ドイツ連邦議会、着床前診断の法的枠組みを可決_1 | Hidy der Grosseのブログ

ドイツ連邦議会、着床前診断の法的枠組みを可決_1

ドイツ連邦議会、着床前診断の法的枠組みを可決

adpd http://de.nachrichten.yahoo.com/pid-engen-grenzen-zugelassen-155115492.html

AFP http://de.nachrichten.yahoo.com/bundestag-entscheidet-%C3%BCber-pr%C3%A4implantationsdiagnostik-050514614.html

どちらの記事も内容に大差がありませんので、adpdの記事だけを紹介します。

(「歯止めが利かなくなること」を「Dammbruch=ダム(あるいは堤防)の決壊」と表現するのが面白いと思ったので、こちらを選びました。)

訳出に入る前に、政党略称をまとめて書いておきます。

CDU=キリスト教民主同盟: バイエルン州(自由国家バイエルン)を除く全国区の保守政党。

CSU=キリスト教社会同盟: バイエルン州限定の保守政党。

上の両党は連邦議会では共同会派を形成しています。両方を合わせて単に「同盟 Union」と呼ぶこともあります。

FDP=自由民主党: リベラル。政治的自由に関しても、同じブルジョア政党の同盟に比べるとかなり自由主義的ですが、特に経済面における自由主義的傾向が目立ちますし、それが党の「売り」でもあります。

SPD=社会民主党

以下、上記adpdの記事の訳出・・・

PID、厳しい制限付きで許可

ベルリン(adpd) 人工受精卵の遺伝子検査が、限られた場合には認められる運びとなった。連邦議会では、部分的には情緒的な面を含む討論が行われた後、超党派の多数派が着床前診断(PID)を制限付きで許可した。病気・障害に関するこの検査には倫理上の論争があり、教会はこの決定に対して遺憾の意を表明した。連邦医師会は、責任を充分に守って法律を実行に移す、と約束した。

連邦議員たちは、党議拘束のない4時間の討論において、それぞれの立場のために格闘した。採決にかけられた法案は3つであった。PIDの厳密な禁止、例外を含む禁止、そして、制限付きの許可である。最終採決では、出席議員594のうち326人がPIDの条件付き許可に賛成し、260人が反対、8人が保留(棄権)であった。

PIDというのは、人工授精で生じた胚を、発生の初期段階で遺伝病や障害について検査することである。健康な胚だけが母体に移され、そうでないものは枯死させられる。胚保護法を補完的に改定したのは、連邦裁判所判決に対する議会側の応答でもある。この判決は、PIDは禁止されているという支配的な見解に対して異議を唱えるものであった。PIDを実行するための前提条件を、議会は今初めて明確化したわけである。

PIDの許可を訴えたのは、特に、社会大臣のウアズラフォン デア ライエンUrsula von der Leyenウルズラ フォン デア ライエン(CDU)と同党のペーター ヒンツェPeter HintzeおよびFDPの健康問題専門家ウルリーケ フラッハUlrike Flachである。病気の胚が移植されないので、この方法は流産・死産および人工妊娠中絶を避けるのに役立つ、とヒンツェは語った。また、フラッハは、制限付きの許可が蟻の一穴になると予見される、という不安に対して反証した。条件にあてはまるのは数百の事例でしかないし、どの事例についても倫理委員会が個々に決定を下すのだ、とフラッハは語った。この立場を訴えたのは、他には特に、SPDのカール ラオターバッハKarl LauterbachCDUのカテリーナ ライヒェKaterina Reiche、緑の党のイェジ モンタークJerzy Montagである。最終的には彼らが多数派となった。

PID禁止の立場を代表したのは、同盟会派の議員団長(院内総務)フォルカー カオダーVolker Kauderフォルカー カウダー(CDU)、連邦政府に委託された患者代弁者ヴォルフガンク ツェッラーWolfgang Zöllerヴォルフガング ツェラー(CSU)SPDのヴォルフガンク ティーアゼWolfgang Thierseヴォルフガング ティールゼとアンドレア ナーレスAndrea Nahlesに並んで、左翼党のイリャ ザイファートIlja Seifertイリャ ザイフェルトとカトリン フォーゲルKathrin Vogelそして、緑の党のカトリン ゲーリンク‐エッカートKatrin Göring-Eckardtカトリン ゲーリング‐エッカルトとビアギット ベンダーBirgitt Benderビルギット ベンダーである。ツェッラーは、「生きる権利が自由に処分されてはならない」と語った。また、カオダーは「今問題になっているのは命の倫理である」と強調した。連邦首相アンゲラメアケルAngela Merkelアンゲラ メルケル(CDU)もこの禁止案に投票したが、禁止の賛同者は負けてしまった。

SPDのレネ レスペルRené Röspelルネ レスペル?などの妥協案にも、チャンスはなかった。彼らは、流産・死産の高確率なリスクを抱えている親のためにわずかな例外事例においてのみPIDを許可する、と提案した。この立場には、特に連邦議会議長ノーバートラマートNorbert Lammertノルベルト ランメルト(CDU)および緑の党のプリスカ ヒンツPriska Hinzが協賛した。

ドイツ司教協議会(司教会議)PIDの許可に遺憾の意を表明し、この方法を本当に狭く限られた場合にしか実行しないように要求した。ドイツ福音派教会は、ようやく法的な保障が作られたことについては称賛しながらも、許可の条件が緩すぎると非難した。

連邦医師会は、厳格な制約が守られるよう注意を払っていくと確約し、PIDはルーチンワークであってはならないとも語った。しかしながら「命の助け」連邦連盟は、PIDが広く適用されるのではないか、と恐れている。「障害を抱えている人の多くが、この決定を差別だと感じているに違いない」と連盟は述べた。

訳出は以上。

注釈をいくつか加えておきます。

1

連邦政府に委託された患者代弁者=記事中では、「Patientenbeauftragte(n)」。正式名称は「Beauftragter (女性の場合にはBeauftragte) der Bundesregierung für die Belange der Pazientinnen und Patienten」。連邦政府の委託を受けて、独立した立場から患者の利益のために政府に助言をする役職。

ドイツ司教協議会=Deutsche Bischofskonferenz: カトリックの組織。

ドイツ福音派教会=Evangelische Kirche in Deutschland: 「プロテスタント」というとらえ方をしておけば、「当たらずとはいえども遠からず」。

カトリックの方が強固なピラミッド型の組織を持っているのに対し、福音派の方は緩やかな連合体です。

連邦医師会=Bundesärztekammer。「ドイツ医師会」と訳しているサイトもいくつかあります。

「命の助け」連邦連盟=Bundesvereinigung Lebenshilfe。精神障害者とその家族、およびこの分野の専門家からなる各地の自助組織の、全国的な連合体。

2へつづく

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