『反戦ストリッパー 白血病に死す』 | 手当たり次第の本棚

『反戦ストリッパー 白血病に死す』

沢口友美という人は、たいそう面白いというか、波瀾万丈な一生を送った人らしい。
かいつまんで説明すると、
彼女はまず自衛官になり、
その後、ストリッパーになり、
さらに、反戦活動に身を投じ、
白血病に斃れた。
どれかひとつだけをとっても、ドラマになりそうな感じだ。

副題に「沢口友美伝」とあるように、本書はこの人の半生をつづったものであり、(ひとえに)その経歴からだけでも、非常に面白く読み応えがあるといえる。
男が時々いだく疑問、
「女がストリップを見たら、どう見えるんだろう?」
これについても書かれているし(笑)。
 ↑興味ある? 俺は興味あった。

表紙の写真を見ればなかなかの美人。
そしてこの半生!
もしかすると、知る人ぞ知る有名人なのかもしれない。
だが、面白くはあっても、どうも読んでいると釈然としないのだ。

それは、つきつめてみると、タイトルのせいらしい(笑)。
「反戦」「ストリッパー」「白血病」をつなぐと、
「反戦のために湾岸戦争の戦場でストリップをし、劣化ウラン弾の影響で白血病にかかってしまいました」
というような、いささか荒唐無稽な想像をしてしまうのだが、もちろん、そういう話ではない。
よくよく考えてみると、実はタイトルに含まれるこの三つの要素は、それぞれ、「人の気を引くキーワード」なんだな。

「反戦!」(うんうんっ)
「ストリッパー」(なになに?)
「白血病」(……おおお)
耳がぴくっとするだろ?

もちろん、それらはすべて、沢口友美という人の半生に関係のある出来事で、間違いではない。
そして、白血病が死因なのであるとするなら、当然、白血病の話が後半に来るのも当然といえば当然。
しかし、三題噺のように、これらのキーワードをタイトルに並べてしまうと、こんな風なストーリーも浮かんでしまいそうだ。
「ストリッパーでありながら、反戦活動に邁進していた人が、気の毒にも白血病で亡くなってしまったのです」
そうなると、なんとも、お涙頂戴ものというか、ヒロイン像を演出しているような感じがしちゃうんだな。
あまりにも、興味をそそる、いや、「扇情的な」キーワードを並べてしまっているために、それが過剰な「客寄せ」を狙っている、あざとい演出に見えてしまう。

で、この手のマイナスイメージは、ひとたび「それ臭さ」を感じてしまうと、どうにも意識のはしっこにこびりついてしまって、はなれないというわけだ。
そう考えると、やはり本書は、タイトルでかなりの損をしている可能性がある。

「沢口友美伝-反戦ストリッパー白血病に死す」
というように、主題と副題のバランスが逆であったなら、もっと素直に興味深く読めると思うんだけどなあ。
あー、なかなか面白い本なのは事実なのだ。
それだけに、この点が残念。


正狩 炎
反戦ストリッパー白血病に死す―沢口友美伝