週末仙台1日目―仙台デビュー | 桃象コラム

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音楽(特にピアノ)、演劇鑑賞、料理、旅行、ヨガ、スポーツ観戦(フィギュアスケート、サッカーなど)を心のオアシスに、翻訳を仕事にしていつの間にか四半世紀。まだまだ修行中。

もうまもなくロステレコム杯が始まり、今日は羽生さんもモスクワ入りして、早くも練習で4回転ルッツを跳んでいるというニュースが伝わったうえに、ガムとかアイスとか大騒ぎですが、今日の記事はまったく空気読まず、私の仙台旅行記です。9月最後(10月最初?)の週末に仙台に行って参りました。週末仙台ですよ。

 

目的は、「仙台クラシック・フェスティバル」、通称「せんくら」です。

 

せんくらとは、仙台市内の4会場で45分から1時間のコンサートが合計87本開かれるイベントです。オーケストラから室内楽、声楽、ピアノや弦楽器のソロ演奏などさまざま。演奏される曲も古楽もロマン派もジャズもタンゴもいろいろ。乳幼児OKの演奏会もあり、クラシック音楽を身近に、気軽に楽しめる、素敵なイベントです。3年ぐらい前にこの存在を知ってからとても行きたかったのですがなかなか都合が合わず、今年、ようやく万障繰り合わせて仙台行きが叶いました。

 

実は初めての仙台。東北にはほとんど行ったことがなくて、中学の修学旅行で岩手・青森に行った後は裏磐梯(スキー)と、会津若松に行ったことがあるだけ。つまり宮城県はすっ飛ばしていたわけです。東北新幹線に乗るのも今回が3回目。しかもそのうちの1回は、まだ上野発だった頃です(昭和)。だから「はやぶさ」やら「やまびこ」やらの区別がつきません(爆)

 

金曜日の11時半過ぎに東京駅を出ました。仙台についたのは午後1時半ごろ。空はピーカンの青空。仙台と言えば、やっぱり「青葉城恋歌」だなぁ、と思っていたら、新幹線ホームの発着の音楽がそれでした。「広瀬川~ 流れる岸辺~♪」 つい口ずさんでしまう。そうしたらそれからず~~~っと、青葉城恋歌が頭の中でリフレイン・・・ 

 

まずは駅前のLOFTにあるチケットぴあに寄って、この日の夜の演奏会のチケットを買いました。そうこうしていたらもうホテルにチェックインできる時間になったので、とりあえずホテルに直行して荷物をほどいてちょっとお着換え。

 

今回、何しろホテルをとるのに苦労したんです。金曜は取れても土曜日が取れない。いくらなんでもこんなに取れないのはおかしいと思っていたのですが、その理由は後になって分かりました。

 

それはさておいて、とりあえず外へ。地下鉄東西線で最初に向かった先は、東の終点、荒井駅。この駅舎に併設されている「せんだい3.11メモリアル交流館」に行きたかったのです。

 

この交流館のホームページによると、この施設は「東日本大震災を知り学ぶための場であるとともに、津波により大きな被害を受けた仙台市東部沿岸地域への玄関口でもあります。交流スペースや展示室、スタジオといった機能を通じて、みんなで、震災や地域の記憶を語り継いでいくための場所」として設立されたとのこと。ふとしたきっかけでこの施設のことを知って、まずはここへやってこようと思いました。

 

東北大学出身の同僚から、「タクシーをチャーターして沿岸地域を見てくるといいですよ」と言われていたのですが、なかなか度胸と予算と時間が合わず…つまりは、被災地をただ見に行くだけでよいのかという複雑な気持ちをぬぐい切れなかったので、まずはここに来てみました。

 

壁一面に、木で作られた地図。この白いところは津波をかぶったところ。備え付けのタブレット端末をかざすと震災前の画像が見られるなどの工夫もされています。それに加えて、スタッフの方からいろいろなお話を伺えました。2階には手書きの大きな地図がかけられており、そこに地元のみなさんが沿岸地区での思い出を少しずつ書き込んでいっているのですが、これにも生き生きとした生活が感じられてとてもよかった。

 

 

荒井駅から出ているバスに乗れば、荒浜小学校にも行けるのだということをここで初めて知りました。私は車を運転しないので、自力では行けないと思っていました。しかしこの日はもう時間が遅く、小学校の閉館時間が間近に迫っていたので諦めました。荒浜小学校は津波で2階まで水につかったものの、300人を超える人々が屋上に避難し、救助された場所です。その後、学校としては閉校になり、震災遺構として保存されています。交流館のスタッフの方が、「みんなの命を守ってくれてありがとう」という気持ちで、保存が決まりました、とおっしゃっていました。

 

1階と2階の展示をじっくり見学したあと、屋上に上がりました。もともとは農地だったところは津波で塩水につかったためにいったんは耕作ができなくなったものの、2-3年は綿花を植えるなどしてようやく土壌も回復したということです。工事のクレーンがたくさん見えますが、まだまだ工事中の施設がたくさんあります。

 

 

 

「仙台復興のあゆみ」という冊子をいただきました。これを読むと、まだまだ復興したとは言えないことがよく分かりました。私はここで仙台沿岸地域の被害のほんの少しを学んだにすぎませんが、それでもやはりここへきてよかったと思いました。

 

考えてみれば、8月終わりには神戸に行っていました。神戸も前回訪れたのは2000年で、まだ震災から5年しかたっておらず、更地になったままのところや修復しきれていない建物などがまだまだありました。それから17年経って、今はすっかりきれいな街になっています。東北と神戸は単純には比べられません。地震の大きさの違い、津波の有無、被災した面積の違い、インフラの整備度の違い、人口密度、県のGDP、などなど。東北のほうが、復興の条件ははるかに厳しいです。そういうことを忘れずにいようと思いました。

 

さて、そういう気持ちを抱きながら荒井駅を後にして、再び東西線へ。仙台の東西線は東京の南北線にちょっと似てるなぁ…などと思いながら仙台駅で南北線に乗り換え、泉中央駅へ。もう時間が遅く、日が暮れていたので、南北線が地上に出てから見えてくるはずの七北田公園や七北田川は全く見えず残念。

 

泉中央は思いのほか大きい駅で、一大ターミナルでした。そして地下通路が長い… 演奏会の会場まではほぼ地下道だけで行けるのですが、外を全く見ないのも寂しいので地上に出ました。それに、晩御飯をどうする問題もありまして。観劇や音楽鑑賞を目的とした旅のちょっと残念なところは、晩御飯のタイミングが難しいこと。この日はできれば開演前にご飯を食べたいと思いまして。外は意外と寒い、雨が降るかも、土地勘がないのでゆっくりご飯を食べていると遅れるリスクが、などいろいろあって、やや安直?に、駅に隣接する商業施設セルバテラスの中にある利久で牛タンとタンシチューのセットなどいただきまして。

 

 

牛タン焼きにタンシチュー、テールスープ、サラダ、牛タンのポン酢和え、麦ごはん、ビールです。ちょっと多すぎた。満腹でした。まあ新幹線の中でお弁当を食べて以来なにも食べていなかったからいいや。

 

そして肝心の、「せんくら」音楽三昧の1本目は、泉中央の仙台銀行ホール・イズミティ21で仙台フィルハーモニーによる演奏会です。

 

「あまりにロマンティックで情熱的・・・2大ソリストで聴く、3回泣ける世界の名曲」

指揮:現田茂夫

ピアノ:上原彩子

バイオリン:渡辺玲子

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

サラサーテ:カルメン幻想曲

サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン

 

上原彩子さんのピアノを聴くのは8年ぶり4度目。すごく骨太な演奏でした。ラフ2は昨年、プレトニョフで2回聴いてものすごく楽しかったのでもう当分聴かなくてもいいかなと思っていたのですが、やっぱりいつ誰で聴いてもいい曲だわ。ピアノに比べると、弦楽器はほとんど聴いていない。でもやっぱり生で聴くのはいい。サラサーテは魅力的です。

 

終演後は、再び地下道をてくてく歩いて泉中央へ。地下鉄で仙台駅に戻り、ホテルに帰りました。大浴場でゆっくりお風呂につかり、ふろ上がりにビール… こうして仙台1日目の夜は更けていきました。

 

さあ、「せんくら」は2日目から本番です。

 

桃象

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