2019年4月1日。エイプリルフール。


新しい元号が令和と発表されるなか


宝くじ当たりましたあ!


なんていう楽しいウソがあちこちで走り回る日。そんなエイプリルフールにウソみたいなホントのことがオレたち家族に起こったのは、今からちょうど2年前のこと。弟の結婚式当日に、父がこの世からいなくなるというあの嬉し悲しの出来事だ。


今でも思うけど、あれは家族想いの父がひらめいた「嬉しさ100」と「悲しさ100」の算数だったんだと思っている。だからオレたち家族は、悲しさに負けることなく今日まで前を向いて来れたんだと。


そんな不思議な出来事から2年経った今年のエイプリルフール。今日はこんな話をしようと思う。それは、オレたち家族の、もう一人の家族の話。そう。この物語には、実はもう一人登場人物がいたのだ。だから、これから話すことは、この物語のもうひとつの真実の物語ということになる。



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「準レギュラーからレギュラーになりましたあ!」


自分のことを準レギュラーだのレギュラーだのいうユニークな性格のそのひとから、家族のグループラインにこんなラインが届いたのは、2019年3月9日のことだった。これがなにを意味するのかの話をする前に、そのひとのことをちょっとだけ書いておこうと思う。



そのひとがオレたち家族の物語に登場したのは、今から4年ほど前になる。その4年間を父との思い出と合わせて簡単に振り返るとこうなる。



あれは父がまだ元気なとき。そのひとは、家族みんなでやったたこ焼きパーティーで父と一緒にたこ焼きを焼いてくれた。


あれは父がもう歩くことが精一杯のなかオレの舞台を観に来てくれたとき。そのひとは、父にステキな声のプレゼントをしてくれた。


あれは父が病床で寂しいクリスマスを迎えたとき。そのひとは、サンタのカッコでおちゃめにサプライズをしてくれた。


あれは父が家族と行った最期の旅行のとき。そのひとは、父へ贈った紙芝居を家族と一緒に観てくれて、その記録をカメラにおさめてくれた。


あれは父が亡くなった朝。そのひとは、電話口でひとり号泣してくれた。こどもみたいにワンワン泣きじゃくってくれた。


あれは葬儀のとき。そのひとは、国分家の一員としてそこにいてくれた。



気づくとこの4年間、そのひとはいつもオレたち家族のそばにいてくれた。"父の人生"という映画の登場人物として、オレたち家族とともに生きてくれた。

 

こうして振り返ると、不思議なもので父が生前に残したことばが溢れるように思い出される。


たこ焼きパーティーのときには笑顔で

「娘ができたみたいだな」と喜び


舞台を観たときには

「いーぞいーぞー!」

と声が出ないのに嬉しそうにはしゃぎ


クリスマスのときには、

「クリスマスってこんなにステキなんだな」

と大粒の涙を流し


紙芝居を観たときには、強い眼差しで

「ありがとう。ありがとう。」

と何度も何度もうなずいていた。


父はいつも、そのひとの"やさしい気持ち"を心の底から喜んでいた。そんなふうにして、そのひとはいつも父のことを大切に想ってくれていた。


振り返れば、そんな4年間だった。



そしてそのひとが、オレの目の前で


「準レギュラーから、レギュラーになりましたあ!」


と、家族のグループラインに嬉しそうにラインをしているのだ。


「なんだよ、準レギュラーからレギュラーって!」


思わず笑いながらそう言ったオレに、


「だって、嬉しいんだもん♬」


と、まるでハーゲンダッツのアイスクリームを買ってもらったこどものように、そのひとは笑顔でそう言った。そして続けて、今度はちょっと真面目な顔をしてこう言った。


「お父さんに報告に行きたいなあ」


もちろんその報告は、そのひとのことばを借りるなら準レギュラーからレギュラーになった報告に他ならなかった。


 


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3月29日。父の三回忌。


春なのに、とても寒い日だった。オレたちふたりは、父にその報告をするためにお墓の前にいた。そして、ゆっくりと目を閉じ、オレたちは父に挨拶をした。




父へ。


今日は、報告があって来ました。オレ、結婚したよ。3月9日 サンキューの日にね。いつもサンキューの気持ちを忘れないようにしてこうぜって。オレさ、アナタのような素晴らしい家族をこのひとと一緒に作っていくことにしたよ。その報告です。生きてたら、なんて言うのかね。驚くかきっと。お、おまえが、結婚!?て。なんか笑えるよね。オレはね、アナタがもしも生きていたら、きっとこう言うと思うよ。


家族というものの素晴らしさを教えてくれて、ありがとう!


って。ということで、これからもオレたち家族を、そして夫婦をよろしくお願いします。あ、そうだ。結婚式は7月にやるからさ。予定空けといてよ。


じゃあ、またね! 




目を開けると、隣にはそのひとがいた。


このひととオレは家族になるのか。なんか、いいもんだな。



これはエイプリルフールに贈る、オレたち家族のウソみたいなホントの話。



おしまい。


 



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《ご報告》


2019年3月9日サンキューの日。オレは、結婚をしました。これからも"家族"というものを大切にしていきたいと思っています。いつも、オレと一緒に時間をすごしてくれるすべての方に、この場を借りてお礼を言わせていただきます。


いつも本当にありがとうございます!


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