春ツアー八王子公演を観て、加賀楓について考えたこと① | カバオの現場探訪記

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ハロプロのこと、現場のこと

先に言っておきます。けっこう長いです。

 

モーニング娘。'18 春ツアー初日2日目八王子、計4公演参加してきました。

 

セトリとしては初日のパターンのほうが好きかな。恋レボラブマよりダンスサイトやハピサマが好きです。というのと、後ろの方の構成も全体的に初日のほうがまとまりがあったかなあ、という気持ち。

 

で、加賀楓さんの話ですが、感想のコアになる部分はブログコメに書いたので、それをブワーッと膨らませて加筆する形で載せていこうと思います。

 

曲への入り方

昨秋のツアーからどこが一番変わったか、と訊かれたら、曲への入り込み方だと思います。歌、ダンス、表情などパフォーマンス全体としてこれまでに比べて曲に入り込んでいる感じがして、すごく良くなった。歌詞を歌って振り付けを踊っているのではなく、曲の流れに乗れているという印象を持ちました。

 

ある意味、否定的な意見も多いマロン先生の指導の賜物でしょうか。あの先生の言っていることは、一面では間違っていないと思います。ただ、では感情を乗せるためのテクニック、声の出し方、練習の仕方、そういう具体的なものを指導しているシーンがないのが、ヲタクの不満につながっているのかなと。

 

リーダーのブログに、かえでぃーが歌について訊いてくるという話がありましたが、ピッチの正確性だけでなく表現力という点でも、たくさん学んでほしいなと思います。で、その点ではかえでぃーはすごく成長の跡が見えました。

加えて3ツアー目の余裕というのもあるでしょうし、昨年1年間、色々と考えてやってきたことが身になってきて、意識しなくても出せるようになったのかなと思います。だから、表情や指先のちょっとした表現などが自然になっていて(前が不自然だったというわけではありませんが)、パフォーマンスとしてレベルが上っていました。


ということで、この辺のことをさらに詳しく掘り下げて考えてみたいと思います。

 

・意識型と憑依型

少し脱線しますけど、自分の中のざっくりとした分け方として、コンサートでのパフォーマンスには「意識型」と「憑依型」があると考えています。どこかに定義してある言葉ではなく、自分が勝手に考えた用語です。

 

意識型とは、この曲はこういう意味でこんな表情をして、こういうポーズを入れて、と組み立てている人。モーニング娘。では代表格は石田亜佑美ですが、去年のツアーではあえてそうやって考えるのを止めているという話もしていました。

 

おそらく譜久村リーダーもそうだし、若手だと野中美希ちぇるがそんな感じ。OGだと田中れいなもわりとそっちの傾向が強いかなと思います。れいなは初日が終わった時点で、映像で自分が抜かれるところを全部覚えて、次からキメていくという話をしていたことがあります。

 

憑依型は、あえてあらかじめ決めない部分を残し、その時のインスピレーションと流れでパフォーマンスを展開していく人。今のメンバーで言えば、小田さくら、そして佐藤優樹でしょう。

 

小田さんはカメラに抜かれていることがわかっていてもあえて見ない、と言っていましたね。抜かれるところだけ、特別に何かを入れるというのが感覚的に合わないのかなあという印象を持っています。本人に聞いたらまた違うかもしれませんけど。

 

もちろん、完全に分けられるものでもなく、みんなどちらの部分も持っていてその濃淡や強さがそれぞれ違うよね、という話です。どちらが優れているという話でもありません。

・加賀楓は意識型?憑依型?

で、自分の印象として、ここ数年のかえでぃーは意識型だったんです。というか、先生に言われたことをあれもこれも意識しないといけない、と思い込んでいたタイプ。完璧主義で、歌にダンスに表情に、と頭の容量がオーバーしていた。

 

1曲勝負の実力診断テストなら作り込んで作り込んで、3分だけ全力で集中すればそれもできます。ミスムンのように、ある種の演技みたいな曲もやりやすい。娘。に入ってからは、おそらく2時間のコンサート、しかもツアーが続く中では振り付けと歌割りをこなすのが精一杯という段階からスタートしていた。

 

ただ、個別握手会なんかで話していると、本来彼女が持っている能力って、憑依型なんですよね。「ここは良かった」という部分の話をすると、良かったところほど、かえでぃーは一つずつ言語化するより感覚でやっている部分が大きい。

 

加賀楓さんのダンスがすごいと話題になった邪魔GOについて、個別で「回を重ねるごとに洗練されてきたね」って話をした時に、流れで「いやー、表現が細かくて、面倒くさいんですよね」って笑いながら言われたのは、びっくりしました。


あの細かな指先の表現力は、ここはこう、と作り込んだものかと思ったら、別に細かく考えていなくて「(うまくできるのは)鈴木愛理さんを見てたからですかねー」と。面倒くさいって言いながらあのダンスをやれちゃう人がこの世にいるのか、という素直な衝撃。

 

さらに話が逸れますが、前提として、これは彼女が非常に優秀な身体操作感覚の持ち主であることも関係していると思います。身体操作の感覚というのは、体を動かした時に、手脚を含む自分の体がどこでどういう形になっているか把握できる能力、ということです。

 

かっこよく見える角度を鏡の前で練習しても、ダンスの中でピタッとそこで止めるためには、この感覚が重要だと自分は勝手に考えています(もちろん筋力もいりますけど)。かえでぃーがこの部分で優れていることに疑いの余地はありません。文句があるならかかってこいや。

 

・憑依型から意識型、そして再び憑依型へ

閑話休題。意識型と表意型の話に戻ります。


移動とか場位置とか頭にいれることが山のようにあるモーニング娘。のツアーですが、慣れてくればだんだん頭に余裕ができて初日より多くのことを考えられるようになり、ツアーの中でどんどん成長していく、というのはまあ定番のパターンです。

 

ただ、加賀楓個人の出来として今回の初日を秋ツアーの後半を比べた時に、すでに今のほうが余裕があるというか、曲に入れているという印象を受けました。これは、パフォーマンスが全体として意識型から憑依型へ変化したのでは、という分析を自分はしています。

 

その変化のもっとも大きな要因として、曲について深く考える習慣を反復してきた結果、彼女の持っている感覚的に色々なことができる憑依型の能力が、引き出されてきたことがあるように感じます。

 

研修生に入ってすぐに抜擢をされていた時期は、新人なのに飲み込みが早く、すぐできるようになる、という部分を買われていたのでしょう。これはなんとなくの曲の解釈やテンションで憑依型としてやれてしまう、というのがあったと思います。今見ると、ずーっと楽しそうに歌ったり踊ったりしています。

 

そして、その後、ある種の器用貧乏というか、ある程度はなんでもできるんだけど、突き抜けられないという時期があったのですが(これが14年あたり)、今思うと、それなりに感覚でできてしまうからこそ深められず、当たった壁なのではないか。

 

そこで、壁を乗り越えるべく、あれもこれも完璧にしようとがんばって作り込む、意識型に一度変化した(15年あたり)。そこが「表情が硬い」とか「余裕がなく見える」と言われた時期。今まで感覚でやれていたことを、頭を使ってやろうとしたら、そりゃキャパがなかなか足りなくなります。

 

基本的なスキルの伸びもあって昇格はできましたが、モーニング娘。に入ってやはり2時間のツアーを意識型でやり通すというのは、本来の性質的に難しかったのでは、という気がします。歌に力みが出たりするのも、テクニックだけでなく意識が強すぎる癖のせいかなあと。

 

で、モーニング娘。として1年やっていく中で、曲のことを深く理解する習慣というのが彼女の中に根付いてきた。実際「曲の意味を考える」という言葉は、去年の後半、けっこう出てきました。


研修生の時もやっていなかったわけではないでしょうが、意識に変化があったと思います。表面的な喜怒哀楽や歌詞の意味というだけでなく、メロディーやリズム、振り付けと有機的に絡み合った「曲の姿」というのが加賀楓の中で像を結ぶようになった。

 

この点に関しては、シングルだけでなく、アルバム、ミニアルバムと比較的短い期間に「自分たちがオリジナル」という曲をいくつも渡され、パフォーマンスしたことも大きかったのではないでしょうか。

 

誰かのオリジナルがあると、その誰かの解釈を読み解こうとしてしまいますが、自分たちがオリジナルということは、世界観を理解するというより一から構築していくわけですから、正解があるわけでもなく、考える量は必然的に増えます。そうやって新曲を作り上げた経験は、既存曲を理解する上でも助けになったはずです。


そうして形づくられた深い理解に基づいて、加賀楓はこの春ツアーで、意識型ではなく、本来持っている憑依型のパフォーマンスを発揮し始めた。ひとつひとつ「ダンスはこう」「歌はこうやって」「こんな表情を」と作り込まず、曲の世界のなかで自然に振る舞えるようになりつつある。


3ツアー目ということで、意識して覚えなければいけないことも減るし、慣れて覚えるスピードも上がったことも相まって、憑依型のパフォーマンスがこうして目に見える変化として表れたのではないか。

 

自分が八王子で感じたことを言語化していくと、以上のような流れになります。まあ、本人が万が一、このブログを読んでも「??」って顔されそうですが(笑)

 

3千字を余裕で超えたので春ツアーでの個別具体的な話は次のエントリ以降に持ち越しますが、今思えば、秋ツアーの五線譜のたすきなんかに、その萌芽は見えていました。加賀楓は、確かな手応えを持ってこのツアーに臨めているのではないかなと思います。

 

次回更新・・・未定(笑)