狼と豚と人間
  監督 : 深作欣二

  製作 : 東映
  作年 : 1964年
  出演 : 高倉 健 / 北大路欣也 / 三国連太郎 / 中原早苗 / 江原真二郎


 

高度成長という高波に吹き寄せられた敗戦後の残滓といったバラックが川沿いに立ち並んでいます。そんな時代の底に這いつくばるような場所で生まれた三兄弟が三国連太郎、高倉健、北大路欣也で上から順に母親のなけなしの金を懐に家を飛び出して一番の貧乏くじはまさにどん底の貧乏と母親を押しつけられた北大路で... 三国はいまや一帯を仕切る組織のそれなりの顔役になり高倉もまた愚連隊として暴れ廻って押し込めるだけの札で背広の内側を膨らませる面白おかしい日々、しかしやがて組織との軋轢は避けようもなくコテンパンにやられていまや振り出しに戻って服役中。その高倉が出所してきてかつての仲間に弟の北大路まで引き込み組織から麻薬取り引きに絡む現ナマを強奪しようという計画です。性懲りない男ですがそれだけではなく彼には彼の、見霽かす海の彼方にまだ自分が一度も味わったことのない自由というものを夢見ているのです。愛人の中原早苗とそんな夢の天地で違う人生を始めたい、そのために喉から手が出るほど欲しい金です。(そして中原は爪先だった高倉の危うさごと愛していて言わば事の成り行きを自分の命と一緒に掌で転がしているような澄んだ美貌です。)しかるに高倉が仲間を出し抜こうと腹に隠しごとがあるように仲間もまた目も眩む大枚と当然同じだけの危険にどんな吊り合いを抱いているか知れたものではありません。そうです、まったく典型的な東映のギャング映画の展開です。駅の雑踏のなか白昼堂々麻薬取り引きが行われています。そこにやらせの大喧嘩で衆人を(まるでひとつの大きな目のように)渦を為して釘付けにしながらこの目に射抜かれて取り引きの男たちが硬直するやにわにブツも現ナマも頂きます。ちりぢりに逃げてやがて落ち合うアジトに我先に辿り着く高倉の目の前にはあるはずのふたつのバッグがありません...  まさに典型的な東映ギャング映画。しかし本編が傑出しているのはバッグを運ぶ北大路がその中身を(その桁違いの額と当然組織からの徹底的な報復を考えてまったく自分たちが騙されていたこと)を知ってひとりバッグを隠す彼の動機がこのお宝を高倉たちからひとり占めしようということではないということなのです。彼自身それを巧く説明はできません、ただ騙されていたことを騙されたままにしておくその惨めさへの復讐なのです。ですから高倉たちの拷問にも屈しません。とっくに高飛びしている時間なのにいまだブツの隠し場所はわからず組織の包囲網はその間にもじりじりと狭まっていって... それにしても題名の、<狼と豚と人間>、金に喰らいつく高倉が狼、大組織にしがみついて生きている三国が豚、そして貧しいなかでも自分たちのいまを手放さない北大路が人間に見えますが、そうではありません。弟である北大路を殴り続ける高倉を見て中原は言います、高倉は自分のなかにある北大路を殴り続けている、そして殴られる北大路は自分のなかの高倉を殴られているんだと。狼も豚も人間もひとりの人間のなかにあるということです。それはぐるぐると廻っています、しかしいよいよ追い詰められたときにひとはそのなかのひとつを自ら選んで生き抜かねばならないということです。そんな(鮮やかで物悲しい)結末へ向けて三国連太郎が、金とブツを弟たちから奪い返すことを組織から最後通牒に突きつけられてアジトへとやって来ます。  

 

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