日本橋三越の向かいのコレド室町側の通りを昭和通り方面え。やがて首都交をくぐると、そこは小舟町。

 その小舟町に、旨い鰻屋、高嶋家がある…デパートの高島屋とは嶋の字が違う…昔は曲がり角に、鰻の幟がヒラヒラしていたが、今でもあるのだろうか。

 高嶋家は、明治8年=1875年に神楽坂に創業、明治20年に小舟町に移ったという…この辺りは、空襲で焼けたはずだから、戦後に建てられた建物は古くはないが、昭和の風情がこもり、鰻を食べるのには持ってこいの雰囲気だ。

写真:昭和レトロな名店構えと店内には神棚が。

 この店では、幻の鰻と呼ばれる、共水が食べられる…幻は、大げさだと思うが、養殖鰻では、旨さというてんで、ブランドが確立している。

 いくら鰻という素材が良くても、しょせん鰻の旨さは、タレと職人の腕前できまる…それが揃ったら、鰻は旨くなる。高嶋家のは、焦げがなく、皮目はパリッと香ばしく、中身はフックラ、高く評価ができる鰻である。

 肝焼きも旨いし、ダシがきいた肝吸いも旨い。硬めのご飯も好みにピタリ、浅漬けの新香も旨い…昔から、チャントした鰻屋は、新香が旨いのはきまりごと。

 共水は、坂東太郎ほどではないが、生産量が少ないので、店によっては何時でも、というわけには行かない。事前に有無の確認が安全だ…が、共水がなくとも、旨い鰻の味も姿も一流だ。それはそれで良し、ガッカリすることはない。

 

 共水の生産地は静岡で、大井川焼津藤枝スマートICに近く、側を大井川が流れている。

 大井川の源流は、南アルブスの雪解け水が、50年近い年月を経て、湧き出る伏流水だという。

 そんな水が、鰻の養殖には適しているのだろうが、共水は水ばかりではなく、たっぷりと時間をかけて、育てているのも特徴だ。

 ふつう鰻の養殖期間は6~10ヶ月だが、共水は15~30ヶ月、平均18ヶ月をかけるという。

 旨い天然物は5年ほどというが、共水は2~3ヶ月毎の池替えで、ハウス養殖というから温度管理も加わえて、天然鰻が受ける四季の変化を2年間で、何度も鰻に施すのだそうだ。

 生産量が少ないから、全国で食べられるのは40軒ほどらしく、東京を中心に関東では30軒ほど…だから、幻と言うのだろう。

 ちなみに、清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の弟、溥傑の書があるそうだが、それを見たことはないが、サカナ君の色紙は、写真に撮った。