RA薬と妊娠その16 低用量MTXに対する父親暴露後に、有害妊娠リスク増大のエビデンスはない | 少佐の絵日記

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基本は自分用の備忘録なのです。
どーでもいいネタもたくさんあります。

取捨選択して見るベシ。

No evidence for an increased risk of adverse pregnancy outcome after paternal low-dose methotrexate: an observational cohort study.
Rheumatology (Oxford). 2014 Apr;53(4):757-63.

結果のみ、簡単まとめ
父親がMTX治療をうけていた妊娠113例と、MTX暴露のない412妊娠を比較。
・先天性奇形の発現率は上昇しなかった(オッズ比1.02)
・自然流産のリスクも上昇しなかった(オッズ比1.19)
・在胎期間、出生児体重に有意差はなかった




MTXと妊娠については、以前mixiからアメブロに移動してきた当初にまとめております。
RA薬と妊娠その1 MTXについて以前の考え方 2012-01-04
RA薬と妊娠その4 MTXに対する最近の思い 2012-01-06

その際、あまり男性についての記述はしておりませんな。



日本のMTX診療ガイドラインでは、
「男性に投与する場合は、投与中および投与終了後少なくとも3ヶ月間は配偶者が妊娠をさけるよう注意を与える」となっております。

が、
2年前に国立生育医療センター関連の講演会において、
ノルウェーのMonika 0stensen教授が、
「ダンセイデハ、ニンシンシュッサンニカンレンシテMTXヲヤメルヒツヨウナシ」みたいなことを(英語で)おっしゃってました。






MTXというのは、細胞分裂の際に効果を発揮する薬です。
反面、細胞分裂の際に何らかの悪さをする可能性が高い訳ですな。

人間の卵子は、ヒトが生まれたときにはすでに細胞分裂を終えておりまして、MTXによる卵子そのものの遺伝子異常がおこることは考えにくい。
受精卵になって、細胞分裂が再開して、はじめてMTXが悪さをする可能性が出てくる。

精子の場合は卵子とは違って、成人になってからもドンドンと新規作成され続けている訳で、そのため、MTXを飲んでる時に生まれでてきた新しい精子君たちには、リクツ上は遺伝子異常がでる可能性が存在する。

よってガイドラインでは、
MTXをやめて3ヶ月たってMTXの影響をうけたと思われる精子がいなくなってから妊娠へgo!するのがヨロシイという話しになっています


ところが、現実はそんなことはなくて、
・子づくりするためにMTXを3ヶ月休薬する必要性は証明されなかった
・父親のMTX治療が避けられない場合、家族計画を延期しないことが妥当である

ということになりました。