地域をフィールドに学ぶ「おがわ学」
埼玉県立小川高等学校は、令和10年度に創立100周年を迎える伝統ある学校です。今回の塾関係者対象説明会では、黒澤拓也校長先生から、今の時代に求められる教育のあり方として「地域から未来へ」「地域から世界へ」という2本の柱を掲げた取り組みが紹介されました。その中心にあるのが、地域を教材とした探究学習「おがわ学」です。
おがわ学は、中山間地域に位置する小川町の特性や課題を、実際に地域の人と出会いながら学ぶ実践的なカリキュラムです。少子高齢化や地域資源の活用といった現実的なテーマを、自らの視点で掘り下げ、答えのない問いに向き合いながら思考を深めていきます。おがわ学を通じて得られた知見や経験は、3年次に実施される「アントレプレナーシップ」の学びへとつながります。ここでは、仮想の会社を立ち上げて商品を企画・開発し、道の駅などで実際に販売、地元の銀行担当者にプレゼンを行い、地域住民を招いた「株主総会」で成果を発表するという、非常にリアルな実践活動が行われています。
こうした学びは、調べて終わるのではなく、考え、行動し、振り返るという学習サイクルが組み込まれており、思考力・表現力・協働力など、これからの社会を生き抜く力を育てるものです。総合型選抜をはじめとする大学入試でも高く評価される内容で、探究的な学びの1つの形とも言えそうです。
地域とのつながりが、生徒と町の未来をつくる
小川高校の学びは、学校の中だけで完結するものではありません。おがわ学を軸にした教育活動は、地域全体へと波及し、さまざまな形で地域貢献型の学びへと広がっています。たとえば、小学生に英語や音楽を教える「出前授業」、地域の高齢者に向けた健康増進支援活動など、生徒たちは自らが社会の一員として、地域の課題解決に主体的に関わる機会を多く持っています。
こうした地域連携の取り組みは、学力の向上や学習支援といった面だけでなく、地域の活性化といった町づくりにもつながる重要な役割を果たしています。小川高校の教育が、町の未来を考える力を育み、それを実行に移す力へと変換していく。その過程で生徒たちは、「誰かのために働く喜び」や「社会に貢献する誇り」を実感してけるのではないかなと思います。。
さらに、学習支援ツール「Classi(クラッシー)」を活用した個別最適化学習にも力を入れており、入学時の分析から各学期ごとの成績推移までをもとに、きめ細かな進路指導が行われています。得意分野をさらに伸ばし、苦手分野は確実に克服していく。目標をG-MARCHクラスの大学に設定するなど、生徒一人ひとりの可能性を引き出す丁寧なサポートが印象的でした。
↑図書室の隣には、「おがわ学」に関する展示コーナーがありました
世界とつながる日常──DXハイスクールとしての挑戦
もうひとつの柱、「地域から世界へ」という視点でも、小川高校は着実に歩みを進めています。同校は、全国で11校しか指定されていない「DXハイスクール・重点類型グローバル型」の一つであり、埼玉県では伊奈学園総合高校と並ぶ指定校です。この制度のもと、海外の姉妹校との交流が積極的に行われており、国際感覚や多様な価値観を育てるグローバル教育が日常に溶け込んでいます。
2024年度には、インドの姉妹校から生徒を受け入れ、本校生徒の家庭でホームステイを行いました。茶道や華道、うどん作りなど、文化を共有する機会を通して、お互いの国の理解を深める貴重な時間となりました。そして7月には、小川高校から13人の生徒がインドへ訪問予定。ドバイとの交流も予定されているとのことで、まさに「日常にある国際交流」が進行しています。
こうした国際的な学びと、地域を深く知るおがわ学が結びついている点こそが、小川高校の教育の大きな魅力です。「地域に根を張りながら、世界に目を向ける」――この両立こそが、小川高校が目指す教育のかたちであり、これからの時代にこそ必要な力を育む土台になっていると強く感じました。
↑東部地区に住む私には、校庭から見える風景に山並みが見えるのは、とても新鮮でした。