日米など14カ国が加わる「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合は9日(日本時間10日未明)閉幕し、参加14カ国が正式交渉入りを宣言した。
中国に対抗する米主導の連携策が始動した。
閣僚声明は、半導体を念頭に重要物資のサプライチェーン(供給網)途絶への備えを強化するほか、食料安全保障の推進でも協力すると宣言。
協議を加速させて来年初めに公式の閣僚級会合を再び開く。
IPEFの閣僚級会合で集合写真に納まる各国の閣僚ら=8日、ロサンゼルス
交渉4分野のうち「貿易」にインドが参加しなかったが、残る13カ国は加わる。
東南アジア諸国やオーストラリアを含む14カ国の国内総生産(GDP)の合計は世界の4割を占める。
米主導「IPEF」
供給網強化など4分野で交渉へ…
中国念頭に経済安保の連携強める
米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合は9日(日本時間10日未明)、参加14か国が正式に交渉入りすることで合意した。
経済的な影響力を強める中国を念頭に、経済安全保障上の連携を強める狙いがあり、サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化など4分野でルール作りを進める。
記念撮影に臨む西村経産相(左から2人目)ら各国閣僚
(8日、米ロサンゼルスで)
会合は8日から2日間、初の対面形式で開催された。
米通商代表部(USTR)のタイ代表は会合終了後の記者会見で「私たちの地域に莫大(ばくだい)な経済的価値をもたらすだろう」と強調した。
米国は早期に交渉を進めたい考えを示しており、レモンド米商務長官は、2023年初め頃に次の閣僚級会合を開催することに意欲を示した。
会合では、
〈1〉貿易
〈2〉サプライチェーン
〈3〉クリーン経済
〈4〉公正な経済
――の4分野で、今後の交渉項目を掲げた閣僚声明を取りまとめて公表した。
貿易分野では、食料や農産物の輸出で不当な制限を回避することや、労働者や環境の保護、安全なデータ流通の推進などのデジタル経済などに取り組むとした。
サプライチェーン分野では、半導体や医薬品といった重要物資の安定供給に向け、各国が連携して情報共有や危機対応を行う仕組みづくりを盛り込んだ。
クリーン経済では、脱炭素化に向けたインフラ投資支援や途上国への技術協力を促進するとしたほか、公正な経済では汚職やマネーロンダリング(資金洗浄)の対策を進めることなどを示した。
IPEFは、バイデン米大統領が今年5月の訪日時に発足を宣言した。
米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)などの貿易協定とは異なり、関税の引き下げや撤廃は交渉項目として扱わない。
日本や米国、豪州、韓国、インド、インドネシアなど参加14か国の国内総生産(GDP)の合計は、世界の約4割を占める。
参加する交渉の分野は、参加国が自由に選べる仕組みとなっている。
今回の会合では、インドが貿易分野の参加を見送ったが、他の13か国はすべての分野の交渉に参加することで合意した。
日本から会合に出席した西村経済産業相は9日の記者会見で「交渉入りする4分野すべてが重要だが、経済安全保障の視点は重視したい」と述べた。
インド太平洋経済枠組み(インドたいへいようけいざいわくぐみ、英: Indo-Pacific Economic Framework、IPEF〈アイペフ〉)
環太平洋パートナーシップ協定
(かんたいへいようパートナーシップきょうてい、英語: Trans-Pacific Partnership Agreement、略称: TPP)