わが社の仕事中の多くは、道路に関する工事である。
鉄道や民間施設の仕事もあるが、国道の維持補修、トンネル、橋、それらの補修、と、高速道路も含め道路関係がとりわけ多い。
そんな仕事をしているのに知らなかった道路の歴史が書かれた本を発見、大変面白く読ませていただいた。
「道路の日本史」(武部健一/中公新書)
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2015/05/102321.html
著者は道路行政に携わった技術者である。
サブタイトルは「古代駅路から高速道路へ」。
まさにその通りで、紀元前からの道路の歴史が綴られているのだ。
道路の歴史の最初は、軍事的な目的が大きかったという。
古代中国、そして古代ローマが広大な領域を治めることが出来た大きな要因は、道路網だった。
「すべての道はローマに通ず」という言葉があるが、これはまさにその通りの意味だそうだ。
「道路」という存在の成り立ちを含め、初めて知る数々の興味深い事実に何度も驚きながら読み進めた。
もっとも驚いたのが、現代の高速道路建設中に古代の道路遺跡がよく出てくるのは、古代と現代でほぼ同じ場所にルート選定をしているから、という説。
日本の全国的な幹線道路の歴史には、①古代道路、②江戸期海道、③近現代道路、④高速道路の4段階があって、①と④が同じ場所を通ることが多いというのだ。
この理由はぜひ本を読んで知っていただきたい。(第2章 六 高速道路の古代回帰)
今までまったく知らなかった情報である。
そして、この道路の歴史の記述の中、わが福島市の、しかも当社本社からほど近い場所が2度も紹介されたのもびっくり。
日本の文献の中での「道路」という言葉の登場についての記述で、松尾芭蕉の「奥の細道」の中に福島の飯坂(当社本社の地)で持病に苦しんだ際に「道路に死なん。これ天の命なり・・・」とあるということだ。
あまり嬉しい言葉ではないが。
そして栗子山隧道。
明治の初期に福島市と米沢市をつないだ「万世大路」の建設をした三島通庸の紹介である。
その最難関が当時日本最長だった「栗子山隧道」だったのだ。
本社から20kmくらいのところにある。
この件についてはいろいろ思うことがあるので改めてまた詳しく書きたい。
この本の帯に、「国を作ることは道を通ることだった」とあるが、まさにそう実感出来た、すばらしい本であった。
超おすすめ。