<故障発生>

8月8日に白石島の新港に入港した時のことだ。
行き足を止めるためにギアを後進にいれて、また前進に入れたらすごい音がした。
そのあと、後進では進むが前進ではガラガラ音がして進まない。
てっきりロープかなんかがペラにからんだと思った。

なんとか係留してからナイフをもって潜ったけれど何もからんでいない。
ぺらも変形していない。
シャフトが曲がったような形跡もない。

ペラの見える水上から目視しながら前進にすると、ペラがゆっくりと回る。
異常にゆっくりとだ。
原因がわからない。

こんな時はわかる人に相談するに限る。
電話したのは池川ヨット工房の池川さんだ。
「僕の仕事は木造ヨットの船大工です。僕の趣味はヨット乗りです。」と自称する池川さんはすぐに松山で一番というエンジンやさんに問い合わせをしてくれた。
そして貰ったアドバイスは「エンジンとシャフトのカップラー周りの点検」だった。

「ピン・ポーン」だった。

僕の船のエンジンにはゴムカップリングが付いているのだけれど、そのゴムが破断して、エンジンの回転出力がプロペラシャフトに伝達されなくなっていた。

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ゴムカップリングをエンジンから外して、ペラ側とエンジン側から眺めた写真だ。
エンジン側の金属部分がゴムから完全に破断して内側に落ち込んでいる。
こらあかんわ。


<応急修理>

原因が分かったら次は対応だ。
池川さんによると、最近のヨットでは「芯だしをしっかりして直結する」のが主流だそうだ。
古いヨットではゴムカップリングを使っているが、ヤンマーのエンジンでは4本のナット止めが標準で、僕の船のように6本のボルト止めは見たことが無いそうな。
おなじゴムカップリングを入手するのは時間がかかるという見立てだった。


破断したゴムカップリングを外した状態
エンジン側のフランジにはエンジン側からボルトが差し込まれており、このボルトがエンジンにあたって抜けない。
なんちゅう設計や。

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さて困った。
正規部品がすぐ手に入らなければ、応急部品を作るしかない。
こんな時に頼りになるのが領さんですわ。
何度が電話で相談して試行錯誤の結果たどり着いたのが「長ナットで直結し、その間に木の緩衝材をいれる」だった。

白石島からフェリーで本土に渡れば材料が手に入る可能性がある。
ネットで検索して笠岡市のフェリー発着場に近いホームセンターを検索して電話する。
「M10 で 40mm のステンの長ナットありますか」
「6本だけあります」
あっという間に材料の確保ができた。
ほんまに便利な世の中になったもんですわ。

で、ホームセンターに行って材料の調達と緩衝材の加工をしたのがこれ。
21mm 厚みの「たもの木」をホームセンターの工作場を借りて加工した。
2枚重ねて 42mm 、長ナットが 40mm なので、2mm が緩衝分だ。

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まずエンジン側のフランジのボルトに長ナットを固定する。

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次にたもの木の緩衝材を入れる。

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最後にプロペラシャフト側のフランジからボルトを入れて長ナットに止める。

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さて試走。
ちゃんとペラが回る。
前進も行進も大丈夫だが、エンジンの回転を上げて、2200 を超すとエンジンの振動がきつい。
これ以上に回すのはちょっと耐えられそうにない。
2200 だと、平水で4ノットかなぁ。

書いてしまえば「これだけかい」なんやけど、よじ艇とボナンザ艇の応援ももらいながらトラブル発生からここにたどり着くのに2日かかりましたわ。


一時は白石島に船を置いて帰ることや、よじ艇に曳航されて帰ることも考えていたのに4ノットでも自力走行できるようになったので、1日の走行距離を少なめにして日数をかけて泉大津までかえって来た。



<恒久修理>

正規部品はブリジストンなんだけど、これまた領さんが代替品を扱っているところを探してくれた。
そことメールでやり取りしてピッタリの「タイヤ型ゴムカップリング」を入手した。

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入手した部品を取り付けた結果は、ペラを 3000回転まで上げて回しても異常振動は起きない。
完全に以前の状態に戻すことができた。

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エンジン修理完了。

これでまた、クルージングに出かけられるようになった。

「ヨットはエンジンや」