和紙の風合いと、川越の街並みが絶妙にマッチしていて、この会場で開催したことが大きな成功に繋がっているようだった。
和室に障子、と和紙が欠かせない両者の繋がりのなかで、会場となった長屋自体が、障子の部屋であり、和紙が張り巡らされ、イベントの雰囲気をさらに高めているよう。
会場から少し歩けば、川越の歴史的資産があちこちにあり、一番街や神社仏閣にはもちろん和紙が使われているところも多い。
和紙のイベントとして、川越の中でこれ以上打ってつけの場は他には見出せなかった。
川越で東秩父を。
東秩父が川越で。
2014年11月、「和紙・日本の手漉和紙技術」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。登録されたのは、「石州半紙」(島根県浜田市)と「本美濃紙」(岐阜県美濃市)、「細川紙」(埼玉県小川町、東秩父村)の3つの和紙です。
それから2年後、2016年12月、「川越氷川祭の山車行事」がユネスコ無形文化遺産登録。
「川越 氷川祭の山車行事」を含む全33件の「山・鉾・屋台行事」が登録されました。
川越と東秩父は、世界遺産繋がりという言い方もでき、川越ー東秩父のコラボイベントは画期的な出来事でした。
2018年3月9日(金)~3月11日(日)の3日間にわたり、一番街の近く、本町の長屋で開催されたのが、「東秩父SELECTION」。
『東秩父村の素敵なコト、モノと川越で出会いませんか♩
地域おこし協力隊の活動の中で生まれてきた、新たな和紙商品や体験を皆さんにご紹介し、楽しんでもらう3日間です。
ひと足早い東秩父村の春をお楽しみいただけます♩
少しずつ暖かくなって、川越散策にも気持ちの良い季節です。ぜひお立ち寄りください♩』
内容:
1.和紙フラワー展示販売 ブーケ・胡蝶蘭・椿・桜
2.和紙チャイルドドレス展示試着会
3.和紙フラワーの髪飾り試着会
細川紙を使った新商品です!是非お試しください。
4.和紙フォトギャラリー
東秩父村の風景を和紙にプリントした写真展です。
5.”花桃の小枝”プレゼント(数量限定)
東秩父村は、花桃の出荷量県内1位!
春の雰囲気をご自宅でお楽しみください。
6.和紙ワークショップ
各日和紙を用いた体験メニューを用意。
※各種体験は、有料です。
3月9日・10日:染紙だるま
3月10日:和紙フラワー
3月11日:和紙レターコラージュ
ーーーーイベント詳細ーーー-
「東秩父SELECTION」
日時:2018/3/9(金)〜11(日)
10:00〜16:00
会場 :本町の長屋(川越市元町1-12-2)
川越駅から東口からバス10分「札の辻」下車
※蔵造りの町並みエリア
企画:東秩父村地域おこし協力隊
協力:NPO法人川越蔵の会
問合せ:0493-82-1223(東秩父村産業建設課)
今回は主催が東秩父村地域おこし協力隊で、NPO法人川越蔵の会が協力としてバックアップし、普段はNPO法人川越蔵の会の事務局になっている長屋をイベントのために3日間開放して開催されました。
長屋があるのが、一番街の北側交差点、札の辻と市役所を結ぶ本町通り沿い左手にあります。ちなみに、本町というのは現元町の旧名です。この通りも新しいお店が続々と出来て、風景ががらりと変わってきている通り。
本町の長屋は、あるいは年2回「長屋バー」が開かれている場所、と言えばピンとくる人も多いのではないでしょうか。
「長屋BAR(バー)」年に二日間だけオープン 本町の長屋 NPO法人川越蔵の会
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11843207873.html
埼玉県東秩父村は、埼玉県西部に位置し、都心からは60キロメートル圏内、約1300年の歴史と伝統を有する手漉き和紙と、豊かな自然や農業などの豊富な魅力を持つ「埼玉県唯一の村」です。
緑の山並みと四季折々の花々、村を流れる清流「槻川」、初級から中級レベルの様々なハイキングコース、「細川紙」を代表とする手漉き和紙などの伝統文化、神楽や獅子舞などの伝統芸能など1年を通して自然と文化が堪能できる地域であり、「細川紙」を漉くその技術は平成26年にユネスコ無形文化遺産に登録され、この小さな村も世界から脚光を浴び、より多くの観光客が訪れる様になりました。さらに、観光の拠点である東秩父村和紙の里は、平成28年10月に「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」としてリニューアルオープンし、様々な体験と交流のできる施設へと生まれ変わりました。
東秩父村の魅力を伝える東秩父SELECTION。主催は、地域おこし協力隊。
地域おこし協力隊は全国で展開されている活動で、埼玉県内でも、東秩父村以外にも秩父市、横瀬町、神川町、小鹿野町などで活動しています。
「地域おこし協力隊」
https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/
地域を変える力になろう。
『「都会を離れて地方で生活したい」
「地域社会に貢献したい」
「人とのつながりを大切にして生きていきたい」
「自然と共存したい」「自分の手で作物を育ててみたい」…。
今、都市に住む人たちがさまざまな理由で豊かな自然環境や歴史、
文化などに恵まれた「地方」に注目しています。
「地域おこし協力隊」とは人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、
地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、
その定住・定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度です。』
東秩父村を拠点にした地域おこし協力隊の西さんが企画したのが今回の「東秩父SELECTION」」。
西さんは東秩父村出身、地域おこし協力隊の前段として地域の20代の若手中心にした東秩父村活性化団体「夢村いく会(むらいくかい)」を立ち上げて、婚活イベント・村コンなどを企画していた。
その後、東秩父村の地域おこし協力隊の募集が始まり、都内の職場から転職して仕事に就いて3年。これまで、東秩父村の魅力を開拓、発信を積極的に行ってきました。
東秩父村の魅力を知ってもらいたい。
東秩父を飛び出して東秩父の魅力を知ってもらおうと、東秩父SELECTIONに選んだ地が、”小江戸川越”でした。
地域おこし協力隊として活動してきた3年、今までの活動の集大成の場であり、積み重ねてきた全てを詰め込んで見せたのが、この3日間。
長屋の入口に展示されている、色とりどりの花々。これらは一瞬見ただけでは、生花かあるいはアートフラワーかと思って足を止める人が多かったですが、実は「和紙」で出来ていることを知って驚きの声をあがる。生花と見分けがつかないほど本物感がある和紙フラワー、それに和紙フラワーの髪飾りや和紙のチャイルドドレスも展示され、和紙ワールドが展開。
東秩父村の世界遺産「細川紙」から作られた和紙職人による作品群は、和紙でこういうことができるのかと和紙の可能性を示していました。
確かに、和紙は自由自在に色んな用途に加工することができる素材で、発想やデザイン次第でいか様にも活かすことができる。可能性の大きさはまだまだ未知数。芸大・美大出身の若手手漉き和紙職人ほど、和紙の素材自体に魅力を惹かれているという。
この入口の展示に、東秩父村における細川紙のこれまでにない見せ方・提案が詰められていました。
新たな細川紙の在り方を見せることができたのも、地域おこし協力隊が関わっているからこそ。おそらく、行政だけの主導では、こうした東秩父村の大事な資源である細川紙の活かし方のアイディアは形にならなかったかもしれない。東秩父村を拠点にした地域おこし協力隊員が積極的に行動し、コーディネーター役となって、行政・手漉き和紙職人・デザイナーを繋ぎ合わせ、今までに実現できなかった細川紙の形(和紙フラワーや髪飾り、チャイルドドレスなど。それに東秩父村の和紙のイベントを川越でやろうというアイディア自体も)に実を結んでいた。
和紙のワークショップにしても、東秩父には、これまでは「和紙の郷」での手漉き和紙体験くらいしかなかった中で、今回のイベントのようなワークショップが企画されたのも地域おこし協力隊がパイプ役となって各方面を繋いだからできたこと。地域おこし協力隊として今まで積み重ねてきた全てがここにあり、そういう意味で集大成でした。
和紙フラワーに惹かれ、さらに、長屋内のワークショップに参加する人も途絶えない状況が続いていく。
3月9日・10日は染紙だるま、3月10日:和紙フラワーという内容。実際に細川紙を使用したワークショップで、和紙独特な優しい肌触りを感じながら、自分だけの作品を作っていく参加者でした。
川越に違和感なく東秩父の細川紙が溶け込む。
なぜ、東秩父村の和紙のイベントを川越で開催することになったのか?
会場が蔵の会の長屋になったのか?
東秩父村の「和紙の里」のバスターミナルを川越のイーグルバス株式会社が運営しており、各地と繋ぐ拠点にしようというハブ化計画から、そのためには和紙の里を人が集まるよう魅力向上する必要があり、蔵の会が関わるようになる。
東秩父村「和紙の里」
http://www.higashichichibu.jp/hosokawashi/washinosato
蔵の会の会員である建築士が、東秩父村の「道の駅」内の直売所、観光案内所などの施設、それにバスターミナルを設計しています。
(東秩父村和紙の里バスターミナル
http://mizutaniisyou.jp/portfolio/2016_chichibu/)
蔵の会は東秩父と深く繋がるようになり、地域おこし協力隊として活動する西さんと東秩父村の和紙の展開について話しを深堀りするようになっていった。
こうしたきっかけから、川越ー東秩父の連携が活発に生まれていく。
蔵の会と東秩父村の繋がりは、かつて蔵の会が東秩父村で2015年5月に開催された「和紙の里文化フェスティバル」に出店したことがあり、川越×東秩父ということで、東秩父の新鮮な野菜を使ったバーニャカウダに、川越のCOEDOを提供していたことがありました。
(2015年5月東秩父村「和紙の里文化フェスティバル」)
毎年、鯨井のつばさ館で開催されている「エコプロダクツ川越」では、蔵の会が出展時、東秩父村の和紙を使い、和紙漉き体験を実施しました。和紙漉きと言っても、ただ漉くだけではなく、ハガキサイズの和紙に季節の草花や川越唐山の端切れを好みにデザインできるようにと。この時は夏休みということもあり、たくさんの子どもたちが参加し、終始列ができるほど大盛況でした
(2015年8月「エコプロダクツ川越2015」
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12057981974.html)
さらに言うなら、長屋の裏側にある「弁天横丁」の長屋再生の時に、東秩父村の手漉き和紙を和室の壁に使用していたこともありました。蔵の会会員が中心となっての和紙貼り。下貼りの和紙の上に、東秩父村の紙漉き職人さんの風合いのある和紙を使用。というように、東秩父村と川越蔵の会の繋がりはもう数年になるのです。
(弁天横丁の長屋再生プロジェクト
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11883390087.html)
そして、地域おこし協力隊として東秩父のイベントを川越で開催することになり、蔵の会の事務局を会場として使用することになったのでした。
東秩父SELECTION、最終日、3月11日のワークショップは和紙レターコラージュ。
日曜日ということもあって、もちろん一番街は大勢の人で賑わい、長屋も人が途切れることなく大盛況でした。
3日間通して長屋内は人でごったがえし、多くの人が和紙の可能性をここに見出し、ワークショップで実際に和紙に触れ、延べ300人ほどの来場があった東秩父SELECTION。
想像以上に盛況だったと喜びの声をあげる地域おこし協力隊の西さん。
東秩父地域おこし協力隊の西さんの任期は3年で、2018年3月でその役目を終えます。
協力隊という肩書での活動はここで一区切りですが、西さんの瞳は、これから先に向けられている。
東秩父の和紙の魅力を伝えたい。
和紙にこれからも関わり続けることを決意。
「和紙を、もっと日常に」をコンセプトのブランド「Washion」を若手和紙職人さんたちと立ち上げており、こちらで本格的に展開していこうとしている。
和紙雑貨の販売、
和紙フラワー販売・オーダーメイド、
イベント出店・出張講座
和紙ワークショップ(うちわ、染め紙だるま、和紙フラワーなどなど)と積極的に活動していきます。
東秩父SELECTIONは、この3年の集大成ですが、これはゴールであり、スタート。
ここを出発点として、西さんたちの和紙の展開はどこまでも広がっていきます。
「地域おこし協力隊」
https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/
「NPO法人川越蔵の会」
http://www.kuranokai.org/home.html