2012-01-18 19:30:35

『竜騎争乱 1~5』〈時の車輪8〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ


かつてエモンズフィールドを出た若者たちは、全界にばらばらにちらばり、それぞれ冒険するのがこのあたりなのだが、同時に諸国は乱れに乱れ、もはや平穏な国を探す方が難しいほどだ。
ランド・アル=ソアは一方でショーンチャン人とぶつかりあい、もう一方ではイレイアンに攻め込んで、サマエルと対決する。

エグウェーンはタール・ヴァロンをめざし、エレインはいよいよシームリンに目を向け、他方白い塔やサリダールからランドのもとに赴いた異能者(アエズ・セダーイ)たちは思いもかけなかった立場に追い込まれる事になる。

しかし、こうしてみると時の車輪の全界は、なんとも女性の力が強い。
原点ともいえるエモンズフィールドでも、「男会」より「女会」の方が実質的に力があるようなのだが、女王の多さにも目を牽かれる。
アンドールは代々女王が支配する国だし、他に、サルダエアなど、女王がおさめる国が目白押し。
アサ・アン・ミエレも支配的な立場に立っているのが女性なら、遠くショーンチャン帝国も女帝に支配されているし、アイール人の間でも首長より賢者が幅をきかせ、言うまでもなく異能者は国家元首より強い権力をふるっていた(過去形になりつつあるとはいえ)。

別に、この物語はフェミニズム的ではないし、もちろん作者も女性ではないのに。
政治の世界に目を向けなくとも、文化的に女性が強い地域も多いようだ。
まあ、もちろん、男が遊んでくらしているのではないが、政治や交易は女の仕事になっている事が多く、そうでない国々でも、そのような仕事に、女性が男と同じくらい多く従事しているようだ。

いやいや、世界観だけではない!
物語を裏から彩る闇セダーイたちにしろ、どういうわけか、男より女の克也卯が目立つ気がする。
実際、アンドールを支配していたラヴィンも、イレイアンを支配しているサマエルも、いろいろ頑張って画策しているようでありながら、そしてランド・アル=ソアとのぶつかりあいは「戦闘として」激しいものでありながら、決着はかなりあっさりしているように見える。
ランフィアやモゲディーン、グラエンダルの方が、ずっとねちこく、露出も多い。
男の闇セダーイで同じくらい活躍するのは、闇セダーイの中ではどちらかというと下に見られているアズもディーンくらいではないだろうか。

だからこそ、ランド、ペリン、マットの三人が際立つという見方もできるだろう。
また、後半への折り返しがスタートしている物語のこのあたりから、マットの存在がどんどん大きくなってくる。
しかし、ランドやペリンと違って、決して戦士ではないマットの活躍は、とても癖があり、ある意味、エグウェーンやナイニーヴら、女性陣と同じくらい、面白い事になっていく。
そう、実は、主人公側も、男性陣の活躍は、女性陣に比べ、単純でいまひとつぱっとしないように見えるのだ。


竜騎争乱〈1〉嵐の来襲―「時の車輪」シリーズ第8部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜騎争乱〈2〉金の瞳の密使―「時の車輪」シリーズ第8部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜騎争乱〈3〉氷上の盟約―「時の車輪」シリーズ第8部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜騎争乱〈4〉精鋭たちの召喚―「時の車輪」シリーズ第8部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜騎争乱 (5) (ハヤカワ文庫 FT―時の車輪 (352))/ロバート・ジョーダン
2003年9月~2004年1月
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2012-01-08 20:23:58

『昇竜剣舞 1~7』〈〉時の車輪7

テーマ:海外SF・ファンタジイ




エモンズフィールドを出た5人の若者は、それぞれ重要な役割を果たすようになっていくわけだけれど、ある意味その中で最もユニークなのがマット・コーソンではないかと思う。

羊飼いのアル=ソア、鍛冶屋のペリンと違って、マットだけは、そういう呼ばれ方がない。
故郷では、父親の飼っている牛の乳搾りをした、とあるだけで、とくに(家業の)何を仕事にしていた、という経歴がないのだ。
むしろ、ことあるごとにいろいろな悪戯w3おしていたという事が自他共に記憶に残っているだけだ。

旅に出てからも、ランド・アル=ソアのように運命と闘う事もなければ、ペリンやエグウェーンのように、指導者たるべく努力していくということもなく、ナイニーヴのように激しく自分と戦うという面も持たない。

彼の稼業は、いってみれば、ギャンブルだ。
枯れについていくものも、最初は、彼のツキに引き寄せられたと語られている。
賭の結果、マットの人生は転がり続けていて、首にかけた絶対力をそらすメダルも、英雄蘇生(ヴァリーア)の角笛を吹いたことも、ルイディーンで古代の断片的な記憶のあつまりを手に入れたことも、全てはギャンブルの結果だと言っていい。

悪戯ずき、ちゃらんぽらん、ナンパ師、しかしナイニーヴにいわせると、一度約束した事は決して破らない、必ず守り通す男だという事だ。
マットには英雄としての重みや、苦しげな影はない。
いや、仮にあったとしても、笑い飛ばせる強さがある。
実に魅力的なキャラクターではないか。
自分自身も、人生も、笑って蹴飛ばせる男、マットは、本島にこの物語の中で希有なキャラクターだ。

その彼が、ランド・アル=ソアの依頼を受けてエレインやエグウェーンと接触し、非常な苦境に立つはめになる。
うち、ひとつはとんでもない女性とのラヴアフェアであり、もうひとつはエバウ・ダーに闇セダーイや闇の生き物が登場する事によって、マットや仲間自身が命を落とす瀬戸際に立つ事だ。
実際、何人かの仲間が命を落とす事になるが、その対処も受け止め方も、ランド・アル=ソアとマットでは真逆といっていい。

かつて、アイール人の恋人に、ランド・アル=ソアの影にいる、と評されたり、最後の戦い(ターモン・ガイ=ドン)で勝利の鍵を握ると予言されてたり、角笛を吹いたという(困った)事実があったり、マットの立ち位置はかなり微妙な者であり続けるのだが、そんな綱渡りができるのも、マットならではなのだろう。


昇竜剣舞〈1〉金色の夜明け―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
昇竜剣舞〈2〉反逆の代償―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
昇竜剣舞〈3〉戦士の帰還―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
昇竜剣舞〈4〉伝説の異能者―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
昇竜剣舞〈5〉“光りの要塞”陥落!―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
昇竜剣舞〈6〉識女の秘密―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
昇竜剣舞〈7〉剣の王冠―「時の車輪」シリーズ第7部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
2002年12月~2003年6月
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2012-01-04 19:04:31

『黒竜戦史 1~8』〈時の車輪6〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ


ランド・アル=ソアが、ティア、ケーリエン、アンドールの三王国を掌中にし、一方で異能者(アエズ・セダーイ)が二つに分裂し、アイール人も二つに割れている状態となった中盤は、舞台となる範囲が広すぎるためか、なんとなく冗漫な印象を受ける。
どのキャラクターに視点をもっていくかにより、ケーリエン、シームリン(アンドール)、白い塔のあるタール・ヴァロン、分派した異能者が集まるサリダールに加え、エレインたちが向かうエバウ・ダー(アラフェル王国)までめまぐるしく場面が変わってしまう。
もちろん、登場人物はそれぞれ、別々に動いている!

まあ、このあたりは、大河小説の醍醐味という事ができるだろう。
とはいえ、渦の中心は基本的にランド・アル=ソアと、エグウェーンのままだ。


まず、エグウェーンはここで大きな転換点を迎える。
アイール人賢者のもとでの、夢見人の修行は半ばなのだが、サリダールに召還され、アミルリン位につくことになるからだ。
物語の中で述べられていくとおり、エグウェーンの絶対力が強いこと、だけではなく、竜王の再来であるランド・アル=ソアと同じ村の出身である事なども大きくものを言うほか、非常に若いというのも選ばれたポイント。
つまり、三派の異能者が対立しているサリダールで、どの派からもアミルリン位を出す事はできず、エグウェーンほど若ければ、容易に傀儡にできるという判断なわけだ。
従って、アミルリン位になっても、エグウェーンは「あたかも修練生であるかのように」有力者からは見られてしまうし、自分が操り人形だとみなされている事を、彼女は最初から自覚している。
このなかで、いかに真のアミルリン位になるかというのがエグウェーンの課題であり、彼女の戦いはまさにここから始まる。
この戦い、最新刊で一応の決着をみるわけだけど、そう思うと、ずいぶん長い戦いになるわけだ。
ランド・アル=ソアと比べても、彼女の戦いは常に人間が相手であり、そのために最も人間的に成長する事ができたのではないかと思われる。

一方、ランド・アル=ソアは、貴族を相手に政治の世界で戦うところから、今度は異能者を相手にしなければならなくなるというのが、ここ。
白い塔からも、サリダールからも、使節が派遣されてくるが、そもそも異能者は、絶対力を使える男に敵対しがちだし、あからさまに、竜王の再来を自分の手におさめようとしている。
とくに、赤アジャを警戒するのは男にとってあたりまえ。
しかも、シームリン郊外に、絶対力を使える男を集めているという問題もある。
指導者として任命したマツリム・テイムも信用するのは難しい。
つまり、主人公は自分の中にあるゼタ知力(そして竜王テラモン)だけでなく、多様な絶対力の使い手とも向き合わなくてはならなくなっている。

凄惨な決着が、デュマイの泉の戦いという形でつけられることになるけれども、これは、全界の崩壊以来、おそらくはじめて、絶対力が戦場で「相互に」使われた戦いのはずだ。
(一方的なものなら、すでにショーンチャン人が使っている)。
しかも、マツリム・テイムに率いられた絶対力を使う男、アシャ・マンの恐ろしさを際立たせるものでもある。
この聖竜士(アシャ・マン)が登場する事が、異能者(アエズ・セダーイ)の一方的な支配性を弱める、大きな一因となっているところは見逃せない。
実際、ランド・アル=ソアが異能者を、ある意味力ずくでおさえつけるようになるのは、この戦いに至る経緯が原因となるからだ。

ところで、時の車輪の世界は、ひとつの謎がある。
物語でしきりに言及される闇王、ここでも冒頭からあることを行うし、人格をもつ超越者として扱われ、かつ登場するが、これに対応する「創造主」がどのようなものなのか、全くわからないのだ。
闇王は、創造主に刃向かったものらしいけれども、創造主に人格があるようには描かれていない。
人々は、神をよぶかわりに「光」を用いるが、これもとくに人格があるようではない。
それどころか、教会や寺院もなければ、聖職者もおらず、決まった祈祷の言葉らしきものもない。
つまり、宗教らしいものがそこにはない。
(まあそのわりに、光の子らという集団のみ、存在するんだけど)。
ある意味、人々の意識の中にあるのは、悪の中心としての闇王であって、これに対抗するという形でしか、宗教活動的なものがないのだ。
であるにもかかわらず、闇王自体は、「創造主」に対抗するものと設定されてるんだよなあ。
なぜこういう、不思議な構造になっているのか、最後には解き明かされるのだろうか。
あるいは、光の子らや、異能者の中にも、多くの闇の信徒が存在するのは、この不思議な構造の影響なのかもしれない。


黒竜戦史〈1〉偽の竜王―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
黒竜戦史〈2〉闇の密議―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
黒竜戦史〈3〉白マントの野望―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
黒竜戦史〈4〉太陽の宮殿―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
黒竜戦史〈5〉白い塔の使節―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
黒竜戦史〈6〉新アミルリン位誕生―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
黒竜戦史〈7〉黒い塔の戦士―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
黒竜戦史〈8〉竜王奪還―「時の車輪」シリーズ第6部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
2002年3月~2002年10月
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