正論に”小林よしのり「天皇論」を再読する”という記事が載った。
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筆者は新田均さん。皇學館大学の教授の方です。
内容はというと、今、女系天皇を誕生させようと躍起になっている小林さんと「天皇論」に書いている小林さんの言葉の乖離を論証している本と言ったらいいでしょうか。
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たとえば、SAPIOで、天皇陛下は女系天皇を認める方向であるとしか思えないとし、天皇陛下のお考えに反対する男系主義者には恋闕の情が無いとか、天皇を単なる器としか思ってないと辛辣に批判しているのだが、アエラではわしは天皇制は支持するけど゜、天皇の個人崇拝はせん。」「だいたい天皇の私的な言葉が影響力を持つのは問題」と書いていたそうだ。
これが本当ならば、竹田さんを批判したあの辛辣な言葉は何だったんだろう?
話を続けます。
「天皇論」において小林さんは「もし天皇が憲法改正反対を明言なさったら、私は逆賊になる。」とか、国歌、国旗について今上天皇陛下が強制でない方がいいとおっしゃったのを受けて、「わしは天皇の御言葉に反しても日本の伝統を強制する悪役に徹していこうと思っている。」
と書いてあったそうです。私も天皇論を持っているので、すぐ確認できます。
370ページ。
ちょっと見てきます。
書いてありますね。ただ、日本の伝統を強制するのは沖縄の人に対してという意味ですが。
ただ、天皇陛下のお言葉を絶対だと言っている今とはかなり言説が乖離してますね。
そして、今、小林さんが天皇陛下が女系容認だと思っているのは宮内庁の羽毛田長官などが、女系天皇容認で皇室典範改正を画策しているからですが、小林さんはいつも身近にいて、天皇の信頼が厚い羽毛田長官が女系容認なのは天皇陛下の意を受けているからだと勝手に推測しています。
更に羽毛田長官が天皇陛下のご意向に反することをするわけが無いとまでかいているのですが、
天皇論を見ると99ページに天皇の祭祀を破壊し空洞化を目論む者が宮内庁にいると書いている。
それは入江相政氏のことだが、2008年に天皇陛下が体調を崩されたのを機に再び祭祀の簡略化を打ち出し、ただの前例踏襲主義で、入江氏のころと同じことをしたと批判されている人物が居る。
それも、政教分離の批判におもねっているとまで批判している。
誰か?羽毛田長官です。
羽毛田さんは天皇の意に沿わぬことはしない筈なのに祭祀の簡略化を図ったということは陛下が祭祀の簡略化を考えていたということになってしまうと新田氏は批判する。
更に新田氏は小林さんが天皇論で、勝手な推測で資料が無い部分を埋めてしまうようなことを良心的な学者はしない。
憶測、印象、偏見で論ずる手口を使ったら何だって書けると書かれているとしている。
が、小林さんは天皇陛下が女系容認だという論拠はほとんど全て推測なのです。
自分で言った言葉が自分に返ってきてる。
八木秀次さんが「宮内庁長官の発言は普通には天皇陛下のご意向を受けてのことだと思われているが、私なりのルートで確かめたところによれば、必ずしもそういう訳では無い」と書かれているのに対して、
小林さんは
「わしはこのような確実な証拠を示さず書かれた説を信用しない」と切り捨てている。
(これ読んでちょっと私、笑いましたけどね。小林さんの竹田恒泰さん批判は全部こんん感じやん。)
が、自分に都合の良い週刊文春の未確認な推測にはほいほいと乗っている。
更に新田さんは天皇論にある男系断絶・女系容認の議論の中でもまず結果ありきで、議論の筋を通していないと批判する。
小林さんは天皇の先祖は天照大神で、女性の神だから、その子はみんな女系だとむちゃくちゃ書いていたそうです。
天皇家の始祖は天照大神では無くて、その子孫の神武天皇なのですが。
そこから男系で続くということで、男系の天皇家ってものに対しては天照大神が女性だろうがなんだろうが、いいのだが。
実際、天照大神の本当の子孫って訳では無かったはずです。
SAPIOの11月25日号に意味不明のことを書いていたようですが、これは私には理解できないので省きます。
女帝の子供が天皇になっても、その後男子が続けば男系って、だから違うって言ってるでしょ。って言いたくなるだけです。
神武天皇に男系で繋がる直系の子孫が天皇になる資格があるんです。
で、SAPIOを読んで、小林さんがその後解説してくれなかったので、どういうことかと気になっていたことがあるのです。
それは「父が天皇だからというこじつけありの女系継承もある。」というやつです。
「斉明天皇(母)→天智天皇(息子)」、「元明天皇(母)→元正天皇(娘)」とゴー宣には書かれていましたが、いかにもこれだけ見たら、女系継承に見えます。
が、新田さんが日本書紀、続日本紀の記述から丁寧に解説してくれてます。
まず、天智天皇は舒明天皇の男系の子孫であるとしっかり書かれている。
要は舒明天皇と斉明天皇が夫婦で、その子供が天智天皇という訳です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Emperor_family_tree38-50.png
昔の天皇家は近親婚が多かったので、こういうことがあり得るわけです。
お父さんもお母さんも天皇で、お父さんの次にお母さんが天皇になったとして、その息子が天皇になったら、女系継承か?
正解は女系であるけど、男系でもあるになります。
問題ないです。同じく、元明天皇とも元正天皇も近親婚です。
新田さんが言うとおり、小林さんが古典を読んでいないからなのか、知っていてわざと女系継承があったと読書に
印象づけようとしているのかは不明です。
更に新田さんは旧皇族の方に対して冷徹すぎると書かれている。
雅子妃には優しいのに。
旧皇族は俗界にまみれていて、あとからスキャンダルが出てきて叩かれるとか書いているが、それは民間から嫁入りされた雅子様達も同じなのに旧皇族ばかり叩くと新田さんは批判されている。
更に旧皇族の久邇宮邦彦氏を皇室の品格を傷つけかねない人間として叩いているが、この方は今上天皇陛下の母方のおじいさまなんです。
まぁ、小林さんは三笠宮家も叩いているから、今上天皇陛下や皇太子殿下、秋篠宮殿下のご家族以外は何でも叩く気みたいですけどね。
新田さんは私も前に書いていたけども、小林さんが天皇になる資格に「徳」を入れていることがおかしいと批判されている。あくまでも天皇は血で継承されるのであり、その天皇の人格は問われない。
これだと中国の徳治主義になってしまう。男系絶対主義はシナの価値観だと批判していたくせに自分は思いっきり中国に価値観に支配されている。
意味が分からん。
新田さんは「皇族降下準則」についても書かれている。
これは天皇から数えて四世以内の長子孫以外の王を臣籍降下の対象とするものだが、邦家親王を一世とするものだそうです。
小田部雄次氏の「皇族」という本によると戦後皇籍離脱で王の身分を失ったものはみな四世以内で、皇籍離脱をした11宮家を含む伏見宮系13家は皇籍離脱が無かったとしても、嗣子無く断絶するか、降下する運命にあり、降下した皇族は再び皇族に復することができなくなっていた。と書かれているそうだ。
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新田さんは小林さんが準則の原文を見ることなく、皇族のこの記述に飛びついたのでは無いかとしている。
実は降下準則の対象になっている皇族であっても、直ちに降下を命じられる訳では無く、皇族会議と枢密院の同意が必要と皇室典範増補第5条に書かれているそうだ。
更に対象になるのは15才以上になってからだそうである。
つまり、いきなり全員当てはまるからばっさりと皇籍離脱させられる訳では無く、15才を超えた人から一人づつ審査して、離脱するかどうか決めるという仕組みだったわけである。
だから、戦後のようにいきなり11宮家一括皇籍離脱なんてことは起こらなかったし、その時点で、男子の皇族が少ないようであるならば、離脱にならないことも有った筈だというのです。
この部分、絶対小林さん「俺は知ってた」と言って、適当なつっこみ入れるでしょうね。
小林さん正論読んでますから。
でも、多分、また納得できないことを書くと思います。
で、小林さんは旧宮家でも男子は減っているとして、男系維持には皇室制度が必要だと書いていますが、旧宮家の竹田恒泰さんによると、皇籍離脱した時点で25名だった男性が現在は35人居るそうです。
更に20代以下の男性が少ないのはその上の世代、30代、40代が未婚だからだそうです。晩婚化の波を思いっきり受けている訳です。
経済的な理由で結婚できないというなら、宮家に戻ればその辺はクリアー出来るはず。
とまぁ小林さんの言説はこれでことごとく論破された形になっているのですが、きっと小林さんは
「俺はちゃんと読んでるからな。」
と言って反撃することでしょう。そして、やるのは言った言わないの細かい揚げ足取りに終始すると思います。
何か、小さい人間になったなぁ。小林よしのりさんも。
さて、今回、新田さんの文章を見て思ったのが、世の中同じような考え方をする人がいるもんだということ。
資料の検証やら、古典の検証やらしてないものの、私も似たようなことブログに書いてました。
やっぱり、小林さんの漫画が最近おかしいというのはみんな思いながらも読んでいるのだなぁと思いました。
SAPIO廃刊、WILLでの連載中止って日がそろそろ迫ってきたのかもしれません。
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