歌舞伎役者は子どもの頃から「親の死に目に会えるような役者になるな」と言われて育つ。
だから座頭はどんなことがあっても、舞台に穴をあけない。
昔はやんちゃで生意気だった海老蔵。それが舞台ではいい味を出していて、彼の演じる色悪はぞくぞくするほどかっこよかった。
結婚してから、ワルの凄みは少し減ったけれど、より懐の深い優しい男になった。
最近、海老蔵が亡くなった団十郎に似てきたような気がする。真面目が服を着て歩いているような団十郎とやんちゃな海老蔵とは正反対に思えたのに。団十郎は若いころに父親を亡くして、意外に苦労人だった。それが彼を温かみのある役者にしたのかもしれない。海老蔵が愛する家族を守ろうとする姿は、温かく、大きく、立派だ。この経験を通じて、海老蔵という役者は一回りも二回りも大きくなったのかもしれない。ああ、それにしても成田屋ってどうして代々こんなに波乱万丈・・・
海老蔵くん、今はただ、あなたの心の平安を祈りたい。
これから先、きっと麻央ちゃんが見たかっただろう数々の舞台――来月のカンカンの宙乗り、海老蔵とカンカンの連獅子、団十郎襲名…
客席から応援しています。
桃象