八重垣姫(下の赤い着物)の「口説き」の動きは生身の人間にはとてもできない。

イナバウワーみたいなポーズで勝頼(上の左)に流し目をおくったり。

カイロをもむように両手をくねくね動かして煩悶を伝えたり。

生身の人間にはできない・しない動きだけれど、人間の感情をより伝えてくれる動き。

 

これらは人形が演じるという制約を逆手にとって、人形だからできる動きで人の心を強調しているのだ。絵筆の代わりに版画で削り出して描くのに似ている。

 

演目は「本朝二十四孝」

休憩を挟んでたっぷり三時間半。

これでも二段目と四段目だけ。

武田勝頼と上杉景勝が協力して悪役斉藤道三を討ち果たすとか、物語としては荒唐無稽であるところをツッコむ意味はない。

八重垣姫が狐と同化して諏訪湖を飛んでいくのをあっけにとられて楽しめばよい。

文楽を心から面白いと思わせてくれたのは2020年2月の「安宅関」だった※その日のブログにリンクします

チャンスがある毎に文楽にふれてきたが、この秋に長浜の「富田人形館」でホンモノを持たせてもらう機会があって、よりおもしろくなってきた。※その日のブログにリンクします

 

あ、国立劇場小劇場ぐらいの大きさでも、観劇の際にはオペラグラスをおすすめします。