軍事にも応用できる科学研究に、科学者はどういう態度で臨む

 

べきか。政府が防衛力強化を進める中、科学者を代表する日本

 

学術会議は、検討作業を進めてきました。2月には、会員や市民

 

が参加するシンポジウムを都内で開き、「軍事研究を行わない」と

 

する過去の声明の見直しを検討する検討委員会の中間報告に

 

ついて議論しました。4月の総会での結論を目指しています。

 

一昨日6日、「軍事研究をしない」とした1950年と67年の声明

 

の基本方針を「継承する」との新声明案を作成した、と報じられて

 

います。そもそも戦後、「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを

 

行わない」としてきたものです。しかし、軍事重視の姿勢を強める

 

政府は、国家安全保障戦略や防衛計画大綱で、大学や研究機関と

 

連携して、軍民両用(デュアルユース)を積極的に活用する方針を

 

打ち出しました。「安全保障技術研究推進制度」を作り、武器などの

 

防衛装備に活用できる基礎技術の発掘と育成を目的に、防衛省が

 

2015年度から、この研究応募制度を始め、初年度は3億円だった

 

予算が、16年度に6億円に、そして17年度の予算案では、その18倍

 

の110億円に膨らみました。1件あたり5年間で最大数十億円を支給

 

する枠を新たに設けて、大幅に制度を拡充する、ということです。

 

日本学術会議の新しい声明案では、公募制度は「政府の介入が

 

著しく、問題が多い」と指摘しています。科学者が防衛力強化策の

 

一環に巻き込まれつつあることに対して、学問の自由を掲げて「待った」

 

をかけた形、とのこと。ただ声明には強制力はなく、研究費不足に

 

悩む研究者や大学にとって制度は魅力があり、声明が歯止めになるかは

 

わからない、と報じられています。学術会議では、大学や学会に倫理審査

 

や指針整備など、慎重な対応を求めています。大学の中でも、広島大、

 

関西大、法政大、信州大などは、応募を認めない方針を決めています。

 

政府からだけでなく、日本の大学や学術界に、2008年から16年までの

 

9年間に、米軍から少なくとも135件、総額8億8千万円にのぼる研究助成

 

が提供されている、とも報じられています。各国が軍拡競争になるような

 

世界情勢の中で、戦後の志が曲げられないよう、しっかりした歯止めを

 

日本学術会議や各大学、研究機関には求めたいと思います。