前の回

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ヒンナヒンナ!!

 

最近、食べたレトルトカレー、

アシリパさんが印象的なこの鹿肉入りカレーを食いました。

インパクト強い。正直、「これ鹿肉なのか?」とよくわからず食べた。

食べてもいい“オソマ”っていう謳い文句にやられました。 

はい、近況以上。

 

ということで、いつもとやや出だしを変えてみた。

たまにはこういう出だしも良いんじゃない?

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ということで、今回の本はこちら↓↓

「フラットランド たくさんの次元のものがたり」

エドウィン・アボット・アボット 著 竹内薫 訳

出版社:9784062586535 

 

 

 

あらすじ:「ここはフラットランド。

二次元の国。

主人公の「正方形」はある日、

夢で一次元の国に行く。

しかし線の世界(ラインランド)で

正方形は「点」でしかなかった。

平面世界(フラットランド)に戻った彼の前に、

奇妙な訪問者が現れる。

空間世界(スペースランド)から来た「球」だった―。

異なる次元は、いかにして捉えられるのか?

三次元の住人たるわれわれは、どうすれば四次元を想像できるのか?

子供から物理学者まで、世界中を虜にした不思議な物語。」

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

―イマジネーションを刺激する作品―

図形が主人公というだけでも

なかなか「挑戦的」だなあと思う。

びっくりするのは書かれたのが1884年で、

アインシュタインの相対性理論が発表される

30年も前に書かれていたということ。

何がどう驚きかは

僕もはっきりとは言うことができないが...

 

我々の住むこの世界は

「点⇒線⇒平面⇒立体⇒その先は?」

という流れで構成されているというのを

なんとかその筋に明るくない人でも

それなりに分かりやすく

描こうと苦心している部分が印象的。

―平面世界の生活・異文化の衝突―

そもそもあらすじの部分は第2部に当たる部分である。

第1部はなにをしているかというと

平面世界(フラットランド)の生活様式なり

文化なりについていろいろと話している。

 

どのようにして

自分たちの形を理解しているのか、

身分制度はあるのか、

かつて平面世界は革命が起こりそうになり

(色彩を側面に塗ることでお互いを認識できるようにしようという法案が通りそうになったのだが、

それに関するいくつかの事件をここでは取り上げられている。

なんだか四色定理なんかがふと頭をかすめたりしたんだけれども)

大変だった話などなど

平面世界の文化を語り手である正方形が教えてくれます。

 

そして続く第2部からが

自分とは違う次元の世界に行き、

違う次元の住人と出会ってしまったら

どうなるのだろうか。

 

あるいは自分はその人たちから見て

どういう風にみられるのだろうか、

もしくはさらに高次元

(ここでいう高次元とは2次元から見た3次元世界の存在という意味)

の生命体と出会ったときに

どういうリアクションを取ってしまうのか。

 

まるでここの話は

異文化民族や人種と出会ったときの

How toを読んでいる気もして

なんだか単なる数学的な話ではなく、

当時の社会風刺も入っているのではないかとすら思える。

 

面白いのは、

自分が下の次元(線の世界)にて

懇切丁寧に平面世界の話をし、

理解してもらおうとしても理解されず、

逆ギレしてしまった正方形。

自分はもう少し分別があり

何に対しても理解を示せるような雰囲気を醸し出す。

 

しかし、いざ自分が

空間世界の存在と出会うと、

先ほどまで馬鹿にしていた

線の世界の住人同様、

いくら空間世界の存在が

言葉を尽くし説明しても

それに対し

「意味が分からない」

「人を馬鹿にするのもいい加減にしろ」

と怒るばかり。

 

人を図形に置き換え、

相互理解の難しさを説く。

これが案外核心をついていて

世の中概してこんなものである。

特に今は世界中こんな感じではないか?

―図形で描く世の摂理―

自分たちの生きている社会の思想やら

常識なんていうのが

常に「この世の正しいポイント(指標)」であり、

そこから逸脱した瞬間に

「こいつは異端である」

と決めつけてしまうのは

誰にでもありうることなのである。

 

それは国だけでなく、

個々人でもいえることであり、

だからこそ

なるべく自分の常識に合わせたいがために

「これは○○でしょ!」

という感じで

つい口を出してしまいたくなってしまうときがある。

 

本書は

アインシュタインが相対性理論を発表する前に

次元の話を書いた画期的な本であったと前述したが、

これはある種のSF譚でもある。

なぜなら図形を主人公にして

空間やら線やら点の世界を冒険するのだ。

どこからどう切り取ってもSFにしかならないでしょ。

 

さらに言えば、

当時の身分制度なり

男尊女卑を作品にうまく取り込みつつも

皮肉っているという部分は

やや社会派な面も見られるし、

出る杭は打たれる

という教訓めいたものまで書かれており、

オールジャンルな本であるといって差し支えはあるまい。

―巻末まで楽しめる写真付き本―

巻末にはこの物語に触発されたフォトが掲載されている。

 

題名は≪フラットランド≫である。

 

これまたイマジネーションを刺激される

不思議な作品になっている。

文章をおまけに

この写真だけを眺めるのも

また一興かもしれない。

 

というわけでなかなか遊び心あふれる

不思議な世界の物語であった。