2024年4月より施行された改正児童福祉法では、子どもの意見聴取や意見表明など権利養護に係る必要な環境整備が都道府県の業務に位置づけられました。大人が子どもの意見を聴くという日本社会ではこれまであまり実践されてこなかった難題に直面することになりました。「子どもは大人の言うことを聞くものだ」などと考えがちな大人たちが果たして素直に子どもの声に耳を傾けられるのか。まずは大人たちの意識改革が必要でしょう。

 

 そして子どもたち。学校という小さな社会の中でさえ自分の気持ちを表現したり、誰かと違うことを言ったりすることに慣れていない。忖度しあう大人と同様,同調圧力の風を受けています。

 

 子どもが意見を表明するためには、まず意見を形成する力を身につけなければならないでしょう。小さいころから周りの大人に自分の気持ちを聴いてもらう経験をたくさん積み、自己肯定感を育み、子どもなりに自分の頭で考えて行動すること。失敗するのも一つの権利でしょう。その子どもの年齢や発達に応じた想いや意見を安心して表出できる環境を作るのは大人の役割です。

 

 では意見を言いにくい子どもや障がい児はどうしたらよいのでしょう。想像してみてください。私たち大人は赤ちゃんを相手にするとき、表情、目や身体の動きから必死に何かを受け取ろう、読み取ろうと努力しているではないでしょうか。それなのに子どもが言葉や自分なりの行動を使い始めると、発せられる言葉や行動のみをうのみにして、ほかのサインに目を向けようとしなくなりがちです。大人はやればできると信じたい。

 

 SNS上に罵詈雑言が飛び交うような生きづらい社会だからこそ、小さき者、弱き者に心を止め、謙虚にその声を聴いていきましょう。子どもたちがきっと、社会に優しさを取り戻すためのヒントを導き出してくれるでしょう。      

 

【月刊福祉5月号】より