昨日6日、法務省は、1995年3月の地下鉄サリン事件など計13の事件で殺人罪

 

などに問われ、死刑が確定したオウム真理教元代表の松本智津夫(麻原彰晃)

 

死刑囚(63)など7人の教団元幹部の死刑を執行し、発表しました。事件から

 

四半世紀も経ち、死刑が確定した元幹部13人のうち、執行されたのは初めて

 

です。7人も同時に死刑が執行されたのは、極めて異例のことで、戦後最大規模

 

となり、様々な意味で賛否の意見があがっています。私は、死刑廃止の議員連盟

 

で議員時代も活動していましたし、死刑には反対です。少なくとも、麻原彰晃は、

 

あれだけの事件を起こし、有能な若者たちを巻きこんだのですから、まず死刑が

 

執行されるのは仕方ないとしても、他の幹部の中には、反省し捜査に協力したり、

 

できるだけ真実を語ろうとしていた人もいた、と報じられていたので、この

 

おぞましい事件の根源に何があったのかをしっかり語ってもらい、二度とこの

 

ようなことが起きないようにしていくことに貢献してほしかったと思います。昨日、

 

死刑が執行されたのは、教団の「総務部長」といわれた早川紀代秀死刑囚(68)、

 

教団の「諜報省」トップの井上嘉浩死刑囚(48)、教団の「自治省」トップ新実智光

 

死刑囚(54)、サリン製造などを担当した土谷正実死刑囚(53)、医師でサリン

 

製造を担ったと認定された中川智正死刑囚(55)、サリンの製造や散布への関与

 

が認定された遠藤誠一死刑囚(58)です。この時期の死刑執行の背景には、

 

オウム関連の裁判が終結し、今後証人として呼ばれることがなくなったこと。

 

大きいのは、来年は皇室の代替わりがあり、再来年は五輪・パラリンピックがある

 

こと。そして、平成の間に片づけたいということがあったのでは、とされています。

 

オウムが関与した、地下鉄サリン、松本サリンなど13事件で、29人が亡くなり、

 

6500人以上が被害に遭っています。現在の法律が死刑を定めている以上、死刑

 

が執行されることは、避けられないことは理解します。しかし、死刑を執行された

 

死刑囚の多くが、まだ控訴をしている最中で、麻原彰晃は精神に異常をきたして

 

いると専門家が診ていた中での執行でした。私も、NHKで報道の立場から

 

関わり、また議員になってからは、被害者を救済する法律を超党派の議員立法で

 

作ったりしてきました。事件の被害者の妻で「地下鉄サリン事件被害者の会」代表

 

世話人の高橋シズエさんも、よく存じあげていますが、高橋さんも、松本死刑囚の

 

執行は「当然」としながらも、ほかの6人の執行を聞いた時は「動悸がした」「今後

 

のテロ防止のため、彼らにもっと話してほしかったし、専門家に彼らにもっと聞いて

 

ほしかった」と述べています。ずっと関わってこられた弁護士、ジャーナリストなども

 

同じ趣旨の発言をしています。私が、とても気にかかっていて、死刑執行を

 

聞いて、胸が痛くなったのは、入信当時高校2年生で、現在も48歳と最も若かった

 

井上嘉浩死刑囚です。井上死刑囚は、逮捕後は、捜査に積極的に協力していま

 

した。一審では、連絡調整役にとどまるとして無期懲役でしたが、二審では実行役

 

と同等の責任があるとして死刑としました。刑が確定した後も、元信者の高橋克也

 

受刑者(60)などの裁判員裁判に出廷して、詳細に証言していました。今年3月

 

に、「死刑を免れたいわけではないが、事実は違うと明らかにしたい」と弁護士に

 

語って、再審を請求しましたが、審理される前の執行になりました。被害を受けて

 

今も後遺症に苦しむ多くの方への保障、救済は、今後も続けられなければなり

 

ません。一方で、なぜ頭のよい若者が、オウムに入り、あのような凶行に及んだの

 

かを解明することは、難しくなってしまい、胸につかえが残ったままです。今も

 

居場所のない若者は、たくさんいるはずです。死刑については、諸外国から

 

非難の声が上がっています。EUでは、死刑を「基本的人権の侵害」と位置付け、

 

死刑廃止がEU加盟の条件となっているなど、先進国の多くが死刑を廃止して

 

います。死刑が、犯罪抑止効果につながっていないということも強く言われて

 

います。日本では、8割の人が死刑を支持しているとされていますが、刑務所から

 

生涯出てこられない終身刑を設けることを加味すると、死刑賛成の人は5割になる

 

という調査もあります。これを機会に死刑の是非についても改めて考えてほしいと

 

思います。