『おまえうまそうだな』 愛情と捕食関係 | 手当たり次第の本棚
2006-08-23 09:53:28

『おまえうまそうだな』 愛情と捕食関係

テーマ:絵本・児童文学
私は『あらしのよるに』がキライだ。
その理由の大部分は、メイの自分勝手さにあるのだが、実はそれだけでなく
「捕食する側が、捕食対象と愛情/友誼をはぐくむというのは、どうなのか?」
と思うからだ。

もちろん、作者の意図としては、
生来敵対関係にあるものでも、チャンスと努力と状況次第で、愛情や友情をはぐくめるのだ、という、人類平和に向けた一種のアナロジーなのだろうと思う。

しかしね、それを突き詰めてしまうならば、
たとえばガブはメイ以外の羊を食えるのか? 食っても良いのか?
メイはそれを受け容れられるのか?
という問題が出てくるよね。
(事実、『あらしのよるに』は、先の方でそういう話題も出てくるわけだが)。

アナロジーなのだからそこまでは考えない、という意見もあるだろうが、
架空世界内にもある程度のリアリティがないと架空世界そのものが論理的に存在し得なくなるため、やはりこれは、物語上の弱点と思う。
まあ、すくなくとも、「友情」は残念ながら、このシチュエーションには、いささか弱いと思うんだな。
まして、その後ずっと彼らが一緒に暮らすのだ、という結末を導くには、弱すぎるものがあるのだ。

さて、本書も子供向けの絵本であり、似たようなケースを扱っている。
物語の舞台は「恐竜が生きていた時代」。
肉食恐竜の主人公が、卵の殻を割って出てきたばかりの、草食恐竜の赤ちゃんと遭遇してしまう。
「ちゃ~んす! ごはんめっけ!」
な状況ですよ(笑)。
ところが、赤ちゃん恐竜は、生まれて初めて見た彼を、自分のお父さんだと思ってしまうのな。
主人公が発した「うまそうだな」という言葉が、自分の名前だと勘違いしちゃう。
「おまえうまそうだな」
うまいだろうなあ、ではなくて、
「おまえは『うまそう』という名前だな」
と解釈しちゃうんだね(笑)。

なし崩しに、主人公はこの「うまそう」くんをしばらく養う事になるんだけど、生態の違う子供なので、なかなか大変です。
それに、最後は、
「このままではお互いにいけない」
と判断して、同種の親らしきカップルを発見した時点で、子供をそちらに返すようにする。

その時には、もちろん、お互いの間に、愛情が育っているわけなんだけど、だからといって、無理矢理一緒に暮らすという選択肢はとらないのだ。

『あらしのよるに』よりも良いと思う理由はそこにある。
異種の生物の間に友情なり、愛情なりがはぐくまれる、それが可能だというところまでは良いのだ。
しかし、だからといって、ずっと一緒に暮らすというのには、やはり無理が生じる点も、考えなくてはいけない。

本来は全く違うものを、強制的に同一基準で扱うよりも、
協調しつつ、お互いの「違う部分」を受け容れ、かつ必要あるいは可能な場合には、「別れることもできる」セルフコントロールが存在する世界の方が、少なくとも個人的には、好感が持てる(笑)。

そういう意味で、『あらしのよるに』を読んだ人には、こちらも読んでみてほしいなあ、と思うのだ。

さて、それはそれとして。
表紙画像でわかるとおり、主人公の肉食恐竜は、あとあしで立ち上がったスタンディングタイプとなっている。
これ、現代の恐竜学にはそぐわない、レトロな想像図なのですな(笑)。
今のはね。
ティラノサウルスを含め、USAゴジラにあるみたいな、地面に対して頭と尻尾がほぼ水平にあるというようなスタイルとされている。
頭、ていうかでかい口が前に突き出されているせいか、非常に攻撃的に見える。
昔ながらのスタンディングタイプは、それに比べてどこか優しく懐かしいイメージを感じてしまうのは……
不思議なものだなあ。


宮西 達也
おまえうまそうだな

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