2024/02/11 信濃毎日新聞
 「祖母への敬意」「満州支配、見えにくくなるから」

 「中国残留日本人『3世・4世』と名乗るということ―その意味と意義を問う」と題したシンポジウムが10日、飯田市で開かれた。戦時下の満州(現中国東北部)への移民や、残留した孤児や婦人らが後に帰国した歴史が、日本で生まれたその3世や4世といった若い世代の人生にどう影響してきたか、当事者の4人が報告して意見を交わした。

 報告者の一人で一橋大大学院生の山崎哲さん(38)は、残留婦人だった祖母と共に帰国した両親の下、東京で生まれた。少年期には歴史をよく知らず、母親が日本語が分からず小学校で恥ずかしい思いをしたり、中国に親戚が大勢いたりと、育った過程で「混乱や分からないことが多すぎた」と振り返った。

 祖母の歴史を聞く経験などを経て、自身は残留日本人の「3世」だと認識したと述懐。日本人や中国人、中国系といった表現では十分でなく「祖母への敬意や、歴史性を含んだ存在」として自分を説明するために「中国残留婦人3世と名乗りたい」とした。

 曽祖母が残留婦人で、神戸市の華僑コミュニティーで育った東京大大学院生の森川麗華さん(25)は3世や4世を名乗る意義について、「中国系移民」などとすると、日本が中国東北部を支配した歴史が見えにくくなる―とした。

 飯田市が主催し、会場とオンラインで100人余が参加。会場からは「名乗ることは、親族にとってはアウティング(本人の了解のない暴露)になりかねない」とし、配慮についての質問も出た。