということは、純資産の増加を止めるということであるから、サンテックは自身の株主資本が過剰になっていることを認識していると考えられる。

また、同じ資料の巻末に記載の質疑応答要旨からは、ROE5%程度を目指していることが読み取れる。

再度引用する。

「<Q2>第11次中計についてROEの安定的向上とだしているが、計数目標は営業利 益を示しているのみです。第11次中計における計数面の考え方を、もう少し詳しくお伺いしたい。

<A2

本業による利益を着実に確保、増加させていくことが安定的成長の根本であり、それによりROEの段階的な向上に繋げる、という考え方から企業価値を高める営業利益額を計数目標としたものです。

 一方、第11次中期経営計画の期間においては、原則100%の株主還元を行うこと、即ち株式資本は増加させないとの考えも明記しております。

 以上から、営業利益23億円を目標とすることで 目指そうとしているROEの水準については、ご理解頂けるもの考えております。」

一般的な法人税率を考慮すると、営業利益が23億円ならば、純利益は約15億になるから、純資産が増加しない(=約300億)前提でのROEは5%程ということになるだろう。

 

2017/3期(昨年度)の実績

この中期経営計画を反映し、2017年3月期に於いて、同社は25円の配当(総額約474百万円)と約64万株の自己株買い(総額約423百万円)、合計約9億円の株主還元を実施した。当該年度の純利益が952百万円であるから、概ね株主還元については自身に課したルールを守っていると考えられる。

また、PLの実績としては、期中に1度下方修正を行い営業利益が下振れたものの、政策的な有価証券の売却益の計上等を行っており、純利益は期初予想10億円→実績約9.5億とほぼ想定通りの着地となった。2018年3月期の営業利益の予想は11億円であり、中期経営計画で掲げた2019年3月期の営業利益23億円の達成は課題だが、ROE向上の為、同社が純利益の水準向上を意識している点が感じられる。

 

今後の展開

去る2017年6月21日、サンテックは2018年3月期の業績予想に関して、純利益を9億円→16億円と7億円上方修正した。

http://ke.kabupro.jp/tsp/20170621/140120170616408495.pdf

修正の要因は過去の海外工事に関連した一過性のプラス要因であり、一般的な企業の場合はそれほど大きな話ではないが、同社に限るとかなりポジティブな修正だと考えられる。

2017年3月期に実施したとおり、2018年3月期に於いても、総還元性向100%という方針が堅持されるのであれば、今後増配や自己株買いのアナウンスが発生する蓋然性は非常に高く、かつその総額が7億円増加したことになるだろう。

時価総額が約130億円であるから、16億円の株主還元は比率にして12%超という水準である。

加えて、2019年3月期についても、同様に大幅な株主還元が行われる蓋然性が高い。

更に、本中計の株主還元方針を堅持したとしても、純資産が増えないというだけで、利益が増えなければROEは向上しない

現在の実力値と考えられる利益水準から導かれるROE3%程度という水準から、最低でも5%にROEを引き上げる為には、更なる株主還元方針を提示する(=純資産を減らす)か、買収等何らかの方法で利益を伸ばす必要がある

従って、2020年3月期から始まるであろう次の中期経営計画に於いても、株主還元の姿勢が大幅に後退するということはないではないか。

 

機関投資家の動向

このようにROE経営への意識、変化の息吹が感じられるサンテックに関して、積極的に投資をしている機関投資家が出てきても不思議ではないだろう。

2017年3月期の名簿を見ると、下記の大株主が4.1%の株を保有していることがわかる。

「CGML PB CLIENT ACCOUNT/COLLATERAL」:777千株:4.1

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=ir_material&sid=74508&code=1960

この株主は2016年3月末の株主名簿には存在しておらず、2016年9月末時点では3.6%の株を保有していたようである。

http://www.kabupro.jp/edp/20161110/S100910I.pdf

 

先に紹介した伊藤レポートでは、企業と投資家の建設的な対話が重要とも指摘されている。

対話が成功した一例を上げると、8140リョーサンという企業が、2016年7月に大幅な自己株買いを発表、その後に実施した結果、株価が70%以上上昇し、PBR1倍を超えたという事例がある。

この企業の大株主名簿を見るとシルチェスターというファンドが約20%の株を保有していたという事実が浮かび上がる。また、大量保有報告書に保有目的の記載があるが、一部引用すると下記の通りである。

「提出者は、発行者に対して増配、自己株式の買入の頻度又は総量、金庫株消却その他資本政策の変更を要求することがある。」

http://www.kabupro.jp/edp/20160624/S1007S30.pdf

https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/download?uji.verb=W0EZA104CXP001003Action&uji.bean=ee.bean.parent.EECommonSearchBean&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1498191472425&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=&preId=1&mul=%E3%83%AA%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%B3+es%3AE24872&lpr=on&cal=1&era=H&yer=&mon=&pfs=5&row=100&idx=0&str=E24872&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=&s=S100AHWD

実際にどのような対話があったのかを外から知ることは出来ないが、機関投資家が大株主になった結果、発行体が大規模な株主還元を実施し、結果、株価の上昇が実現されたという事実は大きい。

 

サンテックに対しても、どこの機関投資家が、どのような理由で買っているかは定かではないものの、企業価値向上に資する存在として、その動向に注目、期待したい。

 

終わりに

サンテックの株価水準が低い最大の理由は、過剰すぎる自己資本と、それに起因した著しく低いROE水準にあると考えられる。

今後積極的な株主還元の姿勢が周知されていくことで、同社の株価に水準訂正が起こることを期待したい。

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