『銀河乞食軍団 外伝1 木枯郡山猫街道8番地』 | 手当たり次第の本棚
2009-07-17 20:00:14

『銀河乞食軍団 外伝1 木枯郡山猫街道8番地』

テーマ:日本SF・ファンタジイ
これは、本編でもなにかと大活躍した、金平糖病地の娘整備工、お七とネンネを主人公にした外伝だ。
語りはお七の一人称。
短編集という形式だが……。

面白い事に、ここではSFというより、むしろ、ミステリで良く使われる形式にのっとっている、と言えるのだ。
元祖は、ホームズ。
その後もいろいろな探偵だの怪盗だのが、筆記者に、過去のエピソードを語るという形式の、短編によるシリーズがたくさん登場した。
この外伝がまさしくそのスタイルで、途中途中に、「他にこんな話があったんだけどそれはまた今度話してあげるわね」というフレーズで、読者はいなされてしまう。
銀河乞食軍団はあくまでもSFだけれど、そこにこういうスタイルを持ち込むなんて、他に例がない。

もっとも、長編なら、ある。
かのエドガー・ライス・バロウズによる独特の惑星活劇ものがそれだ。
そういう前例がある事を踏まえて、しかし、あえてミステリで良く使われるスタイルを採った。
そんな気がする。

1巻の前半は、このお七とネンネが、名指しで夏期特別講習の講師として招聘されるというところから始まる。
待遇は最高。
しかしそれは聞いた事もないような、工業高校。
待遇のあまりの良さに、どんな素晴らしい学校かと思いきや、実はとんでもない陰謀が隠されていたのだ。
コミカルなどたばたの中に、学園ドラマ的な雰囲気をぶちこんで、しかし、あくまでも、腕のいい若手整備工という筋金はそのままに、最後はピシリと悪者を懲らしめ……ではなく、出し抜いて、弱者を助けてしまう。
短編でも、銀河乞食軍団の本質は、健在なのだ。

後半は、なんとおネジっ子3人組が、豆地表艇レースに出場する事になる話。
イメージとしては、カートレースのような感じだろうか。
レーシングカーには及ぶべくもないが、レーシングカートというのは、それはそれで凄い世界だ。
うん、そんな感じ。
お七とネンネは、いわば顧問のような形で これにかかわるが、彼女らの星涯行きは、あくまでも、おネジっ子制度が表彰されるにあたり、その表彰式に出席するための出張だったはず!
しかし、レースのライバルがとんでもない悪の組織と関わりがあるとわかり、思わぬ方向に話が転がっていく。
しかも、この時に遭遇した悪の組織は、その後も短編シリーズの方に再登場してくる事になるのだ。

ラストを飾るのは、お七とネンネが出身校に会社説明会に行く話。
彼女らの微笑ましい見栄も楽しいが、白沙基地の五郎八と椋十も、同行する事になって、とんでもないドタバタになっていく。
ところで、常々不思議な事があるのだが、お七は中卒である事がわかっている。
ネンネはお七と同期なのだから、彼女も中卒なのだろう。
そしてまた、二人は、初期のおネジっ子あがりである事もわかっている。
彼女らはすでに5年のキャリアがあるそうだから、そこから逆算すると、おネジっ子になったのは、13歳くらいのはず。
そもそもおネジっ子は、「低級学校を卒業した女の子が見習い工員として入る」という制度と説明されているのだが……。
すると、星涯では、12歳で中学を卒業するのだろうか?
物語の中で、学校制度は詳しく説明されていないから、もしかすると、そういう事なのかも。
日本と同じ学校制度だと、齟齬が生じてしまうんだよね。


『銀河乞食軍団 〈外伝1〉 木枯郡山猫街道8番地』 (野田昌弘作)
ハヤカワ文庫JA205
1985年7月31日初版

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