父の作品、「クルマユリ」です。646で浜木綿(はまゆう)の絵の色紙を紹介しました。この短冊もカルチャーセンターの墨絵教室の作品だったのかも知れません。父は植物が好きでしたので、作品の題材のほとんどは植物でした。クルマユリも父が大好きな植物でした。

「クルマユリ」について、広辞苑第五版に次のようにあります。
「ユリの一種。日本の中北部の高山草地に自生。高さ約20~50センチメートル、中ほどに十余枚の葉を輪生。花は頂生し、橙赤色。花被片は著しく反転する。」
 また、ブログ281に「踊り子のように可憐な花 クルマユリ」として紹介しています。夏休み、毎年子どもたちが一週間ほど訪れる新潟県村上市の柏尾というところで、クルマユリが花を咲かせているところに出逢いました。ブログ281に書いたとおり、柏尾は海岸のすぐ近くに山が迫っています。民家のすぐ後ろに狭い田や畑があり、杉林が続いて山となります。その薄暗い杉林で数本のクルマユリが咲いていました。
 その中の一本を我が家に植えました。庭の樹下で直射日光が余り当たらないところに植えました。それがよかったのか、毎年見事な花を咲かせ、次の年には2本に増えて父を喜ばせていました。短冊のクルマユリはそれを題材にしたものでしょう。

 クルマユリはその名の通り、茎の途中に車輪のような十枚ほどの葉を開きます。この特徴がなければオニユリと同じようになってしまいます。父は茎を斜めに描いて車輪のような葉を描き、茎の先は単葉で表し、その先の花のみを描くという描き方にしました。空白の部分があり、面白い描き方です。
 そのクルマユリも、少しづつ本数を減らし、いつのころからか姿を消しました。今残っているクルマユリはこの短冊だけです。