大津絵の「鬼の念仏」です。唄は先の「大津絵の由来」にも登場しました「大津絵の筆の始めは何仏」です。この唄は松尾芭蕉の俳句です。
この俳句の季語は「筆の始め」です。
「筆の始め」とは、
「書初・筆初・試筆・吉書 新年に初めて書または絵を揮毫するために筆を取ること、またその描いたものをもいう。大体二日にめでたいことばを選んで書き初めにすることが多く、室内に張って祝ったりする。学校教育の普及で、毛筆を使う機会の少ない現代でも広く行われる。」
と角川学芸出版編「俳句歳時記 新年」にあり、作品例の2番目に「大津絵の筆の始めは何仏 芭蕉」がありました。
 

「禁厭の符」は「小児の夜泣きを止め悪魔を払う」です。この絵を子どもの土産にすればかえって夜泣きをするようですが。「大津絵の由来」には「大津ぶし(元唄)」というものもあるそうです。その中で「鬼の念仏」は、「荒気の鬼もほっきして 鉦しもく」でした。恐ろしい顔の鬼が、首からつるした「鉦(かね)」を右手に持った「しもく(かねたたき)」で必死に叩きながら念仏を唱えているのです。無邪気な鬼の姿です。

 大津絵を楽しむ人々の姿が見えるようです。これからも大切にしていきたい文化財です。