創作物語(4月)の始まりはこちらからどうぞ

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カレンダー祭りの下準備と称して 物語を話し出す不思議なカレンダーの絵の小学生達 

まずは一番手の良太が『銀の所長』

の話しをし終えると、

次は自分も不思議な体験をしたのだという

 ハルカ が皆に話して聞かせます

なんでも お金にまつわる話のよう

ハルカがひそひそと小声で聴かせる物語

 あなたもそっと耳を澄ませてみては?

 

《ハルカの話👩》

 

けっこう前の話しなんだけど

何か珍しいことを見たり聴いたりしたいなって思いながら、あたしはランドセルに入ったの

出てみるとね、そこは会社のようだった

 

まぁまぁな数の机と椅子、ソファー …で、奥の方にも部屋があるみたいで そこからゴソゴソと音がした

その奥の部屋からひょいっと顔を出したのは若い男の人だったわ

あたしは何をしてるか気になってその人に声をかけたの

カレンダーの絵が話しかけたって気づかない人がほとんどの今の時代、あたしも反応があるとは期待してなくて、何の気なしにだったのね

 

だからその人がこちらをびっくりした様子で指さして腰を抜かすのを見てこっちの方がびっくり!と同時に久々に話せる人間と会えたことにワクワクだったわ

 

まあなんやかんやで、その男の人と話すうちに、ここが会社で、その人は試用期間中の社員で今は雑用のようなことしかしてないこと、名前は『達也』さっきあたしを見てひどく驚いたのは、小さい頃にもカレンダーの絵が動いたりしゃべったりするのを見たことがあったからだってなことを話したわ


カレンダーの絵と話したことがあるなんて、あたしすごく親近感わいちゃってね それからは ちょくちょく達也の会社のカレンダーに行っては色々と話すようになったの


その会社はね、基本みんな外で働くみたい。試用期間中の達也以外は出払ってることが多かったわ。まあ、他の人がいたとしてもあたしの声も姿も見えないし聞こえないようだったんだけどね


でもあたしね、気にかかることがあったの。なんていうか、その…分かるかな…そこに行くと、身体が重いというか…なんだかモヤモヤっとしたようなピリピリ刺すような  おかしな心持ちになるわけ
でも達也と話すのは楽しかったし、我慢できない程でもなかったから、気にしないようにしてたわ


ある時ね、そう、あれは達也が将来の夢を語ってた時だったかしら
👦「俺の目標はリーダーなんだ」
👩「リーダーってあのチャラチャラしたひと?」
👦「チャラチャラって( ̄▽ ̄;) 一番の稼ぎ頭なんだぞ!リーダーはすごいんだ。いつもビシッとブランドのスーツできめて、小物だってブランド品。 高級時計に 車も3台持ってんだ(*´з`) かっこいいだろ? 女の子にもモテモテで いつもとっかえひっかえ!!毎夜毎夜店に繰り出せば女の子がもうそれはそれは・・・ 
アッ(゚д゚)!小学生にはちょっと大人すぎる話だったかな(゚∀゚)」
👩「あのねぇ、あたしがどれだけカレンダーの中で小学生やってると思ってんのよ。あんたよりはずっと人生経験豊富なの!そんな話腐るほど聞いてるからご心配なく (-。-)y-゜゜゜
で そのあたしが思うに…よ」
 

あたしはその頃、達也のことが心配になっていたの。この会社が、どうも好ましい事業で成り立っているように思えなくてね。

達也はここで一番の結果を出しているというリーダーと呼ばれる先輩に憧れていたわ。リーダーはあまり出社してこないようだった。来たら来たで結構横柄な態度なのにみんなちやほやする
あたしの中で達也の憧れているリーダーってのは『いけ好かないやつ』だったわけ
だから達也にはそんな奴にはなってほしくなくてね

👩「ねえ、達也。外見だけカッコよくしたって、中身がカッコよくなくちゃ 本当にかっこいいって言えないよ!実際この会社の仕事ってどうなの?」
👦「仕事内容は…まあ少し疑問に思うこともある…けど…うまくいけば高給取りなんだ!俺たちは頑張って頭を使って稼いでいる。それに気づかずにホイホイ金を渡す奴らがいる。俺たちはそういう世間知らずが、今後もっと大変なことに出くわさないように勉強させてやってるんだ。だから俺たちの仕事は悪いことじゃない。金を出す方が悪いのさ!・・・って先輩たちが言ってる・・・それに俺たちの対象は、生活に困ってる人じゃない。ある程度金に余裕のある人間なんだから!…って先輩たちが」
👩「それってさ 自分が自分に…かっこいいって言える仕事なのかな…」
👦「かっこいいかって聞かれればそりゃ…でも…。」
👩「よく考えてみた…」
👦「うるさいな!!働いたこともない子どもに言われたくない!」

達也はあたしの声を遮るようにして怒鳴った後、そのまま飛び出していった。
人間って しょうがないわねぇ(・´з`・) 
ってあたしも帰ろうとしたの。気づけばもう夜中だったしね

ランドセルに入ろうとしたその時よ。誰もいないはずの奥の部屋から明かりが漏れているじゃない。ついでに、何だか ざわざわと話し声も聞こえる!
『これは真相究明!!しなくちゃだわよ!』
そう思ったあたしは、4月の絵の小学生だけの特権<(`^´)>を使って、カレンダーの中から外にポンと飛び出した


近づくと、そのざわざわの雰囲気がどうも穏やかでないことが分かったわ。だからあたしは、まず扉の隙間からそっと覗いてみたの


そしたらまあ!!


その奥の部屋には大きな金庫があったんだけどね、それがパッカーンと開いてるの。

その前にはたくさんの札束が居た


居たのよ。あったんじゃなくて。居たって言ったのは、その札束たちが立って歩いたりしゃべったりしてたからなの。みんな何だか怒ってるようだった。それであたしは何を怒ってるのかよーく聞いてみたのよ。するとね

「まったくもってひどい話じゃないか!そもそも私は、車を買いたいって仕事を頑張ってる孫の手助けになればって おばあちゃんが少しずつ貯めたお金なんだよ!!なのにこんな所に連れてこられて 閉じ込められて(~_~メ)」


「それを言うなら私もだわ!!私だって元々は 子ども達をあの有名なテーマパークに連れて行って楽しい思い出を作ってあげたい!と一生懸命お父さんとお母さんが節約して貯めたお金なのよ」


「聴いてくれよ!僕なんて定年を迎えてこれから夫婦二人でやっとゆっくり過ごせることができる。って話していた老夫婦のお金だったんだ。贅沢はしなくていいからこれから2人でゆっくり共に過ごす時間を大事に生活しようねって言ってたのに。その蓄えだったんだよ!僕は!なのに なのに…あんまりだ!こんなところに連れてこられて!!」


・・・
話の内容からすると、どうもお金たちがこの会社に来たのは本意ではないらしかったわ
そしてお金達の話しはこの会社に対する不満に変わってきた。自分たちが行くべき所に旅立てなかったのはここに横取りされ閉じ込められたからだ!とね


そのうちお金達は自分達をこんな目にあわせている会社をどうしてやろうか。いやこの会社で働いている人間の心持ちが悪いのだから、この会社の人間を懲らしめてやらねばならない。と言い出した。いわばお金の復讐ね

あたし、これはまずいと思ったわ。だってそんなことになったら、達也まで復讐の標的にされちゃう

まだ改心の余地のありそうなあの子を、幼い頃の気持ちをまだ持っているあの子を、どうにか守らなくちゃ


『明日朝一で教えてあげよう!』
あたしは今日のところは一旦もどって、明日達也を説得する算段をしようと急いでカレンダーに走ったの


と、ふわ~っ
と何か柔らかいものにぶつかった感じがした


暗くてよくも見えないけど、あたしの前には大きくてフワフワした、まるで雲みたいなものが居た
「ごめんよ お嬢さん」
フワフワ雲があたしの頭を撫でながら言ったわ


「あなたは?」
あたしはその優しい声の主が何者なのか気になっちゃって、急いでいたけど足を止めたの

「私はね、ずーっと昔からお金達の世話をしている
お金達を行きたいところに連れていったり、お金達の話しを聴いたり、相談に乗ったり、いうなればお金のまとめ役…だろうか。 若いお金達は私のことを『長(オサ)』と呼ぶね」


お金の神様なのかも!っておもった私は、この困りごとを解決してくれるかもしれない オサ に話した
あそこでお金達が復讐計画を考えているようで、友達が巻き込まれてしまうかもしれない。やめさせることができればこの会社の人達をも助けられる

するとオサは悲しい顔で話し始めたわ


「お嬢さん…ここはかつてお金の集会所だった。いや、正確には今でもだ
集会所は全国各地色んな所にあってな、お金達は集会所でそれぞれ情報交換をするのだな。

どこどこのなにがしさんはそれはお金を大切に扱ってくれるらしい。だの なんとか町のどこどこに住んでいるあの人の財布は汚くて住めたものじゃない。だの
だれだれさんの財布は素敵にきれいだから、一緒に行かないか?いやいや最近○○さんは気持ちのいいお金の出し方をするからそちらに行こうよ!
なんてことをお金同士で話すんだ
私はそこを準繰りに回って、さっきも言ったように、お金達の話しを聴いたり、連れて行ったりしていた
お金達は皆気持ちの良いものばかりなんだ。どこの集会所でもね
ところが、ここ最近だろうか。このビルがここに建ってからしばらくして新しい会社がここに入ってきてからだ

恨み 悲しみ 怒り 愚痴 不平不満…そんなものが溜まってきて毒気を出すようになった
同時にお金達の様子が変わってきたんだ。元々は気持ちよく出ていくはずだったお金達なのに、突然目的と違うところに連れてこられ、おまけにここの毒気にやられて負の感情を持つお金になってしまったのだろうな…こうなると私の話しも聞かないし、自分たちの目的を達成するまでは一緒に出ていこうといっても聞かないだろう…
ついでに言うとな、毒気の多いこの場所には 『負の感情の物』が集まるようにもなってきた。ほら ごらん・・・」

オサがあたしの身体をくるりとドアの方に向けた。あたしはまた扉の隙間からお金達の様子を見る形になったわ。見た先には まあ 今度はお金に交じって小さなイヤホンが居た。今流行りなんだっけ?エアポッツとかいうワイヤレスイヤホン
その小さなイヤホンが大きな声で話して聞かせてるの


「本当にひどいことなんです!もう僕は悔しくて辛くて悲しくて!やりきれない
だってそうでしょう。僕のご主人はたいそう僕を大切にしてくれていた。気持ちのいい気候に外へ散歩に行く時も、雨の日曜日も…僕たちはいつも一緒でした
ご主人は勉強の合間に、ほっと一息ついて音楽を聞くのを、ことさら楽しみにしていたんですよ
僕はそんなご主人に出会えてお役に立てることを誇りに思っていました
なのに!なのに!ある日ご主人がちょっと目を離したすきでした。僕は見ず知らずの手の中に盗み取られてしまったんです!僕を!よりにもよってサンタクロースからの贈り物でもあるこの僕をですよ!
そいつが僕を使おうとしたんで僕はピーピーキーキー叫んでやりました。そしたら壊れてるって道端に投げ捨てたんです
ご主人のところに戻りたかったのに…僕は本当に壊れてしまった。」


イヤホンはさめざめと泣いてた。お金達はそれを見ていっそう興奮して士気が上がったようだったわね


お金の一束が言ったわ
「それはひどい目にあったね。君もその泥棒に仕返してやるといい!そうだな、心だけになった君は自由にどこでも行けるはずだ。泥棒野郎のところに行って、その耳元で恨みの言葉でもつぶやいてやれよ!」


メラメラと復讐心に火が付いたのかイヤホンは大きくうなずいて
「よし!そいつの耳元でこれから一生つぶやいてやる!!」
とピカッと光ったかと思うと一瞬にして消えたの。あたしはここにいるのがちょっと恐ろしくなってきた。だから オサ にさよならをして帰ろうと今度こそカレンダーに向かった


と、ドンっと
今度もまた何かにぶつかった。今度はしっかりして壁みたいだったから、あたし尻もちついちゃった。お尻をさすりながら立ち上がって見ると、壁は達也だったの。何か忘れ物でもしたか、あたしと話したかったか、まあどうしてだかまた戻ってきたみたい


で、お金達のいる部屋の中を見て驚いた表情で突っ立ってるのね。ということは
「達也 あんた、あのお金が動いてるのとかしゃべってるのとか見えてんのね?」


あたしの声も耳に入ってこないくらい驚いて目を丸くさせてた。しきりに
「夢だよな…こんな事あり得ないよ 夢見てんだよな…」
てぶつぶつ言ってるから軽くズボンの裾を引っ張ってやった


「わあ」
達也は小さく叫んだあと口を押えてしゃがんだわ。それであたしに耳打ちした
「あれなんなんだよ!お金の妖怪?それになんでお前カレンダーから出てこれんだよ」

びっくりしている達也にだいたいのあらましを耳打ちしたわ。それでもそんなこと信じられないといった顔をしてまた部屋の中に視線を移した。その時よ。達也の顔がさっと青くなったのは
部屋の中にはまた新たに『負の感情の物』がやって来て演説するところだった。今度はちょっと名の知れたブランドの茶色い財布だったわ

「ええ、そうなんです。私は確かにご主人の年齢からすると不相応だと言われるほどの代物です

でもご主人は私を気に入って、どうしても手に入れたいと。お父上にもこんな値段の財布はまだ早いと言われたのですが、どうしてどうしてご主人の決意は固く、私を手に入れるため自分でバイトをして、コツコツお金を貯め、ようやく私を自分の物になされました

いつも柔らかい布で拭いてくれました。私のためにゆっくり休む場所もしつらえてくれました。お金さん達もなんて住みやすいんだといつも褒めてくれましたっけ…

それがどうでしょう。大事に使っていただいていた私を、どこかの若造が連れ出してしまったのです

そして私は暗いところに閉じ込められている…ご主人の悲しみを思うともう私は…大好きなおばあちゃんからもらった財布守りもはいっているのですよ…

そしてほらご覧ください k,kondou素敵にネームが刻印されてございますでしょう?ご主人が刻印されたのです。こんなに大切にしていただいていた私を・・・」


達也はね、財布がしゃべっている時 始終落ち着かなかったんだけど、刻印された名前を読み上げた時に、もういたたまれないという感じで扉から離れたの


👩「達也・・・大丈夫?」
👦「知らなかったんだ。そんなにまで大事にしていた財布だって…
あいつは、金持ちの家の息子でさ、あんなにいい財布もってて…どうせ親に買ってもらったんだって思ってた。だからなんか悔しくて 不公平だって思って…俺が盗ったってまた買ってもらうんだろうって思ってた
カッコ悪いな俺。本当のことなんて何も分かろうとせず、どんな人にも大切な思いがある大事なものやお金を…自分の都合いいように考え奪おうとしてた…」

達也はしっかりあたしを見てこう言ったの
「財布は返すちゃんと返す。勇気がなくて直接返せないかもしれないけど…

それから、ここも辞める。お金達の復讐が怖いからじゃない。俺が俺自身にかっこいいな!お前!って言えるようになるためだ
カレンダーの絵にはまた助けられたよ。ちびっこ(あたしのことらしいわ!ハルカって名前教えたのに😠)なんか ありがとな!」

あたしの話しはこんなとこでお終いかな



「お金も物も 人の想いがつまってるものなんだね~」
「お金とかないカレンダーの世界では考えられないことだけど…人間の世界ってやっぱり色々大変なんだろうな」


4月の絵の小学生達は次々に感想を言いあいました。そんな中、ハルカに質問がとんできました
 

「ハルカ、ところでその後またその会社には行ってみたの?お金達の復讐はどうなったのかしら?達也には?もう会ってないの?」


ハルカは ふうっと息を吐いて思い出すように言いました


「あそこは、話の中でも言った通りちょっと怖い感じがしてね、でも気になってはいたの。最近になってちょっとだけ覗いてみようかってホントにちょっとだけ、ランドセルの蓋の隙間から見て見たわ
机や椅子はあったけど、なんだか閑散としてて、書類やなんかも散らばって、会社が動いてる様子はなかった

奥の部屋にはお金達の気配もなかった。お金達は復讐をやり遂げたのかもね…
達也には会ってないわ。あれから。どうしてるかなって思ってランドセルに入るけれど、達也のところにはまだ行けないみたい

でもね、いつか 達也が胸を張って、俺ってかっこいいだろって自分に言えるようになったら、きっと会えるんじゃないかなって思うの
その時は達也も少しは魅力的ないい人間になってるでしょ」
ハルカはそう言って フフフと笑いました


それを聞いた雄馬が言いました
「魅力的な人間ねェ…僕も魅力的な人間に出会ったな…」
 

「なにそれ!聞きたい聴きたいその話!」
小学生達は今度は雄馬の周りに集まります
 

「ウンウンあれは…あの人は…いやそもそも人間だったんだろうか…あの魔性の…人魚」
 

おやおや 小学生達のお話はまだ続くよう

どうですか?

もう少し聴いていかれませんか?

それではまた

良き頃合いに

お会いできることを楽しみにしています