2020-02-21 08:15:16

 

一週間以上をかけて丁寧に、慎重に推敲を続けたエントリーをアップします : 感染症の名称をめぐって

以前のエントリーなどでもすこし書きましたが、WHO(世界保険機関)が感染症・疫病の名称について「地名などを冠さない」という趣旨の方針を定めたのは、陳馮富珍 ( マーガレット・チャン )事務局長の時代のど真ん中、中国を背景にしたその権力がもっとも盛んだった時代です。


▼チャンさんは、いかにしてWHOの権力を握ったか。
 中国で鳥インフルエンザが猛威を振るっているらしいと分かり始めた頃、西暦2006年11月にWHO事務局長の選挙がありました。
 日本は、国際社会で声価の高かった尾身茂WHO西太平洋地域事務局長(当時)を擁立しましたが、中国は、香港で公衆衛生の責任者だった時に中国共産党の言いなりと批判されたチャンさんを立て、アフリカ諸国などへの凄まじい裏工作も展開して、小差で当選させました。
 このチャン事務局長は、2007年1月から2017年6月まで実に10年半にわたって、中国のカネの力を後ろ盾にしてWHOを長期支配したのです。

 その後任が今、中国びいきが過ぎると辞任要求まで出ているテドロス事務局長です。
 テドロスさんはこの批判に強く反発していますが、エチオピアの元保健大臣です。中国のアフリカ囲い込み戦略の拠点のひとつにされているがエチオピアであり、中国から莫大なカネが渡るにつれ、エチオピアは膨大な債務を中国に対して背負う国になっています。
 テドロスさん本人がどうあがいても、この構図が変わらない以上は、WHOは2007年の始まりから現在まで、13年以上にわたって首脳陣が中国の支配を受けている情況だというのが、偏見でも何でもなく、いちばん客観的な、専門家のあいだでは常識的な見方です。


★WHOの実務家、専門家のなかには日本人を含め良心的にして優秀、公正なひとびとも沢山、いらっしゃいます。
 それだからこそ、WHO首脳陣と中国の独裁主義との関係に疑念がある現状について、世界でもっとも公衆衛生の充実した国のひとつである日本は、改革のリーダーシップを執るべきです。
 前述の尾身茂さんというWHOのすべてに通じた立派な人材も活かすべきでしょう。


▼さて、上記のチャンさんが事務局長だった2015年に作られたのが「地名などを感染症の名に冠するな」という指針です。
 不肖ぼくには「この指針がありながら、武漢熱と命名するなんて赦せない」と激昂し、「日本の国益に反する」などとアサッテの方向を向いたような非難をするコメントが届いています。
 この方針が決められた経緯などをご存じなくて「偏見と闘う立派な方針だ」と善意の誤解をなさっているか、それともズバリ、中国の工作活動の一環だと考えています。


▼ぼくの発信をある程度でも追っているかたなら、武漢熱クライシスの当初から「中国がWHOを使って、もはや中国発の感染症だとも、中国の独裁主義が感染を拡大させたとも、分からなくするような名称を冠するだろう」という趣旨で警告をし、それに公正に対峙するために、あえて「武漢熱」と名付けますと宣言していたことを知っているひともいるでしょう。
 事態は、その懸念の通りになっています。
 WHOは、感染が世界に広まった時期を選んで、COVIDー19という珍妙な名を付けました。
 武漢とも中国ともまったく分からなくしています。
 こうした誤魔化しがやがて行われると予測していたから、武漢は発生源そのものであり、また中国科学院・武漢病毒研究所(1956年創立)という巨大なウイルス研究所との関連が未解明で、解明に必要な情報公開もなされていないことも考慮し、ひとつの試みとして、武漢の名を冠しました。
 そして、もっとも短くするために、症状や症例のすべては網羅していなくとも典型的な症状である「熱」の一字を付けたのです。


▼そして、チャン事務局長(当時)が「地名を冠するな」という指針を決めたのは、差別や偏見と闘うのが主目的ではないことを伺わせる状況証拠があります。
 それは、地名を冠して付けられた多くの感染症の名が実質的にはほとんど変わってはいないという事実です。

 日本の感染症予防法にて「一類感染症」に指定されていて、したがって、もっとも怖ろしい感染症だけでも、ずらりと地名を冠した名前が並びます。
 致死率が最悪の場合は9割近いエボラ出血熱 Ebola hemorrhagic fever(エボラはアフリカ中央部の川の名)を筆頭に、クリミア・コンゴ出血熱 Crimean- Congo hemorrhagic fever(クリミアは半島の名、コンゴは国の名)、マールブルグ病 Marburg virus disease(マールブルグはドイツの伝統ある大学都市の名)、ラッサ熱 Lassa fever(ラッサはナイジェリアの村の名)、そして南米出血熱の名で括られているアルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、ベネズエラ出血熱、ブラジル出血熱それぞれがあります(いずれも国名)。
 なぜ中国の都市名だけ、付けちゃいけないのですか?


▼「中国の国名、中国の都市名だけは感染症の名に付けちゃいかん」とは、さすがに言えないから、チャン事務局長があらかじめ中国共産党の意向を背景に、中国なりのリスクヘッジ(将来にあり得るリスクに事前に周到に備えておくこと)として「感染症に地名を冠するな」という指針を打ち出した疑いがどうしても起きてきます。
 ふだんなら、こうした疑念はトンデモ説として考えたいところです。それが不肖ながら、ぼくの専門家の端くれとしてのたいせつな基本姿勢でもあります。
 しかし、今回はあまりに情況が特別です。
 なにが特別か。

 まず、21世紀に入っての中国は、感染症の発生が起きては情報が途絶えるという怖ろしいことの繰り返しです。
 たとえば、前述の鳥インフルエンザをめぐっても、ヒトからヒトにうつり強毒性をもって人間を殺すウイルスが実際にヒトからヒトへうつり南京で死亡者が出てから、チャン事務局長のWHOから有為な情報は出なくなり、直近では肺ペストも最初の発生だけ情報があって、そのあと、ばったりと音沙汰がありません。
 中国共産党とその政府は強(したた)かにして能力が高いですから、自国の社会環境、公衆衛生の実態が感染症を生み易くくなっていることをきちんと自覚していると考えられます。
 したがって、チャン事務局長の使命のひとつが、やがて中国で新しい感染症が起きたときに備えることだったのは、実は疑うのがかなり難しいのです。


▼そして日本国民だけではなく中国の国民、中国のふつうの人々、庶民、さらに世界の人々の現在と将来のために、決して忘れてはならないことがあります。
 今回の厄災が武漢という場所から発生し、武漢市長が、中国共産党中央の怒りを怖れて疫病を隠蔽したこと、そのような国の態勢を作りあげた習近平国家主席の統治のあり方、これらのために厄災が爆発的に広がったという経緯です。


▼さらに深く考えておくべきことが、もうひとつ、あります。
 ご存じの人もたいへんに多くなりましたが、中国は、軍部が三戦と称して世論戦、心理戦、法律戦をやると実質的に世界へ公言している特異な国です。自分から工作国家であることを宣言しているのと変わりません。
 したがって、自国内で新たな感染症が発生した場合のリスクヘッジとして、WHOを動かすだけではなく、日本をはじめ諸国において潤沢な予算を使って世論を変え、日本国民らの心理を動かし、さらには国際法や、他国の法律まで秘かに差配することを狙ってくることが日常と考えねばなりません。
 だからこそ、感染症の名称という、いわば情報の原点のひとつから、このような工作に対峙すべきだと考えます。
 現在の厄災については、武漢が発生源であることを隠していこう、忘れさせていこうとする工作に正しく向かいあうことが、どうしても必要です。

 これら凡(すべ)てを総合し、専門家の端くれとしての任務を考え、圧迫を受けても信念によって、武漢熱という名称を使い続けます。