86歳で亡くなった私の父は、包丁を研ぐのが得意でした。切れ味は天下一品、熟したトマトもスッと気持ちよく切れました。
もちろん私の包丁もいつも父にお願いしていましたが、84歳の1月に研いでもらった包丁は… あれ?いつもと違う… その頃から徐々に認知機能の衰えが家族にもわかるようになり、「字が上手く書けないんだよ」と悲しそうに話し、同じことを何度も尋ねるようになりました。最期は私が娘だということもよくわからないようでした。
認知症のことを認知、と略す言い方を耳にすることが増えました。 本来、認知機能の「認知」は、物事を理解・認識する心の働きを指す言葉で、「認知症」という病気を指す略語ではないのです。認知は大事な機能、その機能が低下する病気が認知症です。
認知症を略されると認知症の人をないがしろにされているようで寂しく感じるのは私だけかな…
そんなことを思いながら、今日もお宅に伺います。
「認知症の人の世界にお邪魔しまーすっていう感じで、まずなじみになること」
新人の頃、先輩から言われた言葉を思い出します。
雨しずくの似合う紫陽花も迎えてくれました。
つっちー