娘の入院が決まった日。

 
全ての終わりを全ての始まりにしたくて、入院の準備に必要な物から衣服全てを新品で揃えた。
 
娘は、こんなにお金かけて自分の準備をしてもらったことがないと、全て真新しい物に囲まれ嬉しそうだった。
 
物が揃い、あとは何が欲しい?と尋ねると、
 
「髪切りたい。」
 
と言ったので、腰まである自慢の黒髪を切ることにした。
 
これも断捨離。
娘の門出。
 
あれだけ髪を切る事に反対していたのに、余程何かから離れたかった 忘れたかったかのような言い方だった。
 
腰まであったキレイな黒髪は、ショートになった。
 
全てを終えて、時間が余ったので、入院生活に入る前に好きな事をやらせたく、甘やかしかもしれないけど、娘ご希望のフクロウカフェに行った。
 
幸せを呼ぶフクロウ。
見ていて癒された。
だけど、あの冷ややかな眼は真実を見通している。
それでも暖かく見守ってくれているような、見て見ないふりをしてくれている感覚に感謝した。
 
この子達も山に帰りたいのだろうか…
そのうち娘も家に帰りたいと言ってくれるだろうか…
 
この子を産んでから12年間。
野放しにしてきた割に子離れ出来ていなく、子供に依存してきた。
 
何かあったらこの子を守らないといけない
何かある前に助けないといけない
この子には私しかいない
 
そんな思いを持ち、娘がどう思おうと我が子は自分の元から居なくならないという確信があったのに、あの子は自分の元を去ろうとした。
居なくなろうとした。
それも自ら命を絶とうとした…
 
今目の前にいて、寂しげだが楽しそうに笑っている娘を見て、こころが傷んだ。
 
いつから心から笑っているところを見ていないだろう…
楽しそうにしていたのは、私に心配かけないためだったんだな…
ママに心配かけたくないっていつも言ってた…
親の顔色伺いながら、怒られないように過ごしてた…
いつも「ママ 、ママ」と話しかけてくれて、身体の心配してくれてた…
もっと甘えたかったんだろうな…
 
今、声を聞けて、笑顔が見れて、目線を向けてくれているのが本当は無くなってたかもしれない…
 
頭がグルグルする
産まれてから今まで、この子のためにしてきたこと全部が間違っていたのか…
この子をちゃんと見てきていたか…
親のフリしてただ押さえつけてた…
 
産まれた時。
正直、かわいいと思わなかった。
でも、女の子だって聞いた時嬉しかった。
 
夫と別れようと思っていた時に出来た子。
どうしても彼の子は産みたくなくて堕ろそうと考えた。
産んでもいいから、夫とはいたくなかった。
親から、父親の無い子にするなと散々言われ、仕方なく夫とは一緒にいた。
つわりも酷く、ご飯が食べられない日々が続き、気持ちが途絶えそうになった時に胎動が始まり、こんなにご飯食べられなくてもお腹の中で育ってる我が子を感じた時に、堕ろさなくて良かったと思えた。
 
前夫と別れて、その人との間に出来た子を置いてきて、離婚してから一度も会っていない。
別れ方が別れ方だったから仕方ない。
その子は男の子だったから、商売をやっている以上跡取りが必要。
そんな使命感の中生まれた子だったのもあり、割り切っていたとはいえママっ子だったから、余計にその子に会えない苦しさは尋常でなかった。
まだその子に会えない苦しさから抜け出せていない最中の妊娠。
置いてきた子と重ね合わせて、自分のエゴだがお腹の子は二度と手放さないと決めることの出来た瞬間だった。
 
わたしはこの子に救われた。
 
前夫との子を忘れることの出来るまでの5年間。
地獄だったのを、この子の、娘の笑顔で救われていたことを忘れていた。
 
忘れていた感情を、身を呈して思い出させてくれた娘。
 
10ヶ月までつわりが酷く、最初の子と同じだったけど、産まれてくる日が待ち遠しかった。
 
期待しすぎ。
 
お腹の中にいる時から、執着は始まっていた。
 
そして、我が身にこびり付いた『見えない執着』から娘は自ら命を絶とうとした…
 
 
続く