『指輪物語-旅の仲間-』 | 手当たり次第の本棚
2005-09-22 19:25:05

『指輪物語-旅の仲間-』

テーマ:海外SF・ファンタジイ

『指輪物語』……。
世界中の、ファンタジイ・ファンの心をとらえ、文学に、映像に、ゲームに、多大な影響を与えた文学作品である!
私がこれにはまったのは、小学生の頃。
赤いクロス装の6巻本をクリスマスに買ってもらったのだ(当時はまだ文庫版なぞなかった)。
そして、そりゃもう夢中になって、何度も読み返したものだ。

後年、大学に入ったあたりからか。
本が好きです、SFとかファンタジイを読みたい、という後輩に
「で、『指輪物語が』……」
という話をもちかけても、けげんな顔をされる事に気がついたのだな。
そういう後輩の答は、
「知りません」
「読んでいません」
「読めませんでした」……!
……読めない?

思えば、そう言い出した世代は、ライトノベルで育った世代であるように思われる。
なるほど、ライトノベルは、スタートからすぐ、ストーリーが動く、わくわくどきどきが始まる。
それに比べると、『指輪物語』の始まり具合は、かなり悠長で、話が進まず、ましてや冒険の「ぼ」の字もないように思えるかもしれない。
おそらく、ライトノベル世代にとって、『指輪物語』の話運びは、のれるテンポではないのだろう。

「最初のところで挫折した」タイプの人には、とりあえず、第2部から読む事を勧めるのだが、不思議と、私が最も印象深くいろいろなシーンを思い出せるのは、第1部だったりするのだ。
あのホビット庄や粥村、古森の、独特の雰囲気は、たしかにメジャーにはうけないのかもしれないが、イギリスの児童文学に親しんだ人ならば、きっと両手をあげて喜ぶようなシーンが連続しているはずだ。

ひるがえって、それはどういうことかといえば、早い話が、イギリスの田園風景のエッセンスが、惜しみなくそそぎこまれているという事ではなかろうか。
(だからこそ、そういったものに馴染みがない人には、話に入り込めない壁となってしまってるかな)。
ホビット庄のパブで飲むエールもうまそうだし、
粥村なら、そりゃもう絶対、踊る子馬亭でバタバーの料理を食わなくちゃ。
いやいや、お百姓のマゴットさんとこで茸料理も捨てがたいし、
できることなら、トム・ボンバディルのもてなしも受けてみたいんだが……
って、食べるもんばっかりかよ自分!

いや、実に。
ホビットは、食べる事を愛する民で、一日に六食たっぷり食べる、なんて描写があったりするが、
『指輪物語』の全篇を通して、この第1部が、一番、「うまそうなシーン」に恵まれているのだ。
黒の乗り手の恐るべき影はあるものの、ホビット庄も、粥村も、裂け谷も、居心地良さそうだしね。
そうそう、気持ちの良さそうなベッドも、第1部にしか出てこないぞ。

そして、大事なことだが、このような、居心地の良いコーナーから出てきた人々が、苦しい旅を始める。
そういうコントラストが、第2部以降の凄さを際だたせているとも言える。
また、主人公のフロドと、ホビットの仲間たちをユニークなものとしている、
地味で平凡だが、きわめて粘り強い。
この特徴も、第1部を見る事なくして、読者は理解できないものだと思うのだ。

『指輪物語』の最初で挫折をしてしまったなら、
第2部から読んでみるもよし、
とりあえず映画を先に見てみるもよし。
だが、そうやってもし『指輪物語』が気に入ったなら、そこで第1部を手にとってくれるといいなあ、と思う。


J.R.R. トールキン, J.R.R. Tolkien, 瀬田 貞二, 田中 明子
新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1
新版 指輪物語〈2〉旅の仲間 上2
新版 指輪物語〈3〉旅の仲間 下1
新版 指輪物語〈4〉旅の仲間 下2

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