基礎から学ぶビタミンEー6.生体膜のリン脂質二重構造、不飽和脂肪酸の自動酸化とビタミンE1(d-αートコフェロール)

三石巌:全業績7、ビタミンEのすべて、より

 細胞を包む膜、すなわち細胞膜、そしてまた、細胞内小器官をつつむ膜は、構造からみて、変わりがない。細胞内小器官が、細胞膜から変化してできたものであることを考えれば、これは当然の次第である。この膜に対し、「生体膜」という言葉が使われる。
 生体膜の主成分が「リン脂質(レシチン)」であって、全体が層構造をしている事実は、早くから知られていた。やがて、リン脂質が流動していること、タンパク質がそこに島のように転々と浮かんだ状態でいること、タンパク質のうちには、膜の表面から裏面まで貫通した形のもののあること、タンパク質から外方に向かって糖鎖がのびていること、などがわかって、生体膜についての知見が増えた時点で、1973年、シンガーのモデルが発表された。現在われわれが生体膜について考えるときには、シンガーのモデルをよりどころにするようになっている。
 生体膜の構造はともかく、その機能は誰にもわかる性質のものだ。というのは、生体膜は壁ではなく、特定の物質を、中から外へ、外から中へ、選択的に通過させることが、至上命題となっているからである。われわれが、外界にあるさまざまなものの中から、食べられる物を選択して口に入れ、不要となったものを大小便の形で排泄するのによく似ている。生体膜は、物質の選択の可能な構造を取っているわけだ。
 生体膜の基本は、脂質二重層である。脂質の主要なものはリン脂質だが、この分子は、二本脚をもった人間のような形をしている。二本脚は脂肪酸の鎖状分子であるが、多くの場合、その一つは飽和脂肪酸、もう一つは不飽和脂肪酸である。脂肪酸は水になじまないところから、「疎水性」だといわれる。
 頭はグリセロール(グリセリン)であって、それが、コリン・イノシトール・セリン・エタノールアミンなどの帽子をかぶっている。この頭の部分は、「親水性」で水によくなじむ。
 リン脂質のグリセロールは親水性、脂肪酸は疎水性ということだが、その二重層は、疎水基を内側に向きあわせ、親水基を外側に向けている。したがって、細胞膜の場合、親水基は、一方では外部環境に対し、一方では内部環境に対している。細胞の外部も内部も、水溶液が主役をつとめるという状況の反映がここに見られるのだ。
 リン脂質の二重層のなかには、タンパク質もコレステロールも存在するが、いずれも流動している。この流動性は生命のあかしであって、その速度は適度でなければならない。生体膜内部の流動性をコントロールするの役目を負うのはコレステロールである。これが多いほど、流動性は落ちる。
 タンパク質の役目は、膜の形を安定化させる作用のほか、酵素作用、レセプター作用などである。細胞の受け持つ代謝に必要な酵素のうちのあるものは、膜内にある。レセプターとは受容体の意味であった。副腎皮質を例にとれば、そこの細胞膜には、「副腎皮質ホルモン」レセプターがなければならない。
 そし、これらのタンパク質に異常がおこれば、代謝は不能となり、細胞への来訪者の受容もできなくなり、しかも、膜構造はくずれるであろう。このようなタンパク質の変性の原因は主として酸化である。ここにおいて、有力な抗酸化物質としてのビタミンE1の役割を思わざるをえない。
 ところで、酸化促進物質の攻撃を最初にうけるのはタンパク質ではなく、リン脂質中の不飽和脂肪酸である。この攻撃によって不飽和脂肪酸が酸化をおこすのは、ビタミンE1のような抗酸化物質が存在しない場合である。不幸にして、不飽和脂肪酸が酸化によって過酸化脂質になると、それがリン脂質からはずれて、その付近にあった無傷の不飽和脂肪酸があとがまにはいり、正常のリン脂質を再構成する。
 このような現象を総括してみると、ビタミンE1も必要、万一の場合の補充用の不飽和脂肪酸も必要、ということになる。むろん、生体膜を正常に保つための条件に着目しての話である。ビタミンE1に問題をしぼれば、生体膜の保全のうえで、これはきわめて重要なな役割を演じているということだ。ビタミンE1が欠乏すれば、生体膜に異常がおき、多くの生理機能が阻害に追いこまれるのだ。 
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ビタミンE1、リン脂質(レシチン)が不足した状態において、生体膜の不飽和脂肪酸が自動酸化される。
酸化された不飽和脂肪酸は生体膜から外れ、付近にあった無傷の不飽和脂肪酸があとがまにはいり、正常のリン脂質を再構成する。
酸化された不飽和脂肪酸の代用品がない場合、脂肪酸ラジカルが周囲の不飽和脂肪酸を次々と酸化してゆく連鎖反応が起こり、過酸化脂質を生じる。
不飽和脂肪酸が燃え尽くされると、酵素タンパクが項が攻撃を受け、細胞の代謝が不能となる。
生体膜内に入れるビタミンEはビタミンE1のみ。
ビタミンE1とレシチンがあれば、生体膜機能を修復することが出来る。
レシチンが多い食材は卵。


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