卒業~入院⑩悲愴~

テーマ:

入院してからの忙しい日々。

毎日娘の顔を見に行き、話す。

 

相変わらず甘えてくる。

その甘え方も、普段の自分を取り戻すかのように遠慮が出てきた。

それでも、親の気持ちを受け取りたいのか自分の気持ちをめい一杯表現しようとしているのか、

笑顔で毎日迎えてくれる。

 

携帯を持っていい時間が増えた。

 

しばらく連絡が取れなかった友達にも連絡をするようになった。

 

友達とのやりとりや気持ちを話してくるようになり、自分の置かれている状況をわかってくれている友達。

ひとりじゃないということがこんなにも有難いことと喜ぶ娘。

 

それでも、私には違和感しかなかった。

 

小学校3年生から、毎日連絡を取り遊びに行く友達がいた。

ほぼ毎日遊びに行っていたその友達は保育園からの付き合いで、児童会館に娘が行っていた時

娘の靴を隠していた。

私はそれを目の当たりにしている。

 

その子は私の顔を見るとその時のことを思い出すのか、挨拶するどころか走って逃げるような子。

親はその事実を知ってか知らずか、親同士の交流は無かったが娘には良くしてくれていた。

 

小学校高学年になり仲良しになったもう一人の友達は病気がちで、娘もその子をいたわり

そこの親御さんにもよくしてもらっていた。

中学校一年生の時には、同じクラスになれて当人同士もそうだが、親同士でも喜んだ。

 

違和感から、寂しさが日に日に押し寄せてくる。

娘がこのような状態になり、声をかけて欲しかったわけではない。

むしろ娘と仲良くしてくれていた親御さんと友達には申し訳なかった。

残念だったろうと心が痛んだ。

 

子供同士の友情で互いに心通わせる会話が出来ているのであればそれでよかった。

会えない時間をひとつのツールでの繋がりから、安心感に変わってくれるのであれば良かった。

過去にどんな状況でも、仲良くしてくれた友達。

私の気持ちはどうでもよかった。

娘の笑顔がそこにあればよかった。

 

外出の許可が下りる度に娘はその二人の友達に会いに行くことが嬉しく、日に日に元気になっていった。

 

しかし、ある日。

娘の態度に不安が見えた。

 

「どうしたの?何かあった?」

 

「友達からの返事は来るんだけど、やっぱり会いたくないのかな?

あんなことしたし仕方ないんだけど。。。」

 

娘なりに違和感を感じての不安。

 

その不安をよそに、しばらく様子をみていたが気づいたことがあった。

 

娘が言っていたように、娘から連絡したら返事が返ってくる。

相手からは、入院したからとか、会って楽しい時間を過ごしたからといって

誘うことも無ければ、ねぎらいも応援も心配の言葉ひとつないことに気づく。

 

いつか、友達の家に行くという娘に、相手から誘われたのか聞いたことがある。

その返事は「NO」だった。

 

ふたりの都合に合わせて会いたいからと、外出許可を取ってほしいと娘からのお願い。

ふたりとメールで会話し、日取りを決め外出許可を取る。

何日か前の会話ではふたりとも「OK」だった。

 

嫌な予感がしたので、行く前日に再度確認をさせた。

 

一人は、来るなら来てもいいよという返事。

もう一人はわからないということだった。

 

当日、許可してもらい車に乗り込み、家族でご飯を食べ楽しそうにしていた娘。

これから行くという連絡をすると、ふたりともが今日は会えないという返事。

ドタキャン。

がっかりする娘。

渡したかった物があったしその話をして、ふたりともが楽しみにしていた様子だったのにと寂しそうだった。

きっと泣きたかったんだろうけど、我慢が見えた。

この日は渡し物だけして病院に帰った。

 

それから数日。

そのふたりの対応に違和感を覚えながらも、こちらは納得出来ても娘はそうではないのは一目瞭然。

しかし、自分のしでかした事の大きさは本人が一番よくわかっている。

悲しさと同時に虚しさもあっただろう。

くやしさもあったことと思う。

くやしいのは私だったかもしれない。

 

これまでの違和感を払拭するためにもと、娘に問いかけた。

 

「入院してから相手から連絡来てたの?」

 

「ないよ」

 

「寂しいね。。。」

 

「。。。うん。。。」

 

「お前から連絡したら返ってくるの?」

 

「その時はね。」

 

「それ以外は?」

 

「ない。」

 

「元気?とかも無いの?」

 

「ないよ。」

 

「何話してるの?」

 

「今病院でこうしてるって送ると、そう。ってだけ返ってくる。」

 

「二人とも?」

 

「うん。」

 

「それだけ?」

 

「うん。きっと私のことを考えて言葉が出ないんだと思う。」

 

「そう。。。」

 

そうじゃない。

関わり持ちたくない感が津波のように押し寄せてくる。

相手を視る仕事をしている中で、この直感に間違いはないと確信する。

 

「友達のところに遊びに行って何してるの?」

 

「本読んだりお互い好きなことやって帰ってくる。」

 

「二人とも?」

 

「二人とも。」

 

「話しないの?」

 

「最初の5分くらい話したら、お互い携帯見たり本読んだりしてる。」

 

「つまらないでしょ?」

 

「会えるだけ、会ってくれるだけで嬉しいからいい。」

 

いいはずがない。

その寂しさが孤独を生み、偽善で付き合ってもらっても傷つくのは娘一人。

私の直感が直観に変わり、意を決して言う。

 

「本当にお前のことを心配して、友達だと思ってくれている友達なのかな?

ママにはそう見えない。」

 

「えっ...」

 

「どんな状況でも、入院したって聞いたら何かしらの連絡くれるのが友達じゃない?

会話の内容もおかしいよ。

 

ママはお前がどんなことしたか言ってないけど、ママの様子見て何か変だって思って

声かけてくれた友達がいたよ。

 

そのママの友達に、『娘ちゃんのお友達から何か連絡来て、お互い連絡取れてる?』って聞かれた。

『あれだけ仲良かったら連絡もくれてるだろうし、それが娘ちゃんの励みになってるね!

親って血が繋がってても子供同士の結束には勝てないからね~。

ひとりでも心配してくれるお友達がいてくれてよかったね!』って言われてね、

本当の友達ってそういうものだなって思ったんだ。。。

でも、お前が仲良くしていたその二人は、未だにお前が連絡しないと声も掛けてくれないんだよね?

それって本当の友達なのかな?」

 

そう言った瞬間。

娘は今までの不安が一気に噴き出したように、私にしがみついて大声で泣いた。

 

一番違和感を感じていたのは娘。

そして一番辛い言葉を伝えたのは私。

気持ちのモヤモヤを払拭したかったのは私だったかもしれないと気付く。

 

まだ13歳。

誕生日がまだだったので12歳。

 

この日が彼女の人生の中で一番苦しく悲しかった瞬間だったろう。

死ぬよりも辛かっただろう。

 

自分のことは信じられなくても、人を信じ疑うことの無かった娘。

どんなにこちらがその子の本質を見抜いても、自分が信じた友達だからと親の言うことを

聞かずに、相手の気持ちを大切にしてきた娘。

自分が相手を裏切らない代わりに、相手から裏切られるなんて考えたことも無かっただろう。

 

娘が泣き止むまで側にいてあげることしか出来ない無力さを感じた。

 

後悔はしていない。

しかし、娘に辛く悲しい思いをさせてしまった。

 

切なさを感じたその日から、娘の笑顔は消えた。

 

続く...