『大奥 (1) 』 | 手当たり次第の本棚

『大奥 (1) 』

しばらくぶりに再読。
やはり、吉宗が登場するこの最初の物語が面白い。
すでに男の絶対数が不足している日本、男の大奥が確率している事が前提である本編では、そもそもユニセックスでたった一人の異性を争うという「異常な状況」が、克明に描かれているところが面白いのだ。

何といいますか……。
これが普通の(?)大奥とかハレムであるなら、
ともかくたくさん子供を作っておく!(そして後継をスペアのスペアのスペアくらいまで確保)
という正当な(?)理由があげられる。
男は極端な話、毎晩でも子種を提供する事ができるが、
女がそれで孕むとは限らず、孕めば孕んだで、1年弱大事にしないと子供は生まれて来ない。だから、というわけだ。

しかし逆の場合、その論理は通じない(子種は山のようにあっても産む方は一人なわけだからね)。
だからこそ、「男が少ないのにその貴重な男をたくさん集めちゃう贅沢で、将軍の威光を示す」という凄い口実が生きてくるという事だ。

まあ、全体的に見ると、物語の流れがやや生硬で、2巻以降の展開より荒削りな気がするが、一国全体が女護ヶ島となってしまった日本(江戸時代)というインパクトのある情景が、ダイレクトに飛び込んでくるのは楽しい。
これも、冒頭のような、江戸の市井で物語が紡がれていくだけなら、それはそれで面白くなった可能性はあるとしても、それほどのインパクトにはならなかっただろう。


大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))/よしなが ふみ