秋分の日が過ぎて
これから少しずつ秋が深まっていきます
季節の変わり目に
いつも思い出して
開きたくなる絵本があります
『はるとあき』
斉藤倫・うきまる 作
吉田尚令 絵
小学館
“はる”は季節の春
わたしは はる
わたしが めを さますと
さむさは だんだん やわらいできます
そうして物語が始まります
はるが目覚めると
はると交代して
ふゆは眠りにつきます
次第に日が長くなってくると
はるは
なつに交代して
眠りにつくのですが
はるはふと気がつきます
そういえば わたし
あきに あったことがない
わたしにも新鮮な気付きです
そうか…春と秋は
絶対隣り合わないんだ…
そこではるは
あきに手紙を書き
なつに託します
なつから手紙を受け取ったあきは
はるへの返事を
ふゆに託します
1年に1度だけの
はるとあきの
手紙のやりとりが続きます
はるは春の季節を語り
あきは秋の季節を語り
そして次第に
会うことのない
互いへの思いを温めていきます
本文に時折使われている
ごく薄いベージュの色の紙の雰囲気が
とても効果的
使われている色もやわらかで
なんとも言えないあたたかみと
懐かしさが醸し出されています
はるとあきの優しい手紙の言葉も
その季節を彩る絵も
とても美しい
永遠に会えないけれど
心寄せ合い
心通いあう友
相手を思って手紙を書くということ
四季の移り変わりと
季節ごとの美しさ、魅力
そしてこの物語全体を通して感じる
美しくてやさしいからこその
ものがなしさ
なんだか今
うっかりしていると
なくしてしまいそうな
大切なことが
この絵本の中に豊かに息づいています
最後に
心揺らぐはるに送ったふゆの言葉が
とてもよいです
斉藤倫さんは
詩人です
斉藤倫さんの描く物語と言葉は
深く心に沁みます
他にも
「どろぼうのどろぼん」
「えのないえほん」を読んでいます
どちらもまた
読み返したくなるだろうな
と思わせてくれる絵本です
またお話しできたらと思います