誰もがうらやむ超名門校に進学した卒業生から、メールが来ました。「先生、私は学校をやめました。ごめんなさい」

彼女は受験生時代にも一度、「なぜ受験するのか。どうして公立ではいけないのか」と悩んだ時期がありました。このとき彼女といろんな話をしました。
「あなたの言うことは正論だよ。まちがってない。別に公立でも構わないと思うよ。いい学校を卒業したっていうのは『鬼に金棒』の『金棒』なんだよ。金棒があったほうがなにかと便利だから、みんな手に入れようとしている。いくら金棒だけ持っていても鬼がへなへなではどうしようもないけどね。

でも、金棒なしで、素手で勝負するっていうのは並大抵のことじゃないよ。学歴に頼らずに活躍するには、相当実力がないとだめだからね。実力も金棒も両方あれば、最強なんだろうけどね…」

彼女はとても聡明で精神年齢も高かったので、小6ですでに生き方の根源的な問題に向き合ってしまい、社会の不条理や矛盾などにまともに疑問を持ってしまったようでした。

それでもいろんな悩みを振り切って見事に第一志望に合格し、彼女自身もとても喜んでいたのですが…。

賢い彼女のことだから、今、学校をやめてしまうことがどれほどマイナスになるか、よくよく考えたうえに出した結論なのだと思います。「どうしてやめちゃったの? もったいない!」という言葉を今後いやというほど浴びせかけられるだろうことを思うと、気の毒でたまりません。

高い能力と豊かな人間性を持った彼女のこと、金ピカの金棒なんて捨ててしまっても、充分に活躍できると私は確信しています。何もしてあげられないけれど、せめて彼女の生き方をずっと応援し続けたい、見守っていきたいと思います。