『武術事典』 武術全般あれもこれも | 手当たり次第の本棚

『武術事典』 武術全般あれもこれも

「武道と武術の違いって、何ですか?」 あるいは。
「剣道と剣術って何が違うの?」 あるいは。
「柔道と柔術って同じもの?」

さあ。答えられるだろうか?
武道・武術を実際にやっている人でも、ちゃんと答えようとすると、窮する場合がほとんどじゃないかと思うんだが、どうかな?

この本は、まさしくそういうベイシックかつ答えるのがなかなか難しい疑問に、ずばりと答えてくれるものなのだ。

剣道、柔道、空手、弓道。それぞれの武道(または武術)ごとに、そりゃあもういろいろな本が出ている。
でも、それらはほとんど、
「うちの流派のなりたち(またはその武道のなりたち)はざっとこんな感じですよ」
「うちの流派の理念は、こういうようなものです」
「基本はこういうのがあってこれこれ」
「型にはこんなものがあります(たいていは分解写真つき)」
こんな構成になってるのな。
なので、たとえば、こういう疑問には、こたえてくれません。
「黒帯っていつからできたもの?」
「免許皆伝って、なに?」
「武士以外の人って武道はやらなかったのかな」

こういう、武道・武術の技法以外のところも、この本はきっちり、おさえていてくれるのだ。

事典というタイトルにあるほど、細かく、用語ごとに解説をするという感じではなくて、100の項目を設定し、武術に関するさまざまなことがらを説明するという形式になっている。
しかも、他の項目に関する言葉は、項目番号でリファレンスしてあるというていねいさ!(これは探しやすいぞ)。

普通の本として、最初から読んでいってもいい。
日本の武道がどういう風に発展してきて、どんな道をたどってきたのかが、よくわかります。
現在も全国各地で修練されているものだけでなく、
十手とか、
鎖鎌とか、
手裏剣とか、
忍術とか。
もはやすたれてしまったものについても詳しいというのは、嬉しい話だ。

武術用語なんかいっさい知りません!
でも武術についてはちょっと知りたい。
そういう人でも、この本なら苦労なく読めると思うし、特定の項目を探して読むのも、らくちんなはず。

しかもたった1900円というのは、反則な気もするね(‥
あ、いや、私は、決して、新紀元社のまわしものじゃないぞ(笑)。


著者: 小佐野 淳
タイトル: 図説 武術事典