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2005-05-31 19:33:46

『大魔術師対10人の女怪!』〈マジカルランド〉

テーマ:海外SF・ファンタジイ
スキーヴ、おかえり!
……う~ん、でもちょっと、前と様子が違う、かな?

それもそのはず。
これ、アスプリンがナイと合作した初のマジカルランド(長編)なのだ。

それもそのはず。
スキーヴがM・Y・T・Hを解散してから初めての事件なのだ。

な?
作者にも主人公にも、それぞれ、環境の変化というか、区切りみたいなものがあったわけだ。あとがきで訳者も言っているけれど、これまでのマジカルランドとは、少し雰囲気が違う。
たとえば、ノンストップスラップスティックという感じじゃなくなってる。
「ちぇっ。なんだよ、それじゃマジカルランドじゃねえよ」
いやぁ~。そんなこと、ありませんって。

とりあえず、今回スキーヴが相手にとるのは、天冴鬼の女性10人が組んだ、その名も「十人組」なのだ。
想像してみろよ。
天冴鬼だぜ?
しかも、女なんだぜ?
スキーヴがパーヴへ行った時も、やっぱり、男より女の方がヒトクセもフタクセもあったよな?
そういう女天冴鬼が10人も!

もちろん、ひとりひとりがそれぞれクセがあるし、おまけに、ひとりひとりが天冴鬼だ。
頭が良くて力が強くて、術力(魔法力)も強い。
……天冴鬼だからね。

そして、この「天冴鬼」だってことが、今回の焦点なのだ。
なので、天冴鬼がいったいどういう種族的性格を持っているかということを、よーく思い出しながら読みましょう(笑)。

それ以外に今回なかなか笑えるのが、数学を得意とする小朋鬼(コボルト)の世界。
ここには術力ベースのコンピュータがたくさんあって、こいつらとバニーの出会いが、なんつぅか、運命的かつ大笑い。
バニーがPDAを手に入れたとたん、どさどさどさっと挨拶メールが届くなんてシーンは、ほほえましいを通り越して、腹をかかえて笑ってしまうかも。

すでに書いたとおり、全篇がスラップスティックという感じではない。
でも、笑えるぞ~(笑)。
随所でにやにやと笑えるし、その雰囲気がじわじわとしみいってくる。
そして、最後はやっぱり、スラップスティック。

惜しむらくは、10人もいるせいか、「女怪」たちのキャラクターがいまひとつ際だちきれていないかなってこと。でもなんとなく十人組は今後も出てきそうな感じなので、先の巻に期待しよう。
そうそう、先の巻といえば。
最後、引いてるのだ!
今回の事件はちゃんと解決しているけど、ラストで次の事件の発端が!
これは次の巻もさっさと二人で書いてくれないと>アスプリン&ナイ
そして、訳者には、訳してもらわないと。


著者: ロバート・アスプリン, ジョディ・リン・ナイ, 矢口 悟
タイトル: 大魔術師対10人の女怪!
ハヤカワ文庫FT
2005年5月31日新刊
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2005-05-31 14:12:40

『沈黙』 愛と裏切りは紙一重

テーマ:古典・文学
遠藤周作というのは、私にとって、非常に「微妙」な作家だ。
たぶんそれは、私が中学までカトリック系の学校に通っていて、なおかつ、洗礼を受けずに通したあたりに通じてるんだろう。

遠藤周作は、カトリックを背景にした作品を書く作家だ。
だが、それは、けっして、ストレートに「カトリックの信仰を賛美したもの」ではないんだな。どちらかというと、その搦め手から、カトリックを見ているという印象がある。

というわけで、ぐたさんがとりあげていた『深い河』 に対し、私は『沈黙』を取り上げてみよう(笑)。

誰知らぬ者とてなさそうな、遠藤周作の代表作だ。
簡単にいうと、キリシタンが禁止されていた時代に、日本に布教しにきた宣教師が、拷問にあうのだ。
棄教を迫られるのだ。
信仰を選ぶのか、生命を選ぶのか。
どちらがより重要なのか?
もちろん、棄教しなければ、殺されてしまうのだ。

ちなみに、キリスト教は、自殺を禁じているのだな。
ところがその一方で、信仰のために命を捨てること(殉教)は、肯定されている。崇高な事だとすら考えられているのだ!
よくよく考えると、なんとなく矛盾があるような気がする。
宗教学的には、ちゃんと解決がついている事なのだろうけど、シロートには、こんな疑問がわいてくるだろ。
「だからさ。どっちの方が重要なわけ? 信仰? それとも命?」

もうひとつの問題がある。
カトリックにおいては、洗礼を受けた人が正式な信者なわけだよな?
でもって、
「神の子イエス・キリストの血と肉(を象徴するワインと聖餅)のわけまえにあずかれるのは洗礼を受けた人だけ」
なのです( ‥)/
極論すると、洗礼を受けたかどうかによって、天国行きと地獄行きが分かれてしまう。
ちょっと古いが、アメリカ横断ウルトラクイズの第1問で、○と×を選ぶ時みたいなもんだ。
善人かもしれないのに、洗礼を受けていなければ、「ブブーっ!」……ふるいおとされてしまうんですね。
……信者になってなきゃあ、善人でも地獄行きかよ!
なんか、いまいち、シロートには納得いかないでしょう(‥

『沈黙』は、このあたりのベイシックな疑問が、読者の心に、むあ~っとわきおこってくる物語だと思う。

信仰か。命か。
洗礼を受けた正式な信者であることが、「キリストの教えを信じる」という事で、大前提となるのか?

でね、『沈黙』は、最後まで読んでも、いまひとつ、その問題にズバリと答えてはくれない。
あくまでも、読んだ人が自分で考えなければいけない。
ここらへんが、私にとっては、微妙なわけだ(笑)。
すごーく悩みに悩むような問題を、ぼん、と出しておいて、作者がふいっと顔をそむける。
「あとは自分でやってね」
ま、そんな感じに。
まるで、はじめて自転車に乗った人が、いきなし後ろで支えてもらっていた手をはなされたようなもんだ。

さて、読後、おりにふれてその問題を考えるようになってしまって、長い年月がたつ(やや、おおげさ)。
思うに。
「裏切ること」は、愛の裏返しであって、なおかつ、愛の形のひとつではあるまいか。
(男女間の愛じゃないよ。神への愛という意味での宗教的な「愛」だよ)。
裏切る。あるいは、捨てる。
この過程を通って、はじめて見える「神」または「信仰」が、あるのではないか。

たとえば、イエスの第一の弟子と言われたペテロは、福音書によれば、イエスがとらわれた夜、三度も、自らがイエスの弟子ではないと否定したと伝えられる。
三度否定した事で、ペテロはイエスの弟子である事をやめたのだろうか?
いや、違うよな。
おそらく、それを通して、ペテロはその後いっそう、イエスの教えを深く信じるようになったのだろう。

また、イエスは、物質的に建築された神殿だけが祈りの場ではない、人の心そのものが、祈りの場であると教えた、と福音書は伝える。
ならば、ほんとうは、「洗礼を受けていること」は、キリスト者であることの必須の条件にはならないのではないか。

『沈黙』を通して遠藤周作が示唆したかったのは、そういう事じゃないかなあ、と最近は考える。


著者: 遠藤 周作
タイトル: 沈黙
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2005-05-30 21:43:12

『ガモフ全集』 本の選び方の原点!?

テーマ:各種専門書

ジョージ・ガモフという名前を知ってるか?
「ビッグバン理論」をはじめて唱えた物理学者だ。
この人の論文集は、翻訳され、全集として出版されている。
『ガモフ全集』が、それだ!

さて、私はこのガモフ全集を、中学2年の頃に、読破した。
「ええっ。とら、すげーじゃん!」
と、思うなかれ(笑)。
わかるわけないだろ、物理の論文集なんか。
でも、天文学に興味があったし、わからなくても全部読んだのだ。
それというのも、図書室にガモフ全集があったからだ。

私は、中学まで、中高一貫教育の私立校に行っていた。
一貫教育だから、中等科と高等科は、図書室が共有だったのだ(笑)。
だからだろうな、蔵書は、どちらかというと「高校生向け」だったのだと思う。
それに、蔵書数も他の学校に比べて多かったかもしれない。
そして、なんつっても活字中毒だったから、その図書室にある本を、ともかく全部読み尽くす。
これを志し、卒業までに実行したのだ。
その中に含まれていたのが、ガモフ全集だったというわけ。

でもな、なんか非常に、強い印象が、今まで残っているわけだ。
残念ながら、私は、高校は音楽学校という、極度に専門化されたところに進学してしまったため、普通科に行った高校生より、理数系の授業には恵まれなかった。
それでも、いまだに、
「太陽スペクトルの中のフラウンホーファー線がどうのこうの」
なんていうくだりを、憶えてるんですね(‥

内容が高度すぎて理解できなくても、なんていうか、不思議に、面白いもんは面白いのだな。
そういうフレームを私の脳内に焼き付けてくれたのが、ガモフ全集だったとも言える。
そして、「手当たり次第になんでも」というベイシックな選択基準が確立されたのも、ガモフ全集のおかげだったのかもしれない(笑)。

ところで、私の記憶にあるガモフ全集って、黒い装幀で、いかにも
「大人の読む難しい本(中坊が読めるものなら読んでみるが良い!)」
という外観だったのな。
今、Amazon.comで検索しても、画像が出てこないんだけど、ずっとあのままの装幀だったのか、ちょっと気になっている(笑)。


著者: ジョージ・ガモフ, 鎮目 恭夫
タイトル: ガモフ全集 13 (13)
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2005-05-30 21:11:03

『岩石と鉱物』 やっぱり、石が好き

テーマ:辞典・事典・図鑑
石に興味を持ったのって、すごく小さい頃だ。
まだ幼稚園に行くか行かないかって頃。
近所のおにいちゃんと一緒に、どこかで石を拾ったんだな。
川っぺりだったかもしれない。
「とらちゃん、ほら、この石、緑色だろ? きれいだろ?」
おにいちゃんが見せてくれた石は、深い緑色。
そうだな、抹茶みたいな色をしていた。
全体じゃなく、断面だけだったかもしれない。
「いいなー、いいなー」
でも、幼い日の私は、そういう石をみつける事が、できなかった。

それより、かなり後。
当時の「おにいちゃん」よりもうちょっと大きくなって、たぶん、そうだな、小学校の5年生くらいの時。
学研の「科学」ってあるだろ。
あれの付録に、鉱物標本がついてきた事があった。
いろんな石のかけらがあわせて1ダースくらい入っていて、その中に、瑪瑙があったのな。
オレンジ色で、白いしまがあって、つやつやしていて、そいつがすごく気に入ったのだ。

石は、おもしろい。
きれいな石とか、おもしろい形の石をみつけたら、まるで宝物みたいだ。
宝飾品にされた宝石ってやつも、それはそれ、きれいだけれども、やっぱり、「石」が良いな。
水晶の結晶なんてやつにも魅せられるし、なかでも憧れだったのは、晶洞。
こんな不思議で面白いものが、他にあるか?
なんのへんてつもない石を、まっぷたつに割る。
すると、その中には、びっしりと水晶が結晶してるのだ。
まるで、卵から生まれるのを待ってるみたいだ。
ああ。すげえよな。ほんとに。

幸か不幸か、パワーストーンブームなんてものがあって、子供がこづかいでも買えるくらいの金額で、いろんな「石」がバラで売られるようになった。
いやあ、つい、買っちゃうんだよね(笑)。
「パワー」は、どうでもいいんだけど、色とかつやとか形とか。
ひとつひとつ違うのが、面白いんだよ。
けっこう、集めました、たまりました、全部ちゃんと持っています(笑)。
宝物は、直径3cmくらいの水晶玉かな。
それに、昔もらったレッドタイガーっていう石。
磨いてないんだけど、濃いれんが色のジャスパーの中に、ヘマタイトとパイライトが細い縞を作っている。
やっぱ、しましまの石ってのもいいよなあ。
「とら」だからかな(笑)。


著者: スー フラー, 砂川 一郎
タイトル: 岩石と鉱物
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2005-05-30 12:23:23

『長くつ下のピッピ』 学校へ行く必要ってほんとにあるのかな?

テーマ:絵本・児童文学
ピッピは、常識はずれの女の子だ。
いや、これは、大人から見たピッピ。

ピッピは、自由な女の子だ。
これが、子供から見たピッピ。

なにより、彼女は、学校になんぞ通っていないのだ。
しかも、それでまったく不自由していない。
うるさい両親はいないし、ツギハギ荘という一風かわった家で、ひとりぐらしをしている。

ピッピの話が大好きだ!
子供がそう思うのは、やっぱり、ピッピのように、自由奔放に暮らしてみたいからじゃないかなあ、と思う。
いわば、夏休みに裏山にのぼって、自分たちの手で「小屋」(ていうか秘密基地)を作る。
その発展版が、ピッピの生活なのだ。

ピッピのすごさは、他にもある。
なんたって、小学生くらいの子供がひとりぐらしをしていて、学校にも行っていないのだから、大人が干渉しようとするのは、社会的に見て、あたりまえ。
子供は、すべからく管理されるべき存在だからな。
ところが、ピッピは、そういう大人に対して、一歩も引くことがないのだ!

しょせん、大人に勝つことができない子供にとって、ピッピの一番スゴイところは、この点じゃないだろうか。
ピッピが世界一強いのは、近所の大人に負けないからなのだ(笑)。
そして、彼女の冒険を見ていると、ほんと、小学校なんぞに通うのは、ばからしく思えてきちゃうんだよね。
いいじゃん。
学校なんか行かなくってもさ。
ほら、ピッピを見てみろよ!

そして、ツギハギ荘、これがまた魅力的。
大きくてがらんどうの木があったりするかと思えば、家の中にもなんだか不思議なものがたくさんある。
ピッピのお父さんが船長だから、船にのって外国から来たものも、さぞかしたくさんあるのに違いない。
エキゾチックな文物は、子供でなくても、魅力いっぱいに見えるはずだ。

さて、ピッピの魅力。
すごい力もちで、
ステキなボロ家に住んでいて、
馬を一頭もっていて、
お父さんが船長で、
ピッピ自身は何不自由ないひとりぐらしで、
小学校には通っていない!

どれかひとつを自分に適用できるとしたら、どれを選びます( ‥)/?


著者: リンドグレーン, 大塚 勇三, 桜井 誠
タイトル: 長くつ下のピッピ―世界一つよい女の子
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2005-05-29 20:19:26

『図書分類の実務とその基礎』 図書館の本の背表紙に……

テーマ:各種専門書
図書館の本の背表紙に、小さなシールみたいなのがはってあるだろ?
数字がスタンプとかで押してあるんだよね。
0~9から始まる3桁くらいの数字。(図書室だと1桁のところもあるかも)
でもって、棚を見ると、やっぱり、数字が書いてある。
ジャンル名と一緒に。

小学校時代から図書室図書館の虫だった私は、かつて、これを不思議に思っていたのだ。だって、気になるだろ?
「この数字って、何?」
もちろん、図書室の司書の先生が教えてくれた。
「これは、本を分野ごとに分類するための数字なんだよ」

国際的には何種類かの分類法があるようだけど、日本で多数派をしめるのが、NDC。
これは、日本十進分類法の頭文字だ。
書籍をまず10の大きな分野に分類する。
その下に、さらに、サブジャンルが存在する。

部屋の整理整頓はいーかげんだが、趣味のものを記録分類する事が、大、大、だーいすきな少年にとって、なんと魅力的なものなのだろう(笑)。
ところがだな、数字と分野の関係を表にしてみても(いや、そもそもサブジャンルの表なんてものがまず手に入らないんだけど)、実際に分類しようとすると、これが難しいんだな。

その点、分類することの意義、そして実務をわかりやすく書いてあったのがこの本というわけだ。
いやあ、「分類が好きな人」ならきっと楽しく読めます。
(それ以外の人はきっと、寝てしまうだろう)。

国会図書館で使われているNDLCという分類法についても載っていて、びっくり。
なるほど、国会図書館の分類法は独自のものなのだな!
まあ、普通は、こんなところまで知る必要はないんだけどな(笑)。
NDCの基本を知っているだけで大丈夫。
(図書館を利用しない人は、それすら知らなくてもいいが、そういう人はこういう本、見ないね)。

さて、こんな本を読んでいるなら、とらは自宅の本をNDC分類したんだろうって?
いやあ~。
DB入力だって追いついてませんって(汗)。


著者: 千賀 正之
タイトル: 図書分類の実務とその基礎―データ作成と主題検索へのアプローチ
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2005-05-29 16:37:17

『トリスタン・イズー物語』 ロマンスといえば

テーマ:古典・文学
純愛小説ねえ(‥
などと、今週考えていた。もちろん、トラステのテーマだったからだ(笑)。
なぜ、「パッ」と出てこないかというと、そりゃもちろん、私が「恋愛もの」は苦手だからなのだ。
映画を見に行ったって、ラブシーンになれば即座に(その間だけ)、寝てしまうのである。ほんとだ。

でも、べつだん、恋愛っていうのは単独でテーマになるわけじゃなし、他のとこから攻めてみようか。
そういや、セックスを伴わない男女間の愛(純愛だよな?)は、ロマンスの必須要素だ。ちなみにこの場合のロマンスは「騎士物語」な。

そして、ロマンスの中で、最も恋愛が重要な要素になっているのは、これだろうと思ったわけだ。
トリスタンとイズー(イゾルデ)の物語。

そもそも、ロマンスというのは、理想化された騎士の物語ってことだ。
そして、理想化された騎士は、武芸にすぐれ、人柄は柔和で、特定の女性に心から尽くさなくてはいけない。
この相手は、なんと人妻であっても良いのだが、肉体関係は許されない(という事になっている)。
浮気とは、大違いっていうわけだ。
女王または女神として崇められる「女性」と、その女性に名誉を捧げ、(プラトニックに)愛する騎士という関係でなくてはならないのだ。
でもまあ、それが(プラトニックかは知らんけど)恋愛に発展するのは、ありそうな事に思われる(笑)。

さて、トリスタン。
名前はなんと「悲しみ」というような意味があるのだが、その名の通り、彼の故国はすでになく、両親もない。
でもって、叔父である、コーンウォール王のもとにいるわけなのだ。
フランスで教育を受けて、当代一の若手騎士などという評判のトリスタンくんは、コーンウォールの宿敵、アイルランドからの挑戦を受けて立つはめになった!
相手は有名なチャンピオンで、アイルランド王家ゆかりのもの。
青コーナー、アイルランドのチャンピオン、騎士マロリー。
赤コーナー、コーンウォールからのチャレンジャー、騎士トリスタ~ン!
レディ……ゴー!(カーン!)

死闘の末、なんとか相手を倒したものの、自分も重症を負ったトリスタン、なんと彼をなおせるのは、アイルランドの王妃だけでした(‥
それで、名前をかえてアイルランドに行き、そこで王女イズーと、たがいに「なんかよいな」になってしまうのな。このイズーが、またまた、大変評判の美人さんでした。
で、トリスタンがなんとか無事完治してコーンウォールに戻る。
すると、伯父さんが、こんどは美人てな評判をきいて、イズー王女を嫁に欲しいから、お前いってこい、と。
もちろん、アイルランドとの関係を良くしようという心づもりもあったんだろうけどね。
トリスタンならアイルランドにだって、マロリーを倒したすごいやつ、って名前もしれているはずだから。
使者にやりました。

まあ、無事にイズーを連れ帰りますが、この二人がなんとなくただならぬ関係になりそうだというので、結婚がうまくいくよう、新婚夫婦に飲ませる媚薬を船に積んであったんだけど、なんとこれを、お酒と勘違いしたイズーとトリスタンが二人して飲んでしまうのです( ‥)/
ただでさえ「なんかいいな」という関係だった二人。
どどーん! 燃え上がる恋の炎。
でも、イズーはなくなくコーンウォール王妃に( ‥)/

トリスタンは王に仕える騎士としての本分を忘れなかった、と物語は言うのだが、それでも、日々、王妃のそばをはなれないんですね(^^;
これはいくら「騎士の世界」のことで、トリスタンが「高潔な騎士」という評判でも、伯父さんというか、夫というか、どっちにしたって、マーク王は疑わずにはいられず。
最後には、トリスタンは、マーク王の手で殺されてしまうのでした( ‥)/

なんかすごーくあやしげな、トリスタンとイズーの関係で、現代人が思えば、
「あやしい。絶対あやしい。何もなかったわけないじゃん!」
そう感じるのだが、騎士物語においては、それは、下種の勘ぐりなのだ。
どんなに激しく思い合っていたとしても、
「はい、そこまでよ」
越すに越されぬ一線があるわけだ。
(騎士物語では、文字通り、同じ寝台に横たわりながら、その一線を越さないため、間に抜き身の剣を置く、なんて演出をすることもある)。

しかし。
こういう制限とか、一線なんてものがあると、恋愛って、よけいに燃え上がるものなんじゃないかなあ。
ある意味、その「燃えさかる状態」に陶酔するあまり、その現状にとどまる、なんてことは、なかったんだろうか。
騎士物語における恋愛って、なんかそう感じることもある。
まあ、恋愛に、ある種の自己陶酔は、ツキモノなのかもしれないけどな。


著者: ベディエ, 佐藤 輝夫
タイトル: トリスタン・イズー物語
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2005-05-29 15:18:28

『タフの方舟 2 天の果実』

テーマ:海外SF・ファンタジイ
あこぎな商人、再び( ‥)/
しかも、「宇宙一」あこぎなのだ。
おまけに、主人公タフは、明確なポリシーを持っている。
それは、人も動物も(わけても、ねこを)ことのほか大切にする、ということ。
だからといって、一部の小乗仏教のお坊さんのように、蟻一匹踏みつぶしません、というわけではないけどな。

ともあれ、このタフの特徴が最も良く表されているのは、本巻の収録作『魔獣売ります』だ。
タフが訪れることになった惑星では、いくつかの有力な「家」が、それぞれ、闘技場に獣を送りこんでいるのな。
闘犬とか闘鶏を、もっと大規模で派手にしたみたいなもんだと思えばいい。
こういうものって、エスカレートしがちだけど、とうぜん、タフが仕事を依頼されたということは(タフは、商人だけれど、環境エンジニアでもあり、いろんな生物を生み出せるので)、無敵の獣がほしい、という事だったわけだ。

そうなれば、他の「家」もタフに同じ事を頼んでくるのは、誰だって予測できるだろ?
もちろん、タフには、そんな事、最初からわかっている(タフはゲームの達人でもある)。
だから、とっても巧妙に、かつあこぎに、最終的には全ての「家」に対して、強力な獣を売りつけるわけなんだけど。
その時、ちょっとした、
「……わかりました。では、これにつきましては手前の無料サービスという事にいたしましょう」
なーんて形で、ある仕掛けをするわけだ。
だって、そうだろ?
タフは、生き物の命が大切なんだよ。
そもそも、獣どうしを戦わせる遊びなんて、好むわけがない。

わりと、『魔獣売ります』の手口は、読者にとってわかりやすいけれど、それでも、にやりとしてしまう、楽しいラストだ。

タフは、命を愛する男だ。
でも、決して、ただ働きはしない。
その上で、自分の信条も、ちゃんと守ってしまう。
ジャック・ヴァンスの『魔王子』シリーズその他のように、すごくピカレスクな雰囲気かと思えば、実はそうでもなくて、やっぱ、「悪党」ではなく、「あこぎ」なんだろうなあ。

なんつっても、最初から最後まで、商人らしく腰が低い、でも決して相手におもねらないというところが、良いよな。

ところで、第1巻と同じく、今回もわりと聖書からとってきたモチーフが見られるんだけど、今回のは、『出エジプト記』あたりを読んでおけばわかりやすい。
モーゼがもたらす十の禍、炎の柱、天から降るマナ、なんてモチーフはだいたいそこに載ってるはずだ。
もっとも、例によって、聖書の知識がなくても大丈夫。
面白いよ。

目次--------------------------
タフ再臨
魔獣売ります
わが名はモーセ
天の果実
------------------------------


著者: ジョージ・R・R・マーティン, 酒井 昭伸
タイトル: タフの方舟 2天の果実
ハヤカワ文庫SF
2005年5月31日新刊

海外からのスパミングが多発しているため、遺憾ながら本記事に限り、TBの受付を停止しています。お手数ですが、TBご希望の方は、左枠のボタンから「メッセージを送って」お申し入れ下さい。TB受け容れまで一定期間、TB受付可能なようにします。(2006/08/31)
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2005-05-29 11:17:15

『カレワラ』 フィンランドの神話的叙事詩

テーマ:神話・伝説・民話
『カレワラ』……耳慣れない響きだけど、これはフィンランドの有名な叙事詩のタイトルだ。
で、その叙事詩はなにをうたっているかというと、フィンランド神話の世界なのだな。
日本でいうと、古事記みたいなものだ。

「ああ、フィンランドかあ。てことは北欧神話?」
いや、そうとも言えない。
確かにフィンランドは北欧圏に入っていると思うけれども、いわゆる北欧文化圏から、ややはずれているのだ。

こんな話がある(笑)。
「魔術といえばどこが本場か?」
北欧で、そのように質問したとする。すると、かえってくる答が
「フィンランド!」
……なのだそうだ。
いや、もちろん、現代でもほんとにそういう答が返ってくるかは知らないよ。
ただ、不思議なこと、妖しいことは、フィンランド。
そういうイメージがあるってわけだ。
実際、フィンランドに住む人は、民族的民俗的に、ノルウェー、スウェーデン、デンマークという、いわゆる北欧三国とは、系統が異なるらしいのだ。

でもなあ。
いくらなんでも、魔法だアヤシゲなことだ、そういうのが全部フィンランドー!
というのは、偏見でしょう。
と、思っていると、なかなかどうして。

『カレワラ』は、たしかに神話なのだけど、その内容がそりゃあもう!
あいつとこいつとそいつが、果てしなく、魔術妖術でわたりあうというものなのだ。
TRPGでいえば、ひたすら、「マジックユーザーがのしあるく」そういう世界。
『エッダ』や『サガ』にも、魔術らしきものは(巨人が使うものとして)登場するけど、あちらはどちらかというと肉弾戦のイメージ強いよね。
『カレワラ』は、逆なのだ( ‥)/

フィンランドが魔法の巣窟というのは、偏見じゃなくて、ほんとのことなのかも。
(ある一面、ということになるのだろうけど)。
そんな風にも、思えてくる。

ところで、フィンランドは、森と湖の国なのだそうだ。
それは、『カレワラ』を読んでも、よくわかる。
最初に、延々と広がる水の世界があって、そこから神話が始まる。
原初の水の世界、というイメージは、中近東にもあるし、南北アメリカにもあるけれど、フィンランドの場合は、非常に空漠として、清澄なイメージを伴っているように感じられる。

この、水のイメージ。
死の国にも、あるのだ。
滔々と流れる川の上に、白鳥が浮かんでいる。
これがフィンランドの死の国。
(BGMにはぜひ『トゥネラの白鳥』をどうぞ。まさしくこのイメージからとった曲だ)。

一方の森は、獣の国だ。
タピオという「主」に支配されている。
こういった、「主」のいる森、というのは、古代ヨーロッパに共通のものなのだけど、大陸側は、どんどん森が開拓されてしまって、そういう、原始的なイメージが薄れてしまった。
そのアーキタイプ的な「森」が、なんだか鮮烈に、迫ってくる。
深い森。
日の光も通さないほど、密生した木々。
人間が畏怖をおぼえるような、そういう森の話だ。

冷たく澄んだ水と、雪をかぶった深くて黒々とした森。
なんだか、ちょっと、墨絵みたいだろ。
そこを、原初の巨人や、魔術師たちが闊歩するのだ。
『カレワラ』というのは、そういう世界です。


著者: リョンロット, 小泉 保
タイトル: カレワラ 上―フィンランド叙事詩 (1)
タイトル: カレワラ 下―フィンランド叙事詩  岩波文庫 赤 745-2
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2005-05-28 22:59:36

『バルーン・タウンの手毬唄』 妊婦探偵またまた活躍す

テーマ:ミステリ
妊婦……。
正直に言おう。
やっぱり、怖い。
ひとりの人間の中に別の命が入っているって、畏怖の対象に思える。
こればかりは、経験するすべのない者には、どうにも……ならない(笑)。

そして、そういう「妊婦のための、妊婦だけの世界」という、とっても特殊な舞台で展開されるミステリの、こいつは第3弾なのだ。
いやーよくやるよなー(‥

ていうか、よくネタが続くな、と思うのだけど、マンネリになることなく素晴らしい短編集になってるのだから、ほんとスゴイ。

しかも、随所でニヤリとさせられちゃうのだ(笑)。
ミステリ・ファンへのファンサービスが満杯。
ミステリ・ファンじゃなくても、ニンマリとしてしまうかも。
たとえば、タイトルにも「手毬唄」なんてのが入っていて、『悪魔の手毬唄』を連想させたり。
『僧正殺人事件』が出てきたり、『皇帝のかぎ煙草入れ』が出てきたり。
「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」のもじりが出てくる、なんてオイシイのもある。
しかも、こういう遊びがあるだけに、内容は、かなり「本格」を意識してるんだろうなって作りだ。

それにしても、またまた思い知らせられるのは、
「妊婦の期間限定な体型って、ほんと、素晴らしいミスディレクションになるのだなあ」
っていうことだ。
そして、問題が問題だけに、こればかりは、女性の作家にしか書けないだろうなって思う。
(視点や感覚以前に、男の作家が書いたら、それだけでフェミニストに攻撃されそう)。

松尾由美は、いろいろな「妊婦に特有なこと」を、これでもか、これでもかと出してくる。
いや、それだけなら、男なぞはね。
「うわーやめてくれよーこわいよ」
と、頭をかかえてしまって、それで終わっちゃう。
でも、ちゃんとそういう「人類の残り半分」をフォローするように、男のキャラや、時には出産経験のない女のキャラまでもが、読者のかわりに、コミカルに、頭をかかえてくれるところがいい。

「私の名前はなになにで、妊娠何ヶ月で、ごらんのとおりの亀腹なんですけど、あの人はそうですね、妊娠してから何週目でとがり腹で……」
はあ……(‥?
作中では実際に、男の(ダンディな)警察官が、頭をぐるんぐるんさせてくれるんだな。
体型だけでなく、そういう「話題」も、読者の頭を幻惑させてくれてるんじゃないかなあ。

いや、ほんとに。
コミカルであるから面白いんだな。
どんどん読めちゃうぜ。
しかも、短編集だしね。

目次----------------------------
バルーン・タウンの手毬唄
幻の妊婦
読書するコップの謎
九か月では遅すぎる
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著者: 松尾 由美
タイトル: バルーン・タウンの手毬唄
創元推理文庫
2005年5月13日初版
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