魔改造の主 | 小森陽一オフィシャルブログ「一期一会」Powered by Ameba

魔改造の主

二年振りくらいだろうか。サシ飯をしたのはコロナ前だからおそらくそれくらいになる。倉野信次氏、元ホークスのピッチャーであり、コーチである。知り合ったのは選手時代だから随分と昔だ。でも、倉野さんはその頃と印象が変わらない。外側だけでなく内側も。


大リーグにコーチ修行に行くということは先日のスポーツ紙でも報じられていたから、僕も触れて大丈夫だろう。その話は本人から直接伺っていた。
「プロ野球チームにとってコーチというポジションは重要です」
以前より倉野さんはことあるごとにそう話していたものだ。


導く人がどれほど大切でかけがえのないものか、誰もが知っているだろう。反対に、導く人と相容れず、止む無くそこを離れた経験をした人も少なくない筈だ。出会いは大切だ。出会いによって人は何倍にも飛躍したり、坂道を転げ落ちたりする。倉野さんは選手時代から野球だけではなく、もっと視野を広く持ちたいと言っていた。ちょっと変わった野球選手だなと思ったことを覚えている。その精神は選手時代よりもむしろコーチ時代に開花したようだ。広い視野で育んだものの見方と伝え方で、幾人ものピッチャーの才能を伸ばしていく。ファンはその事実に「魔改造」という言葉で賛辞を送った。

憚りながらご本人を知る身として伝えさせていただくと、魔改造とは「聞く力」と「伝える力」の合わせ技ではないかという気がする。倉野さんは人の話を貪欲によく聞く。おそらくどんな世界のどんな人の話も聞いて吸収する。それを自分の内で様々にアレンジして、今度は選手に伝えていく。伝え方は一通りではない。彼のようなタイプにはこっちがいい、彼はこんな風だからもっとストレートに伝えようと幾多にも変わる。引き出しが多いのだ。だから、選手にはより上手く、より分かりやすく、より深く伝わる。当然ながら結果として現れる。

アメリカに行っても貪欲に吸収するのは間違いない。いつかは戻って来て、それを伝え始められる。そこからどんな選手が育ってくるのか、今から楽しみで仕方がない。



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