ちょっとだけ『大切』なこと | 写真家・小澤太一の『logbook』

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小澤太一のなんでもない毎日の記録集

昨日のブログで『悲しいことがありました・・・』と書きましたが、そのことについて。

じつは昨日の朝、展示してある写真をチェックしていたら、
わりと大きなキズが写真についていました。

その前日の祝日はとても混んでいたし、ギャラリートークなどもあり、
バタバタだったりして、いつついたキズなのかわかりませんが、
少なくともこれだけ大きなキズが展示作業中に気がつかないわけがありません。

おそらく2/11(祝)の日に、なにかがぶつかっちゃったのか、どうしたのかで
とにかく写真にキズがついた、ということなのでしょう。

ついてしまったキズはもうしょうがないことだし、
今ここで大きな声で騒いでも、もとには戻らないこと・・・

ただ、この先に写真展をやる多くの人が、今、僕が感じている悲しい気持ちにならないよう、
ぜひみなさんにもちょっとでいいから考えてもらいたくて、このブログを書いています。

写真って何枚でもコピーできる・・・なんて思われちゃっているのか、
僕がこれまで個展やっても、写真に指で直に触ったりする方もいたりして、
『すみません、直接触るのはナシでぇ・・・』と言うこともゼロではありませんでした。

作家にとって写真は子どものように大事なものだと思うし、
(・・・僕には子どもがいないのですが)、だからこそ、見ていただく人にも
できれば大事に扱ってもらいたいんですよね。

実際に壁に展示してある写真は、作家側でも小さなゴミひとつもないように注意し、
そして現像所の方でも、ゴミがプリント自体につかないよう、
またわずかなスリキズなどもできないよう、
展示にかかわるプロフェッショナルが細心の注意をしまくって、
その先に展示されているはずなのです。

だったらガラスのついた額に入れればいいじゃないか・・・
という意見ももちろんあります。

写真にキズがつかないよう、オーバーマットをして、
そしてガラスに入れて展示する・・・

多くの美術館がそうしているように、
写真を守る観点からも、歴史的な写真作品については
そのような展示をされているものがほとんどです。

ただ、写真っていろいろな見せ方があるし、
僕が今回やっているような、額に入れないからこそ感じる
ダイナミックな世界観・・・みたいなものも表現の一部だと思うんですよね。

だけど、このようにキズがついて悲しい気分になる作家が世の中にいっぱいでてきて、
その後ろ向きな理由で、全部写真が額に入る展示が多くなったら・・・・

それはなんだか、また別の寂しさを生むような気がするのですよね。

実際にこうなってしまったらどうなるか・・・

もちろん写真のキズはもう戻らないので、キズがついたままの展示をするか・・・
すぐに現像所にお願いしてプリントを作り直してもらって、
そして加工にまわし、展示会場に持って来てもらうのか・・・

今回も現像所の人が、他の人のプリントがあったかもしれませんが、
急いで僕のプリントを作ってくれて、そして会場にもってくる手間・・・

当然、なくてもいい手間が増えるわけだし、予算だってかかるわけです。
みなさんが想像している以上に、一枚の写真って高いんです。

かなりの予算、そして手間・・・をかけても、でも作り直したのは
やっぱりこれから時間と労力を使って、
わざわざギャラリーまで僕の写真を見に来ていただく人に、
いいプリントを見てもらいたいから。


だから、もうこれから会場に行って、この写真をよく見ても、
どこにもキズはついていないはずです。

多くの人のご協力のもと、明日からも気持ちよくお客さんを迎えることができるでしょう。



みんなが写真を今よりも、ちょっとでいいので大事なものだと感じてもらい、
なるべくキズがつかないよう、たとえば雨の日などは・・・荷物を多く持っている時は・・・
リュックなどで後ろが判別しにくい時は・・・

とにかくちょっとだけ壁に展示されている写真そのものを大事にして、
そして作家とお客さんで一緒にいい展示空間を作ってもらいたいなぁ~なんて、
とても強く感じました。

また・・・たとえば、僕はいろいろな写真展を拝見させてもらっていますが、
会場にブックが置いてある場合もよくあります。

雑誌だったり、ポートフォリオだったり・・・

気になった作家の人は、他にもどんな作品を作っているのかなぁ~なんて
見たりしていますが、これも見終わったら、きちんと並べて置くようにしています。

だって、その方が、次の人が手に取ろうかな、と思うでしょ??
こういうことは、きっと一度でも展示をする側になった人は感じると思うんですよね。

いいギャラリー空間ができればいいなぁ~と切に願いながら・・・
そして今回の一件のことをいろいろ振り返りながら、
夜は一人で近所のラーメン屋さんでご飯を食べました。

カウンターの隣で、なかなかかわいい女の子が一人でタンメン
・・・かな??を食べていたのですが、
食べ終わった後,どこにも『お願い』が出ていませんが、
飛んだ汁をテーブル布巾で拭いて、カウンターの上に自分が食べたお椀をあげて・・・

『ごちそうさまでした』

なんかちょっとのことだけど、僕はこういう気持ち、スキスキです。