早朝の林では蝉の羽化が始まっています。

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殻から出たばかりのまだ真っ白で羽も乾いていない蝉は抜け出して来た殻に掴まって成虫になるのを待っているます。

しかしまだ飛ぶ事も出来ない体を無防備にさらしているこの時は蝉にとって一番危険な時間なのでしょう。

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明るくなって来た林のあちこちでは木の傍をカラスが歩き回って羽化中の蝉を探しています。

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殻から出たばかりのこの蝉は少し目を離していた間にいなくなっていました。

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食べられた蝉は運が悪いと云うだけでは無く目立ち易い場所で羽化を始めたり羽化の途中で明るくなってしまったと云う様な理由もあるのでしょう。

林のあちこちでは羽化を始めたばかりの蟬から、殆ど成虫になっている蝉までがいます。

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この、もう飛べる蝉は危険が迫れば飛び立って行けます。

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この林の中では羽化の時から、より生る力の強い者が生き残ると云う生存競争が始まっているのです。

すっかり明るくなった林の地面には幼虫が出て来た穴が残り、木には抜け殻が残って蝉の声が喧しいくらいに響いています。

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自然の中では種の保存こそが大切な事で個々の生命の生き死には些細な事なのかも知れません。

しかし、種としての生命の保存も一匹の蟬が生命を繋ぐと云う行為の集まった結果だと云う事もまた事実なのです。


生き残った蝉達はこの夏に地上で過ごす短い時間を生きて行きます。

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次の時代を担う生命を生み出すために・・・