世界の潮流に背を向け、ひとり内向き日本

 

 今年の2月、小学3年の長男の塾友だちがイギリスに留学すると聞いて、「ずいぶん早いなあ」、と驚きました。行き先など詳細は知りませんが、母親も一緒に行くようです。

 

台湾や韓国では、小学生の子どもが母親と一緒にアメリカなどに留学するケースが昔からありましたが、日本もそういう時代になったのかな、と感じました。台湾では、父親ら地元に残る家族との分断がニュースになっていましたが、今はどうなのでしょう。

 

 8月には、東京・渋谷区内の私立の中高一貫校に通う、知人の中学3年の男子が同じくイギリスに留学しました。本人は、早くからプログラミングで異能を発揮、「早く起業したい」と話しています。学内の寮で暮らし、2年後に復学する予定ですが、状況次第で現地に留まることもあり得るようです。

 

 日本からの留学11万5千人、行き先1位アメリカ、中国が5位

留学「一年以上」はわずか2千人

 

 身近な留学の話に触れて、日本でも若年化も含め、留学はごく一般的になってきたのかなあ、と思っていたら、「おやっ」「ほんとなの?」と驚く数字に出会いました。朝日新聞の「EduA(エデュア)の9月13日号です。毎週日曜発行の小、中、高の受験生向け教育情報紙です。

 

 この号の特集はコロナ時代の「留学」

 記事で紹介された2018年度の主な国・地域別の日本人留学生数(年度内に海外の大学などで留学を始めた学生の数/日本学生支援機構調べ)は11万5146人。

 

行き先では①米国1万9891人②オーストラリア1万38人③カナダ1万35人④韓国8143人⑤中国7980人⑥英国6538人⑦台湾5932人⑧タイ5479人⑨フィリピン4502人⑩ドイツ3387人、その他3万3221人となっています。

 

国別順位は、10位内にフランスやロシアが入っていないのは、少し意外ではありましたが、世界経済の共通語が英語、そして中国語になってきている状況をみれば、さもありなん、の結果です。

 

留学期間「1カ月未満」が約7割

短期では学び薄く、どっぷりと現地に浸かれない

 

「おやっ」「ほんとなの?」と、驚いたのは、留学生のうち「1年以上」がたったの2034人(1.7%)しかいないことです。「1カ月未満」が7万6545人と圧倒的に多い(66.4%)

 

短期間で学べることには限界があります。その国を知るには歴史、文化、自然に触れ、たくさんの人と知り合うことが不可欠です。専門の勉強は、1年以内では余りに短い。世界各国から来ている留学生と深くつきあうのも難しい。長くいれば、将来の仕事や学問にいかせる人脈を築くことも可能です。

 

短期留学を一概に否定するわけではありませんが、日本を離れてどっぷりと異国に浸ろうとする若者がもっとたくさんいても、いいのではないか、と数字を見て残念な気持ちになりました。

 

では、ほかの国はどうなのでしょう。

 

世界の留学生500万人 

断トツ中国は86万人、2000年比で5,6倍増

 

 統計によって、留学生の概念が違っており、単純な比較はなかなかできません。

信頼できるデータとして、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)がまとめた「高等教育機関への国別留学者数」(2017年)があります。UNESCOが定義する国際標準教育分類のレベル5~8で、大学相当のすべての高等教育機関が含まれます。留学の期間は定かではありませんが、一カ月未満の短期留学は含まれていないようです。

 

 この統計によると、2017年の世界の留学生は508万85159人。

 国別にみると、一位は断トツで中国の86万9387人。世界の留学生の2割弱を占めています。2000年の15万4600人から約5,6倍と驚異的な伸びを示しています。

 

 日本は37位3.2万人で中国の27分の1

 3位ドイツ12万人、4位韓国10.5万人にも遠く及ばず

 

 

 以下、②インド30万5970人③ドイツ11万9021人④韓国10万5360人⑤フランス9万717人⑥カザフスタン8万9505人……と続きます。

 

 さて、日本はというと、37位で3万1702人。中国の27分の1です。韓国に比べても3分の1以下です。同じ工業立国のドイツと比べると約4分の1。

日本の若い世代の目は、海外の同世代と比べると、圧倒的に内向きで、外には向いていないようです。

 

増える世界の留学生 激減の日本人留学生

2000年の5万8931人から半減

 

 世界で37位、約3万人という数字以上に、日本にとって悲観的なデータがあります。対2000年比の数字です。

 2000年の日本人留学生は5万8931人。2017年の約2倍です。日本からの留学生は2000年代に入ってどんどん減ってきています。

 

 1990年代初頭にはじけたバブル期以降の「失われた20年」や「失われた30年」といわれる経済の低迷、国力の低下と歩調を合わせるように留学生数は減ってきています。

 

留学にはお金がかかります。

お金を出す親の側からみると、先進国では日本だけが1997年から実質賃金の低下が続いています。また、学生からすると、国内での就職を考えた場合、企業や組織の風土として、留学はリスキーでメリットよりもデメリットが大きいのかもしれません。ならば、グローバルな時代、海外企業を目指せばいい。しかし、そうならないのが当世日本の学生気質なのでしょう。

 

経済発展著しいアジアの留学生が急増

 

2000―2017年の間、世界の留学生は約2.5倍に増えています。中国は前述したように、その倍の約5.6倍です。ドイツも倍増、韓国は3万5千人増えています。経済発展著しいアジアの国々もベトナムが9130人→8万9094人、マレーシア4万5807人→6万4187人、バングラデシュ8768人→5万55787人と、大きく人数が増えています。

 

異文化の中で育まれる人間力が、やがて国力になる

 

 留学生数の推移を見ると、世界の潮流に背を向けて、ひとり孤独の道を歩んでいる日本の姿がみえます。

 

 スキルだけでなく、判断、洞察、会話、忍耐などトータルの人間力、マンパワーは同質の社会よりも異文化の中で鍛えられ、培われます。留学生数の増減は、いずれ国力の違いとあって現れるでしょう。

 

(拓)