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2009-04-30 20:12:21

『ダレン・シャン (12) 運命の息子』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
ダレンとスティーヴにまつわる、忌まわしい出生の秘密……!
そして、まさしく、黒幕は真の黒幕であった。
巧みに仕組まれた「運命」、いや、これはむしろ、「罠」と言うべきかもしれない。
それを回避する術はあるのだろうか?

この物語、ハッピーエンドや大団円で終わるとはちょっと言えない。
しかし、アンハッピーエンドというわけでもない。
ダレンの選択は、非常に難しいものだけれど、少年の心に強いインパクトを与えるものだとも思う。
だからこそ、ダレンの選択の意味は、読んだ者が何度でも考える必要があるだろう。
安易に、ダレンの「まね」をする事がないように。

それにしても、「運命の息子」とは意味深だ。
一見、ダレンたちの出生の秘密をそのままあらわしているようにも見えるが、運命とは、はたして彼らのために準備された「罠」を指すのだろうか?
エバンナの抵抗を考える時、必ずしもそうではなく、もっと大きなものが背景にあるのではないか、とも思える。

運命とは、一個の存在が仕組めるものでもなく、
ひとつの時間の流れ、そのものでもない。
それらを超えて、「変化」を起こすものであり、それは誰か(または、誰も)が努力してつかまなくてはならないものなのかもしれない。

そう考えていくなら、ダレンが自分の存在そのものを賭けてつかんだものが、まさしく「運命」であり、その結果導き出される新たな世界は、確かにハッピーエンドなのだ。


ダレン・シャン 12 (少年サンデーコミックス)/ダレン シャン
2009年4月22日初版
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2009-04-29 19:26:57

『ダレン・シャン (11) 闇の帝王』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
ヴァンパイアといえば、闇の生き物。
そして、貴族のイメージがつきまとう。
さらに、スプラッタパンク以来のイメージチェンジで、ヴァンパイアは、より人間くさく、より身近になったかのようだ。

ダレン・シャンも、その流行に乗ったようでありながら、本巻に至って、ヴァンパイアの原点に一度立ち返る。
ヴァンパイアはかっこいいかもしれない。
貴族であり、あるいは一面、戦士であるかもしれない。
だが……。
ヴァンパイアは闇の生き物であり、「闇の帝王」たり得る存在なのだという事。

すなわち、ここまで、自身がヴァンパイアである事に悩みながら成長してきた主人公ダレンは、もうひとつレベルアップした悩みに直面しなくてはならなくなる。
最年少のヴァンパイア元帥となり、一度は「ヴァンパイアのかっこよさ」の頂点を極めたとも言えるダレンだが、今度は、自分が闇の帝王になるかもしれないという悪夢に苦しまなくてはならないのだ。

自分が悪を為す存在となるかもしれないという恐怖。
あるいは、悪を為さざるを得ないという悩み。
これは、普通、悪役の悩みなんだけれど、見事、本作では、主人公が、ヒーローの悩みと悪役の悩みを併せ持つのだ。
そして、これはヴァンパイアが主人公のフィクションである時、ほんとに醍醐味ではないかと思う。
そこには、正義の爽快さと悪の香り立つ悩みが混在しているからだ。

実際、本巻では、ダレンは迷妄の闇にあり、堕ちる寸前にあるとも言える。

そして、悪い時には悪い事が重なる。
生まれ故郷の街にはからずも帰ってきたダレンは、血縁の悩みにも直面しなくてはならなくなるからだ。
夜明けの前の、最も暗い闇をダレンは経験する事となる。

しかし、明けない夜はない。
どのような明け方となるかは、次の巻を待たなくてはならないのだけれどね。


ダレン・シャン 11 (少年サンデーコミックス)/ダレン シャン
2009年2月23日初版
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2009-04-28 19:55:16

『フロスト気質(下)』〈フロスト警部4〉

テーマ:ミステリ

子供が犯罪の犠牲者になるというのは、いやなものだ。
社会的弱者のうちでも、子供は「将来がある身」という事で、格別なものがあるからだ。
しかし、だからこそ狙われやすいという事でもある。

今回の誘拐事件はまさしくそれ。
フロスト警部の奔放な、というかあてずっぽうな、というか無茶苦茶な直感は、実際のところ、「ちょっとしたひっかかり」に起因している事が多く、誰も気づかなかったような些細な事柄がそれに結びついている事を思えば、なんのかんの言って、やっぱりフロスト警部は優秀な男なのだ。
……たぶん。
それは、子供が犠牲者となっている時、とくに鋭く働くような気がする。

フロストという男、そもそも、社会的弱者には同情的なのだ。
仕事量が慢性的に過剰となっているデントン署が、余計な事件を抱え込む余裕はないという事などを理由に、しばしば、一部の罪人には同情的だ。
それは、たとえば本作登場のキャシディ警部(代行)のような、正統的正義漢と対比する時、暖かみとなって伝わってくるだろう。
たとえば今回のラストのように。

しかし、フロストが自分の手柄をほとんどいつも、同僚に譲ってしまう事は、読んでいてやきもきしなくもない。
確かに、フロスト自身には上昇志向など一片もないし、書類仕事が苦手といういいわけには一抹の真実みがあるのだけれど、それにしてももう少し……と焦れる。
全ては陰徳となってしまうのか!?(に、似合わねえ……)。
とはいえ、それがフロストらしさとも言えるだろう。
少なくとも、現場の人間(そして読者)は、誰がほんとに活躍したか、知っているんだしね。


フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)/R.D. ウィングフィールド
2008年7月31日初版
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2009-04-27 21:01:25

『フロスト気質(上)』〈フロスト警部4〉

テーマ:ミステリ

今回もフロストと一緒に立ち働く部長刑事は新顔キャラ。
しかも、二人いる。
ひとりは転任してきたばかりの女部長刑事、リズ。
もうひとりは、かつてデントン署に在籍していた部長刑事、キャシディ。
二人とも、出世欲まんまんだが、かたや女性であるという多大なハンディキャップを持ち、かたやなにかと嫌われ者だったというハンディキャップを持つ。
出世欲があるということは、お互いに角突きあうだけでなく、もちろん、フロスト警部のやることも気にくわないというわけで、人間関係はぎすぎすしまくりだが、フロストはそんな事を気にするようなタマではない。

フロストが気にするのは、犯罪者であれ、被害者であれ、追いつめられた者、あるいは挫折した者だ。
それは、もしかするとフロスト自身が愛妻を喪ったためかもしれないが、一見だらしなく、いい加減なフロストに、そういう人々が心を開くのは、間違いない事なのだ。
そしてもちろん、それがフロストの魅力でもあるのだろう。
鼻つまみものの上司に果敢な(?)抵抗を示すというほかに。

さて、今回はデントンの街で、少年少女が連続的に犯罪被害者となるのだが、ひとつながりの犯罪であるかのように見えてそうでなく、複数の犯罪であるように見えて実はつながりがあるという複雑さは、このシリーズの特徴と言ってもいいかな。

その中で、ガイ・フォークス祭がからむところはいかにもイギリス。
社会に貢献したと認められた人が、「~卿」と呼ばれる身分になっているというあたりもいかにもイギリス。
このあたりは、アメリカが舞台のミステリには絶対出てこない部分なので、そういう意味でも目先が変わっていて楽しい。
とはいえ、新興住宅地が宅地開発されていたり、古いタイプの団地が老朽化して野ざらしになっているあたりは、「先進国」共通の風景とも思える。

そういった背景も含めて、このシリーズ、人間の赤裸々な魅力に溢れていると言えよう。


フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)/R.D. ウィングフィールド
2008年7月31日初版
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2009-04-26 19:54:35

『夜のフロスト』〈フロスト警部3〉

テーマ:ミステリ

警察小説であるからには、主人公たちは、事件ひとつだけにかかずらわっているわけにはいかない。
今回も、行方不明になった新聞配達の少女に端を発する事件、
連続恐喝事件、
そして、マスコミが「老婦人殺し(グラニー・リッパー)」と騒ぎ立てる事になる、連続老女殺人事件などが、多忙かつスケジュール管理のできないフロスト警部を悩まされる事となる。
というか、マレット署長を悩ませ、フロスト警部に半ばケツをまくらせると言う方がいいか。

ところで、フロストと組む事になる新人の部長刑事だが、どうも毎回入れ替わるようだ。
そして、次の巻では登場して来ない事を考えると、またしても他へ転勤となってしまうのか?
本筋とは関係ないが、ちょっと気になる。
そう、今回も、相棒はまたまた新人の部長刑事だ。
『クリスマス~』が高官の息子という生まれの事情、
『フロスト日和』がよそで上司を殴り飛ばして跳ばされてきた元警部、
毎回なにかと問題をかかえているが、今回のギルモア刑事は、
「私と仕事とどっちが大事なのよっ」
という、定番だが、絶対に答える事なんかできない質問で凝り固まった妻を持つ。
いずれにせよ、出世したいのにフロストに振り回されるという点は共通。

しかし、気の毒であるが、所詮、彼らはプチ・アレン警部であって、従ってフロストの引き立て役とならざるを得ない。
とても正統的に捜査を進めようとするのだけれど、フロストの「直感」にいつもしてやられてしまう。
だが、はったりとあてずっぽうに満ちているように見えるフロストだけれど、実は、けっこう観察眼が鋭いし、スケジュール管理能力はゼロであっても、意外に記憶力も冴えてたりするのだ。

彼の、現在のだらしなさが、仮にマレット署長の言うとおり、いたましくも愛妻を癌でなくしたためであるとするならば、かつてのフロスト警部とは、どれほど有能な警察官だったのだろうか?

……奥さんがついている分、ナリはまともで、これほど仕事中毒ではなかったかもしれないが、それでもやっぱり、下品なオヤジだったかもしれない。
まあ、その溢れすぎている人間味がフロストの持ち味であるからして。


夜のフロスト (創元推理文庫)/R・D・ウィングフィールド
2001年6月15日初版
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2009-04-25 12:25:20

『ダヤンの不思議な毎日』

テーマ:絵本・児童文学

わちふぃーるどの魅力というのはどこにあるのだろう。
もしかすrつおそれは、地球とかつえは一つであった異世界という、「似て非なる場所」であり、
なおかつそこには魔法が残っていて、動物たちがあたかも人間のように生活していて、
その、ちょっと不思議だけれど、明らかに、日常の一コマでしかない物語が見せてもらえるから、なのではないか。

もしも、そのまま人間の街の物語とするならば、あまりにも切なく、やるせなく、怖いような事も、動物たちが演じる「似て非なる世界」の事、というクッションがあるから、心楽しく、それでいて身近に見る事ができるのだと思うのだ。

絵の魅力は言わずもがな、だけどね。

さて、本書は一応元ネタが、『12の月の物語』などに掲載されたお話となっている。
うん、まあ、確かにそうなんだけど、もともとわちふぃーるどの話は、それぞれが独立したエピソードでありながら、タテヨコにゆるやかなつながりがある。
ゆえに、これもまた、元ネタがあるというより、これはこれで独立した話だと思った方が良い。

さて、ではこれはどういうものかといえば、雑誌「ね~ね~」に掲載されたコマ割り式の物語という事だ。
ううむこれは!(笑)
日常的に子供に接する人しか目にしないような雑誌だ。
いや、そういうとこに掲載されてしまうと、子供と縁のない大人は手を出す方法がない。
なので、このように絵本にまとめられるというのはありがたい話だ。
(ちなみに、続きもすでに出ている)。

各話の美麗な扉絵のあとにはちょっとセピアなコマ割りストーリーと、「タシルのまめ知識」。
でもせjっかくなので、やはり『12の月の物語』や『扉の向こう側』(いずれも中公文庫収録)などとあわせて読むと、さらにわちふぃーるどが楽しめるものと思う。


ダヤンの不思議な毎日 (絵ばなしまめ劇場)/池田 あきこ
2006年7月24日初版
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2009-04-24 20:13:11

『クリスマスのフロスト』〈フロスト警部1〉

テーマ:ミステリ

きっとイギリス一「きちゃない」中年男のフロスト警部、本巻が初登場となる。
警部が主人公であるから、当然、これはミステリの中でも、警察小説と名付けられているサブジャンルという事になる。

そのフロスト警部が、いきなり射たれていて、しかも家宅侵入をしていたと告発されている、そういうシーンから始まるのだ。

なかなか、印象的だし、初めてフロスト警部に接したならば、
いったいこのシーンの裏にはどんな英雄的な、またはせっぱ詰まった理由が?
と、心を躍らせるかもしれない。

しかし、それを思い切り勝たすかしするかの如く、すぐさま、読者は、凄まじい混沌と対面しなくてはならないのだった。

狭いオフィスに、机が二つ。
どちらにも山のように書類とファイルが積み上げられ、窓枠には汚れたままのカップが積まれ、床には屑籠にうまくシュートされなかったゴミが散乱し……。
うーん、こんなところで仕事したくない。

だが、そこから推察される通りのいい加減ぶりを思い切り発揮しながら、脅威的な人員不足の警察組織をしりめに、フロスト警部は傍若無人な大活躍を、比較的地味に繰り広げるのだった。

そう、地味だ。
決して華々しいアクションがあるわけではないし、明解な推理が展開されるわけでもない。
何しろ、フロスト警部は忘れっぽい。
手に余るほどたくさんの仕事がまわってくるのだ、という事情を鑑みるとしても、提出すべき書類はことごとく期限を過ぎており、求められた報告をなした事がなく、借り出した備品をまともに返した事もない。
けれども、フロスト警部、上司を別にすると所属の署ではわりかし人気があるんですな。

それは、この男が、決して徳性が高いようには思えないけれど、彼なりに人情の機微をよく知っているからではないかと思われる。
欠点は山ほどあるけれども、ギャンブル癖のために厄介ごとに巻き込まれた警官をうまくかばってやったり、
ある市民が、決して誉められた事をしていないとしても(いや、むしろ犯罪と言われるような事をしていたとしても)彼なりの酌量をする。

仕事熱心じゃないというのではないし、ダーティな警官だというのでもないよ。
おそらくそれは、「きちゃない」中年男ならではの、一種の優しさなのだ。
辛いことばかり溢れている世の中を、よろよろと歩いていく男。
彼なりにしたたかであり、庇うべき相手は庇うのだ。
そういう、フロスト警部の、ちょっと癖があるけど人間的な魅力というやつが、物語そのものの魅力でもある。


クリスマスのフロスト (創元推理文庫)/R.D ウィングフィールド
1994年9月30日初版
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2009-04-23 20:34:22

『神曲奏界ポリフォニカ チェイシング・クリムゾン』

テーマ:冒険・アクション

「S」がまだ終わっていないけれども、今回は短編集。
短編集ともなれば、当然、ツゲ神曲楽士事務所の日常がテーマとなってくる。
そこで改めてあらわになるのは、日常、そんなに強い精霊が敵にまわることはないし、大事件が起こるわけでもないという事だ。

……あたりまえだね。

しかし、そうなると、コーティの大馬力はかえって小回りがきかず、レンバルトのボウライ群の方がはるかに小回りがきいて使い勝手がいいというのはよくある話。
つか、今回は相手方もボウライがたくさん、というのがちょっと多いような。
かわいい。

しかし、その中にもちらりと触れられていることは、物語の中の「現代」において、精霊と人間の生活域が、良くも悪くも昔より渾然としてきているという事だろう。

ところで、今回口絵にも登場している、ボウライでいっぱいの列車だが、日本でも鉄道が登場した当初、狸汽車というものがあったそうだ。
松谷みよ子の現代民話集にたくさん類話があるのだが、夜中に、狸が人間ならぬ汽車に化けて線路をごーっと走っていったとか、そういう話が伝えられているのだな。
精霊とかあやかしとか妖怪といったようなものが、見慣れないものに接した時、あるいはこういう事が、起こるのだろうか。

さて、今回の短編集は、当初アニメDVDの付録として書かれたものなのだそうで、従って、アニメの方のストーリーと密接につながったものが含まれているのだとか。
私は、「なにかしらそんな事がかつてあったのだろう」と、スルーして読んでしまったが、これをきちんと補完するべく、廉潔したアニメの方のストーリーをいずれ作者が小説化するという(ほんとか?)。
それはそれで楽しみだが、アニメバージョンとのすりあわせは、どうなるのか。
物語とは違う部分で、ちと興味深い。


神曲奏界ポリフォニカ チェイシング・クリムゾン 神曲奏界ポリフォニカシリーズ (GA文庫)/榊 一郎
2009年4月30日初版(発売中)
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2009-04-22 19:52:22

『難航』〈交代寄合伊那衆異聞10〉

テーマ:歴史・時代小説
前巻で負傷した籐之助は、久しぶりに故郷へ帰る事となった。
しかし、これはちょっと微妙。
というのは、出た時は一介の本宮籐之助だったのに、戻ってきた時は、領主である座光寺籐之助だったわけだ。
父母もきょうだいも幼なじみもいる故郷に、別人、しかも、「殿様」として帰る気持ちは、やはり複雑なものがあるのではないだろうか。
それだけに、今や乱世である事が、その現実から気をそらす助けになっているように思われる。
今のところ、本宮家の人々は、長男が思わぬ運命にみまわれた事を、素直に受け止めているように思えるが、先々はどうなるのだろう。

しかし、時代は籐之助を待ってはくれない。
何しろ渦中の人物だから、待ってもらえるわけもない。
伊那谷にも敵の刺客が入ってくるかと思えば、籐之助は老中首座の直属官として下田に呼び出される事になるわけだ。

従って、前半は伊那谷の雄大な自然を籐之助たちとともに楽しみ、後半は長崎での籐之助の活躍がそっくり伊豆は下田に移される形で、本巻、なかなかおいしい展開となっている。

そして、この時期で下田といえば、当然、行われているのはアメリカの領事ハリスと、下田奉行の間で行われている条約締結の話し合いだ。

さて、佐伯泰英の時代小説というと、史実にそった要素もたくさん出てくるが、それをリアルに描く「歴史小説」の体裁は取らない。
あくまでも史実は史実として、主人公は必ず架空の人物であり、史実の制約から可能な限り「はみだして」活躍する、というのがスタンダード。
本作も当然そのようなスタンスで描かれている。
だからこそ、籐之助は時代の表舞台に立つ事はできない限り、本来の幕臣や武士にはあるまじき豪華絢爛かつ気宇壮大な冒険をする事ができるのだ。
そのバランスが絶妙だと思う。

他のシリーズの主人公が、あくまでも「個人」の立場であるのに比べ、籐之助だけは、正規の幕臣なので、その分市井の人々の人情の機微は、他シリーズほどこまやかではないけれども、時代をさきがける若者らしいダイナミズムは、横溢しているのだ。


難航―交代寄合伊那衆異聞 (講談社文庫)/佐伯 泰英
2009年4月15日初版
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2009-04-21 11:41:48

『冬桜ノ雀」〈居眠り磐音江戸双紙29〉

テーマ:歴史・時代小説

本巻ではなにほどという動きもなく、どちらかといえば、磐音たちの日常が主体のように思える。
もっとも、家基が妖しい夢に襲われるという怪事は発生する。
九州の高名な武芸者(但し本人かどうかはわからず)と、忍者かもしれない女武芸者の二人組のしわざなのだが、今回討ち果たされてはいないので、このへんは次巻以降に期待をつなげる、というところだろうか。

よって、本巻のメインは、おこんの悩み。
それは、夫婦の間にまだ子供ができない、という、古今東西普遍的な悩みだ。
もちろん、佐々木家の跡取りはまだなのかーっ というような、昼メロ的なじられかたをするわけはないが、友人夫婦に子が生まれ、それを磐音や養父母が抱くのを見れば、やっぱりおこんとしては、早く自分もと思う。
そんな心の動きが、本巻の端々にあらわれている。

もちろん、それ以外にも、脱走囚の捕物があったり、忠臣蔵の吉良を思わせる悪い高家の殿様が出てきたり、小さな事件も起こるが、結果としては、磐音の出身藩が順風満帆である事がわかったり、何やら恬淡として好感のもてる人物が登場したり、本巻内で丸くおさまっているので、これもまた、磐音たちの日常を彩る小事件の域を超えないのだ。

まあ、そういう、過度に人情話にはならない、平穏な日常(佐伯作品基準)のみで終わるのも、長いシリーズの中では良い事なのだろう。


冬桜ノ雀―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)/佐伯 泰英
2009年4月19日初版
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