朝の記事の続きです。具体的に検討してみましょう。

※新車取引において,ローン取引をする場合に,所有権留保を設定したうえ,購入者の債務完済までは信販会社に所有権を留保する一方,所有者登録は販売業者に留保される

 →登記登録が,未了の場合に再生手続が開始された場合,対抗問題が生じるのか。ここで論点が生じてきます。

 

当然ですが,第三者性の議論にたどり着くまでには,以下の論点にぶつかりますね。

Ⅰ 所有権留保は別除権か

Ⅱ 双方未履行双務契約か→登録義務と立替金債務 肯定

Ⅲ 代金立替払により,弁済による代位が生じたか → 生じていれば対抗問題に疑義は生じない 高裁は弁済による代位で構成。しかし最高裁は否定

Ⅳ 当事者の合理的意思解釈 → 残代金債権ではなく立替金債権が被担保債権とするのが合理的意思

Ⅵ 再生債務者の第三者性が問題となる。

★ 本試験問題問題で検討してみます。

所有権留保の法的性質(物権変動の有無を含む。)や留保所有権の被担保債権をどのよう

 に解するかによって対抗要件の要否が異なりうることを指摘した上で,判例を踏まえ,A社,

C社及びZ社の三社間契約の合理的解釈を行う必要があり,これが中心となる。

 

=2つの解釈 

①弁済による代位構成 平成22年判例の原審

②合理的意思解釈構成 判例の考え方

① 1つめの構成

被担保債権を弁済による代位と理解すると,そのまま債権が代位されるだけ

    ↓ そうだとすれば

対抗問題にはなりえない

②2つめの構成

合理的意思解釈として,弁済による代位の構成は不当。なぜなら,弁済分を除外した部分だ

けが被担保債権になってしまうことになる。

         ↓そうだとすれば,

 新たな債権関係が発生し,これに担保を設定したものとみるべきである

 

※ XAYの三者が,売主A,買主Yとして自動車の売却をした。信販会社Xが立て替え払い

 により,Yに対対して所有権留保を設定したところ,YはAに対して自動車を引き渡し,X

 はYの代わりに代金債務を立て替え払いしたところ,Yにつき再生手続が開始された。Xが

別除権に基づく本件自動車の引き渡しを求めた。

     ↓

 このような取引では,Xに登記登録が具備されていないのが通常

 

★ 当事者の合理的意思の判断が優先

 ∵ 三者契約の内容次第によって構成を変化させる必要がある

    ↓

 まず,本件三者契約の解釈として,留保所有権が代位によって移転したことを確認したものではなく,立替金債権を担保する目的で,XがAから本件自動車の所有権の移転を受け,留保したすることを合意した,というのが合理的意思を認定

    ↓とすれば

 所有権留保も,実質は担保目的による設定であるから,取戻ではなく別除権

    ↓そのうえで

★ 再生債務者に第三者性が肯定されれば,登記登録を具備していないXが,別除権を行使することができない結論となる。

 ※ 百選58番事件は,双方未履行双務契約性の判断をしていないが,本試験では,必ず認定する必要がある

<参考>

 引渡し後,買主につき破産手続が開始された場合,53条の適用があるか。

 たしかに,売主は目的物の所有権移転義務を,買主は残代金支払義務を履行しておらず,双

方未履行双務に該当するとも思われる。

 しかし,代金を完済した時点で,所有権移転の効果は行為を要することなく生じることにな

る以上,売主が,目的物引渡し義務を完了した時点で契約に基づく義務をすべて履行している

と評価すべきである。

 したがって,双方未履行双務契約とは評価できないので,53条の適用がない。

※ もっとも,登録移転につき,行為を要する場合には別である

※ (私的実行と解されるので)清算金の支払いまたは差額請求の方法による実行方法となる

 

田澤康二

再生債務者の第三者性のかんがえ方

テーマ:

 大阪高判平成20年10月31日をベースにかんがえていくと,最後に示す論証のようになるでしょう。

 破産との対比でかんがえていくと,包括的差押さえの議論は残念ながら使えません。しかし,いったん剥奪された管理処分権能が,再度付与される,こう理解するとどうでしょう。

 これを念頭に,民事再生法38条2項をみてみると,どうでしょうか。


※  再生債務者は開始決定によりいったんは,財産管理処分権を剥奪される。しかし,そのうえであたらためて再生債務者に財産管理権が付与され,再生債務者は総債権者の利益代表として行使される。これを現すのが38条2項。

<考え方>
 ※ XがYに対し土地を売却したが,移転登記を行う前に再生手続が開始された場合に,Yが所有権移転登記請求をしたところ,Xは,再生手続開始を理由に請求を拒絶した。
           ↓
   この場合は再生手続が問題となっているが,破産手続であれば破産管財人選任による差押えの法的性格の問題となる。
 ・ 破産管財人に財産の管理処分権が帰属するのとは異なり,債務者に管理処分権が残存 
  (破産法78条1項・民事再生38条1項)。
  = 第三者的地位がない方向
 ・ 公平誠実義務(民事再生38条2項)→再生債権者の利益代表=差押え債権者の地位に類似
 ・ 民事再生45条1項との均衡 ∵民再45条1項は手続開始決定後に登記を得た買主の登記の効力を否定している
      ↓
   法全体の趣旨としては,手続開始時に登記を得ていない買主の取戻権を承認していいない
  = 以上第三者的地位がある方向

 再生手続が開始された場合,再生債務者は「第三者」に該当するか。再生債務者の民事再生法上の地位に関連して問題となる。
 再生手続が開始されても,再生債務者はその財産を管理処分する権限を喪失しない(民事再生法38条1項)が,債権者に対しては公平かつ誠実に,その財産を管理処分する権利を行使して,再生手続きを追行する義務を負うことになる。また,法は,監督委員に対して否認に関する権限の付与を定めるとともに(民事再生法56条),権利変動の対抗要件の否認(129条),執行行為の否認(民事再生法130条)も定めている。さらみ民事再生法45条1項が不動産に関し再生手続き開始前に生じた登記原因に基づき再生手続開始後にされた登記は,この限りでないと定め,これにより再生債務者が任意に登記をした場合の登記の効力については定める一方,登記権利者からの登記手続請求の可否については何らの規定を置いていないことからも,以上のとおり,再生債務者が第三者に当たることから再生債務者の任意の協力なしに,登記権利者が再生債務者に対して登記手続き請求をすることができないのを当然の前提としている。
 以上より,再生債務者は「第三者」に該当する。

田澤康二

死者の占有 

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 補足です。「強盗・窃取」とは、占有移転=「占有侵害」+「占有取得」を意味しますね。

 事例では、占有侵害(ナイフで刺した瞬間)の時点で、被害者は生きており、被害者の生前の占有を侵害した評価できると。

 その後、被害者の死亡によってその占有が失われ、財物取得行為によって行為者が占有を取得したとしても、これらの行為が一体となって1個の強盗殺人行為と評価できれば、強盗殺人の既遂になるわけです。

 大事なのは、どうして一体と見る必要があったのかです。どうしてこの論証が出てくるのかです。これが原理原則に対する深い深い理解です。


 ※実は、財物取得行為の着手時において被害者の占有侵害が必要であるとの前提から、たとえば、死亡によって、占有が移転したと構成する考えもあるのです。

 当然、この点に関して強盗殺人としない見解はみあたりません。

 

田澤康二
 

死者の占有

テーマ:

占有の構成要素を思い出してください。2要素ありました。

いずれも、満たしませんね。ここから思考をスタートさせます。

 

※1 甲は、乙を殺害して財物を奪取する意思(強盗の意思)をもって乙を殺害した。殺害から5分後、乙の身につけていた財物を奪取した。強盗殺人罪が成立するか。
※2 被害者たる社長Aの個人経営的色彩の強い会社に勤務するXは、社長を殺してその財物を強取する意思で、ある日会社の事務室においてAを殺害し、その場でAが身につけていた財布を奪取し、その後、Aは海外に出かけて不在であると称して、会社の経営にあたっていたが、殺害の半年後、会社事務室で事務員Bが占有・保管する株券を取得した(東京高判昭和59年9月13日)。


※1の事例では、財物奪取の時点で、被害者が死亡=占有の意思も事実も当然ありません。もちろん、占有の意思があったとしても、それは死亡以前の話です。これを前提に行為を観察していると、占有の意思と事実によって構成される占有を侵害したと構成するには、やはり生前まで時間をさかのぼらせなければならない。

 死亡後に占有取得をしているんですからね。ということは、当該財物奪取は占有離脱物ではないかが問題となるわけです。
 殺害行為自体が、財物に対する(被害者の生前有していた)「占有を侵害する」行為と評価できると考える受験生のみなさんが多いと思いますが、これは、殺人行為の着手があれば、占有侵害行為も開始されたとかんがえることができましょう。

 その後、被害者の死亡によってその占有が失われ、財物奪取行為によって行為者が「占有を取得」したとかんがえます。

 これをもって、これらの行為が、全体的に観察すれば、被害者が生前有していた占有を殺害・盗取という一連の行為によって「占有侵害」して、自己の占有へ「占有取得」しているものとはじめて評価できるのですから、強盗殺人罪が成立する。
 

☆これら一連の流れを、答案に起こせといいたいのではないのです。“財物奪取の暴行・脅迫の究極の手段としてAを殺害しているから強盗殺人罪が成立する。もっとも、Xは殺意を有しているが、240条に殺意ある場合が含まれるか、が問題となる”などとよくある答案のなかでも、キラリと光る要素を。

 占有の構成要素の判断を規範定立でも、あてはめでも、事実の評価でも、伝わるようにかけるようになってもらいたい。

 

※ 2では、財布については、強盗殺人と株券については、事務員Bに対する窃盗罪が成立しますね(強盗殺人にはならない)。
 

田澤康二

公判前整理手続のポイント

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 用事があって東京地裁に行きました。

 久しぶりに会う方で、修習生の方に何名かお会いして、立ち話にもなりました。二回試験に血わき肉踊っているそうでした(それはないか)。

 散々みたであろう、公判前整理についてです。

 

視点は、

【争点中心の充実した審理を集中的・継続的に行うこと】

これを目的に制度が設計されています。

 

目的
集中審理

 

①審理内容の集中(争点への集中)
②期日の集中(継続的開廷)
 
意義
公判前に(その名前のとおり)
①事件の争点を明確にする
②取調べる証拠を決定する
③審理計画を策定する。
そのための手続なのです。まさにその名のとおり、公判前整理手続です。

特徴
①受訴裁判所が主催者となります。
②公判で予定の主張を明らかにしていきます。
③証拠の取調べ請求をする。   
④関連する一定の証拠の開示を義務付けまで課しています。
 
※公判前整理手続に付される事件
  基本的には裁量(316条の16)。ただし、裁判員制度は必要的(裁判員法49条)。
 
公判前整理手続で裁判所がなしうること(316条の5)
   ①争点整理(1~3号)
   ②証拠の整理等(4~9号、11号)
   ③証拠開示の裁定(10号)
   ④審理計画の策定(12号)
 
1 証拠開示の種類
  検察官の証拠開示は、
① 検察が証拠調べを請求した証拠(検察官請求証拠)を必要的に開示する「請求証拠開示」
  :316条の14で開示しなければならない
② 検察官請求証拠の証明力を争ううえで必要な一定類型の証拠を請求に基づいて開示する「類型証拠開示」
  :316条の15
③ 被告人側の予定する主張に関連する証拠を請求に基づいて開示する「争点(主張)関連証拠開示」
   :316条の20
 
「請求証拠開示」(316条の14)
証明予定事実を記載した書面の提出と送付
争点・証拠整理の出発点として、検察官は公判において証明すべき証明予定事実を記載した証明予定事実記載書を裁判所に提出し、被告人または弁護人に送付する(316条の13第1項)。このとき、裁判所に予断を生じさせる恐れのある事項を記載してはならない(同条2項)。
 
証拠取調の請求・被告人への開示
 検察官は、証明予定事実を証明するための証拠の取調べを請求し(316条の13第2項)、請求証拠につい
ては、速やかに被告人側にこれを開示しなければならない(316条の14)。
 
請求証拠開示
①証拠調請求した証拠書類・証拠物の閲覧、②証人などの氏名・住居を知る機会の付与、③証人等の供述録取書等(供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの)のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧がある。
※ 実は、①・②は前から、③だけ新設されました。証人が供述することが予想される内容を含む供述録取書の開示は、反対尋問の準備に資するところが大きいのです。

 証明予定
事実記載書の送付(316条の13第1項)を受け、請求証拠の開示(316条の14)を受けたときは、被告人側は、検察官請求証拠について、①326条の同意をするか、または②取調べ請求に異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない(316条の16第1項)。
次回類型証拠開示からです。
田澤康二

準現行犯逮捕の考え方

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 本当によく質問を受けます。不思議です。

 

 準現行犯逮捕で必要とされる時間的・場所的接着性が,どの程度で認められるのかというのも具体的数字をあげて線引きするのは無理です。だって本質に立ち返ってください。明白性があるか。これ、数字のもんだいですかね。

 時間が経過した、なら、場所は離れることができる。もちろん一般的には犯人の明白性は薄れるとしても!一応の目安として3,4時間とか,数百メートルというような数字をあげる見解もあるのは、あります。

 やっていることって、令状主義の例外として認められている趣旨「犯罪と犯人であることが逮捕者に明白で誤認の可能性が低い」と評価できるかどうかに尽きています。当然、数字は相対的なものに過ぎないと言うしかないと思います。

 時間が離れても、場所は離れる可能性はあるが、その場にとどまることだってできますよね?

 しかも、被疑事実によって違いますよね?

 

 和光大学事件を参考にしてみると、現場から直線で4キロ,時間にして1時間40分経過後でした。

 しかし、よくよく事実関係、被疑事実をみてください。警察官が事前に内ゲバ事件発生(凶器準備集合・傷害事件)の無線情報を得て警戒していた。雨なのに傘も差していない、服も濡れ靴も泥にまみれている挙動不審者を見つけて声をかけ停止を求めた。

 いきなり逃げた(4号)籠手をはめているという異常な風体(2号)であった、顔面に新しい傷跡があって血の混じった唾をはいていた(3号)等の状況でした。

 

 これは結局、時間や場所がある程度離れていても,犯人の特徴が特異な場合等であって、各号事由がいくつも充たされていることとあいまってはじめて、「犯罪と犯人の明白性が逮捕者に認められる状況がありm誤認逮捕の可能性が低い」と判断できる場合には、準現行犯として適法となる場合があると判断した、軽く限界事例です。

だから著名であって、一応の基準たりえるゆえんでしょう。

田澤康二

時間的場所的接着性ってなんだ

テーマ:

 現行犯逮捕を題材にかんがえてみたいのですが、時間的場所的接着性って、なんでも結構、たとえば事後強盗。ここでも使います。簡単に時間が離れていれば、場所は離れることができますね。しかし逆はどうでしょうか?

 

時間的場所的接着性

 現場の状況、犯人の挙動、犯行発覚の経緯、犯人特定の程度、被害者目撃者の追跡対応、犯行の態様から考慮するとされます。しかし、各局面で忘れてほしくないこと、時間的場所的接着性は、あくまで考慮要素なのです。

 たとえば、本質に立ち返ると、犯行現場から継続して追跡している場合には、時間的・場所的接着性ががなり離れていえても明白性を肯定することができる場合だってあるでしょう(これを追跡の法理(拡張法理)といいます)。

 

※ なんども当ブログで扱っていますが、伝聞によるだけだから逮捕者にとっての明白性が認められにくいですよね。当然ですが、だからといって、常に伝聞だから、明白性が否定されるということではない。警察官が現認している(準現行犯)のに、あえて慎重を期すために被害者に聞いているにすぎない場合もありますよね。

 

(蛇足ですが)

 準現行犯逮捕も「狭義」の現行犯逮捕と同様に逮捕者にとって犯罪と犯人の明白性が認められなければならないので、時間的・場所的接着性が必要となるのは同じです。

 ただし、しかし、

 「罪を行い終わってから間がない」(準現行犯)というのは「現に罪を行い終わった」(現行犯)という場合に比較すると、時間的・場所的接着性にある程度の幅がある。

 そのため、最低限の、明白性を客観的に担保するため各212②Ⅲ号に規定された事由が要求されている。ならば当然、最低限、各号を満たしていないなら不適法にします、これが正しい理解であるからこそ、各号該当性から判断しないと、適切な判断はできませんね。

 

田澤康二

米子銀行事件 再考

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アタッシュケースをドライバーでこじ開けて中を見た行為について

 これって実は、どう見ても(昨日まで論じてきた、強制の判断=行為の客観的性質からして、「捜索行為(及びそれに伴う必要な処分)」です。

 それでもなお、本件の事情、すなわち、それに先行し時間的に接着する適法な所持品検査でボーリングバッグから大量の札束が発見されていること、バッグ携帯者の不審な言動があったこと、それまでの事前情報からしても銀行強盗犯の嫌疑が極めて濃厚であったこと、からすると、

 こじ開け前の時点で「緊急逮捕できる状態」になっているなんてことを言っています。

 よーくみると、「緊急逮捕手続に先行して逮捕の現場で時間的に接着してなされた捜索手続と同一視しうるものである」との判断が示されています。実の実は、「S36.6.7大法廷判決の趣旨に徴し明らか」ともしているのです。

 もちろん、緊急逮捕の要件があるとして逮捕に赴いたところ被疑者が不在であるため,先行して逮捕の現場における捜索をしている最中に被疑者が帰宅したので逮捕したというものであつて,まさに時間的には(捜索が)先行していてもその時点で逮捕の要件が満たされていて接着していれば逮捕の現場での捜索差押として適法となるとする、あの、評判のよろしくない最高裁判例です。

 

 実は、この最判、当然生きている。ドライバーによるこじ開けも,逮捕との順序の先後は逆になってはいるものの接着した時点でかつ緊急逮捕の要件を満たしている状況下で捜索がなされている限りにおいては、逮捕の現場における捜索(220①Ⅱ)として適法という結論がだせます。

 

※ 米子銀行事件は実は、その後,実際に緊急逮捕して逮捕現場の差押えとして証拠品を押収している事案でした。

 

さて、これを応用させていきましょう。

 

田澤康二

続 任意同行と実質的逮捕

テーマ:

ここで、行為の客観的性質は強制と同視できるか、

令状が必要とされるべき処分なのかどうか。これをみていきます。

 

やはり定義からです。

 逮捕とは、被疑者の意思に反してその身体を強制的に拘束することをいいました。ならば。

 

 被疑者の自由意思に基づいていれば任意同行として許容されると考えることができそうです。

そうであるならば、任意同行として許容されるためには、被疑者の承諾に加えて、被疑者の自由な意思決定を抑圧しないような客観的状況が必要となる、と。ここまでくれば、あとは、一個一個の事案がものをいいますね。

 

具体的には、①同行を求めた時刻・場所、②同行の方法・態様、③被疑者の属性(年齢・性別・職業等)、④同行の必要性、⑤逮捕状準備の有無、⑥同行後の取調時間・場所・方法、監視状況、⑦被疑者の対応状況、⑧捜査官の主観的意図な等の事情を総合考慮して、客観的に判断すると。

※ 実質逮捕と認められれば、その身体的拘束は違法であり、ま

 た、逮捕の時間的限界である72時間は、実質的逮捕と認められ

 る時点から起算されますよね。当然ですが・・

 

田澤康二

任意同行と実質的逮捕

テーマ:

ご質問をいただきました。

 

 現行法は、実は、明文で職務質問を目的とする行政警察活動としての任意同行を認めているのでした(警職法2条2項)。

 しかし、当然ですが、これは行政警察活動です。行政法の教科書をごらんください。警察官職務執行法の解釈が扱われているし、そもそも警察は行政機関ですね。

 たとえば、被疑者の取調べを目的とする司法警察活動としての任意同行については規定がないことを確認すべきです。

 

 さて、本題。任意同行は、被疑者の承諾を得る点で、被疑者の名誉保護に資する捜査方法(=司法警察活動)です。これを強制処分(逮捕=逮捕状が必要ですし、厳格な規律も及んでしまう)としてしまうのでは、かえって被疑者に不利益となってしまう局面もありえますね。

 捜査のための任意同行も、任意捜査(197条1項または198条1項)の一方法として許容される局面がありえます。捜査官がXを任意同行することも形式的には許されると解することができましょう。

 

 今日確認したいのは、以下なのです。

※ 任意同行とは、警察官が挙動不審者または被疑者に対して警察署などへの任意の同行を求めて同行することを言います。行政警察活動としての任意同行は、職務質問の対象となる者(挙動不審者)について、職務質問をするために行う任意同行であり、警職法2条2項に根拠がある。

 しかし、司法警察活動としての任意同行は、被疑者に対する捜査方法として、被疑者取調べのために行う任意同行であるが、刑訴に明文がない。

 司法警察活動としての任意同行の明文はないものの、承諾がある限り、任意捜査(1971項または1981項)の一環として許されたとしても。

 任意同行の形式が採られていたとしても、その際に、逮捕と同視しうる程度の強制力が加えられていたと認められるときは、実質的に逮捕行為があったといえ、令状なき逮捕=逮捕状が必要な性質の処分だったものとして違法となる場合がありうる。

 

※ 強制処分該当性はどう判断しましたか?行為の客観的性質からですよね。行為の客観的性質が、強制と同視=形式上任意同行だったとしても実質的に、行為の性質はどうなのか。これを判断する基準が必要になるでしょう。

 

続く

田澤康二