財務省が消費税を国際比較するときのグラフが以下です。
上のように、消費税率だけを国際比較すると日本の税率8%より低いOECD加盟国は、アメリカとカナダだけになります。これをもって財務省は消費税率を上げる必要があるといつも言っているわけですが、本当でしょうか?
OECD.Statのサイトにあるデータベースから、国・地方の総税収に占める消費税収(付加価値税収)の割合がわかります。現時点で各国2015年のデータが最新ですが、日本は数字が入っていません。調べてみると総務省のサイトにある以下の「国税・地方税の税収内訳」(2015年度決算)から消費税収がわかりました。
以上のデータから主要国の消費税収の割合をグラフにしてみたものが以下です。
上のグラフにあるように、すでに日本の消費税収の割合22.6%は、福祉国家デンマークの20.3%より多いのです。日本の消費税収の割合より低いデンマークが以下の政策を実現しているのです。
▼駐日デンマーク大使館のツイートその1
▼駐日デンマーク大使館のツイートその2
▼駐日デンマーク大使館のツイートその3
▼駐日デンマーク大使館のツイートその4
日本の消費税率をもし8%から10%に引き上げてしまうと、フランスとイギリスも抜き、福祉国家スウェーデンとほぼ同じレベルの消費税収になってしまいます。北欧の福祉国家と肩を並べる消費税収がすでにあるのにどうして日本においては生活破壊が先行するのかについては、先のエントリー「生活保障で税金を「払えるようにする」福祉国家スウェーデン、消費税増税で生活を破壊する日本」や、「日本の税金は富裕層と大企業ほど低負担の逆進税で富の再分配が極めて弱いことが最大の問題」などで指摘していますので参考ください。
それから、日本の消費税の逆進性が生活破壊税となって強く現れる直接の理由としては、下記にある他国のように、手厚い教育・社会保障と同時に食料品など生活必需品にはあまり消費税をかけない他国との大きな違いがあると思います。
(※以下、「世界の消費税 インデックス」のサイトより転載)
◆ドイツの税率は一律ではなく、食料品などの生活必需品、本、家畜飼料、50キロ以内の旅客近距離輸送などは7%の軽減税率です。1968年10%でスタートし、税率は19%まで引き上げられました。
◆福祉国家スウェーデンの標準消費税は25%、食料品の消費税は12%。重税ですが、福祉や教育への還元が厚いので、国民は概ね納得しているとのことです。18歳まで医療費が無料。小学校から大学院まで教育費は国が負担。大学の奨学金は月約10万円、内3割は返済義務がありません
◆イギリスの消費税の標準税率は17.5%。1973年10%からスタートし、2011年からは20%になります。増税にも大きな反発はないようです。ただし、食料品、居住用建物、家庭用上下水道、交通費、新聞、書籍、新聞などは0%です。医療や社会福祉、教育、郵便、映画演劇などは非課税になっています。低所得者ほど重い負担を課せられるという消費税の特徴(逆進性)を緩和するためのはっきりした措置ですね。
◆フランスの消費税は付加価値税(TVA)といって最高19.6%の税率です。生活必需品や住宅関係、出版、交通、鑑賞などは5.5%に下げられます。新聞雑誌、映画演劇は2.1%。医療、健康保険適用の医薬品も2.1%。フランスの社会保障の良いところは、学費が幼稚園から大学までほぼ無料であること、雇用に対する支援制度が整っていること、休暇・出産・子育てに対する支援制度が整っていることなどが挙げられます。(「世界の消費税 インデックス」より転載)
他国のように生活必需品などを考慮しない日本の消費税は以下(※日本経済新聞のサイトに掲載されているグラフです)にあるように低所得層ほど負担が重いという最悪の逆進税となって直接生活破壊を進行させるのです。
上の日本経済新聞のグラフにあるように、現状の消費税率8%の負担割合は、年収200万年未満7.2%で年収1,500万円以上は1.6%と4.5倍も低所得層の方が負担が重いのです。この最悪の逆進税の消費税を増税して安倍首相は教育や社会保障を充実するとしていますが、そもそも高所得層より低所得層から4.5倍も収奪する消費税の増税を先行させてしまうと富の再分配が逆方向になり生活破壊が進むだけです。
(井上伸)