※本記事は、先日参加した開智高校の塾対象学校説明会の内容すべてをまとめたレポートではありません。説明会の中で、特に私の印象に強く残ったお話と、自身の教育観と深く重なった部分に焦点を当ててご紹介しています。説明会全体の内容については、別記事にて改めてまとめる予定です。ご了承ください。
パソコンにたとえられた二つの学びのスタイル
先日、開智高校の学校説明会に参加した際、加藤校長先生が語られたある話が非常に印象に残りました。それは「勉強ができる子にも、実は二つのタイプがある」という話です。その話を校長先生はパソコンにたとえて、非常にわかりやすく説明されていました。
ひとつは、ハードディスクに情報を大量に保存していくタイプ。いわゆる「暗記型」と呼ばれる学び方で、必要な情報を片っ端から覚え、知識量で勝負していくタイプです。もうひとつは、OS(基本ソフト)自体をアップグレードしていくタイプ。つまり、思考力や応用力といった「頭の使い方」そのものを磨いていく学び方です。
私自身、これまで多くの生徒を見てきて、確かにこの二つのタイプに分けられるという実感がありました。
暗記型の生徒は、特に中学生のうちは成績がぐんと伸びやすく、短期的な成果を出しやすいという特徴があります。一方、OS型の生徒は、成績がじわじわと伸びていくタイプが多いのですが、その力は高校、さらには大学、社会に出た後も長く伸びていく人が多いように感じます。
暗記型に偏ることのリスクと思考型の可能性
ハードディスク型の生徒——つまり暗記中心の学びをしてきた生徒は、高校の学習内容が複雑化してくると、成績が頭打ちになってしまうケースも少なくありません。なぜなら、高校では「覚える」だけでは対応しきれない、思考力や論理力を求められる問題が増えてくるからです。加えて、大学入試改革の流れもあり、単なる知識の有無よりも、それをどう使うか、どのように考えるかが評価される時代になってきていることも影響しています。
一方で、OS型の学びをしてきた生徒は、目の前の問題に対して、単に知っている知識を当てはめるだけでなく、「なぜそうなるのか」「他の見方はないか」といった視点で物事を捉える力があります。そのため、新しい問題や未知の課題に直面しても、臨機応変に対応することができます。
塾での学習においても、この二つのスタイルのバランスをどう取るかは非常に重要なテーマです。多くの塾では、短期で結果を出す必要性から、どうしても暗記型の学習に偏りがちになります。もちろん、暗記そのものを否定するつもりはありません。覚えるべきことを正確に覚える力も、学力の大切な土台です。しかし、それだけに頼っていては、生徒の将来にまでつながるような本当の学力を育てることはできません。
塾だからこそ育てたい「OS」にあたる力
当塾では、生徒の将来を見据えた指導として、「OSを育てる学び」、すなわち思考力・判断力・表現力といった非認知能力の育成にも力を入れていきたいと考えています。そういった力は、一夜にして身につくものではありません。だからこそ、当塾では中学3年生の新規入塾を6月までとさせていただいています。入試直前期に入ってからでは、思考力を育てる指導を行う時間的余裕がないためです。
理想的には、小学生や中学1・2年生の段階から、少しずつ「OSを育てる」学習を始めていくことが大切です。もちろん、全ての生徒が順調に伸びていくとは限りませんし、思考力の育成は目に見える成果が出るまでに時間がかかるため、指導する私たちや保護者の皆様にとっても根気のいる取り組みです。しかし、それでも私は、目先の点数だけではなく、その子の将来にまでつながる学力を育てていくことこそが、塾の本当の役割であると信じています。
だからこそ、「覚えるべきことはしっかり覚える」ことと同時に、「考える力を育てる」ことを、バランスよく丁寧に指導していきたいと思っています。単なる暗記で終わらせない、未来につながる学びを提供すること。それが私たちが目指す学習塾の姿です。これからも、生徒一人ひとりの可能性を信じて、じっくりと時間をかけながら、確かな力を育ててまいります。
思考する力を育てる——その先にある未来のために
ただ「できる」だけではなく、「考えられる」力を持った子どもたちを育てたい。私はそう強く思っています。与えられた情報を覚えるだけではなく、自分の頭で考え、自分の言葉で問い、自分の力で答えを見つけようとする——そんなOS型の生徒を育てていきたい、そんなふうに思います。
ただその道は、決して近道ではありません。成果が見えるまでに時間がかかることもありますし、結果が数字として表れるのはずっと先かもしれません。それでも、その子の未来を信じるなら、バランスはとりつつも、私はこの学び方の指導を選び続けたいと思っています。
高校に進学してからも、大学に進んでも、社会に出てからも、自分の力で考え、進んでいける人でいてほしい。そのために、今、目の前の一歩を大切にしながら、「思考する力」を一緒に育てていきたいのです。
時間はかかっても、じっくりと、確かに育っていくものがあると信じて——。