来年4月施行の同一賃金同一労働(不合理な待遇の格差の是正)の本丸は、派遣法改正だといわれます。

もちろん、大企業ではパートにも有期にも来年4月からいっせいに新たなルールが適用されます。

全雇用者のわずか3%たらずの派遣労働者に比べれば、パートや有期の同一同一の方が相対的により大きなインパクトがあるかもしれません。

しかし、現実は派遣法の方がはるかに大きな影響があり、法改正が現場に与える影響が大きいのです。

秋にかけて全国の労働局で派遣法改正の説明会が開催されていますが、どの地域でもほとんど満席の賑わいだといいます。

それは、改正に向けた情報が出るのが遅かったということもありますが、要は事業者の“本気度”が違うということです。

来年4月の派遣法改正は、中長期的には派遣元の生き残りがかかるくらいのインパクトがあります。


特定事業の廃止によって多数の事業者が姿を消したように、間違いなく来年から数年間で業界地図がかなり変わっていくことになるでしょう。

一方で、パートや有期の同一同一は、あくまで最終的には司法判断の世界です。

入口から改正法の対策を講じなければ来春以降の事業の継続が不可能な派遣法の世界とは、まったく景色が違います。

派遣元はもちろん派遣先も、心して準備をしていく必要がありますねあせる





https://www.mhlw.go.jp/content/000538206.pdf



 

そんな中、ようやく厚生労働省から「労使協定方式に関するQ&A」が公開されました。


7月8日に職業安定局長通達、8月1日に経団連の質疑応答集、そして8月19日にQ&Aが出たことで、派遣法改正の情報がひと通り出そろったことになります。

これで、「まだ来年のこと」という言い訳?はいっさい通用しなくなりましたね(笑)。

局長通達は事実上の最低賃金の「一般賃金」の内容、経団連のセミナー後の質疑応答への厚労省の回答ですので、あえて現段階でもっとも注視すべきものといえばQ&Aですね。

内容的には、「1.労使協定の締結」「2.基本給・賞与・手当等」「3.通勤手当」「4.退職金」「5.独自統計」となっていますが、まず重要となるのは「1.労使協定の締結」です。

 

最低限、押さえなければならないQ&Aを挙げると、以下の点ですビックリマーク




問1-3 数か所の事業所を労使協定の一つの締結単位とすることは可能か。(例:関東地方に所在する 事業所で労使協定を締結)

答 差し支えない。 ただし、待遇を引き下げることなどを目的として、数か所の事業所を一つの締結単位とすることは、 労使協定方式の趣旨に反するものであり、適当ではなく、認められないことに留意すること。 また、この場合、比較対象となる一般賃金を算定する際の地域指数については、協定対象派遣労働者 の派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む都道府県又は公共職業安定所管轄地域の指数 を選択することに留意すること。 さらに、数か所の事業所を労使協定の一つの締結単位とする場合、派遣労働者が多数となり、派遣先 の業種、派遣先地域も多岐にわたって賃金体系等が複雑となり、複数の事業所の派遣労働者全体の利益 を適切に代表する過半数代表者を選出することが困難となる可能性があることから、数か所の事業所 を労使協定の締結単位とする場合には、過半数代表者が民主的手続に基づいて選出されるよう、特に留 意する必要がある。仮に過半数代表者を適切に選出していないと認められた場合には労使協定方式が 適用されず、法第 30 条の3の規定に基づき、派遣先に雇用される通常の労働者との均等・均衡待遇を 確保しなければならないことに留意すること。

 


問1-4 派遣労働者は各々異なる派遣先に派遣されており、労使協定を締結する過半数代表者の選出 が困難であるが、どのように選出すればよいか。

 

答 例えば、派遣労働者の賃金明細を交付する際や派遣元事業主が派遣先を巡回する際に、労使協定の 意義や趣旨を改めて周知するとともに、立候補の呼びかけや投票用紙の配付をしたり、社内のイントラ ネットやメールにより立候補の呼びかけや投票を行わせることが考えられる。 なお、派遣元事業主は、過半数代表者が労使協定の事務を円滑に遂行することができるよう必要な 2 配慮を行わなければならない(労働者派遣法施行規則第 25 条の6第3項)。この「必要な配慮」には、 例えば、過半数代表者が労働者の意見集約等を行うに当たって必要となる事務機器(イントラネットや 社内メールを含む。)や事務スペースの提供を行うことが含まれるものである。 また、労働基準法 36 条に基づく時間外・休日労働に関する協定の締結や、同法 89 条に基づく就業 規則の作成又は変更を行う場合にも、(過半数労働組合が存在しない場合は)当然に過半数代表者の選出が必要である。

 

 

問1-6 労使協定には、派遣労働者の賃金の額のほか、その比較対象となる一般賃金の額を記載する必要はあるのか。

 

答 貴見のとおり。 法第 30 条の4第1項第2号イにより、一般賃金の額と同等以上である協定対象派遣労働者の賃金の 決定の方法を定めることとされているため、同等以上であることが客観的に明らかとなるよう、協定対 象派遣労働者の賃金の額に加え、その比較対象となる一般賃金の額も記載することが必要である。


問1-7 労使協定には具体的な内容を定めず、就業規則、賃金規程等によることとする旨を定めるこ ととしてよいか。

 

答 差し支えない。なお、当然のことながら、法第 30 条の4第1項各号に掲げる事項(労使協定に定め るべき事項)については、労使協定自体に具体的に定めなかったとしても、就業規則、賃金規程等に具 体的に定めることにより、労使協定自体、就業規則、賃金規程等でこれらの事項を網羅的に定めること が必要である。 また、派遣元事業主は、法第 23 条第5項に基づき、厚生労働大臣に毎年度提出する事業報告書に労 使協定を添付しなければならないこととされているところ、法第 30 条の4第1項各号に掲げる事項が 労使協定自体ではなく、就業規則、賃金規程等に定められている場合には、労使協定本体に加えて、労使協定で引用している就業規則、賃金規程等もあわせて事業報告書に添付しなければならない。


 

 



以上について、私が気づいた点を少しまとめてみます。
 

ひとつめのポイントは、労使協定の締結単位。

この点については、以前からさまざまな意見があり、実務取扱の方向が注目されていましたが、やはり複数の事業所を一括することが可能という理解になりました。

実務的には頷ける内容ですが、「関東地方に所在する事業所で労使協定を締結」という例が挙げられているのは興味深いでしょう。

「関東地方」というのは、具体的な移動という観点で考えたら相当広いエリアです。

待遇の引き下げを目的としない、派遣先の地域指数を選択するという念押しがされていますが、逆にいえば賃金の水準が維持される方向であればある程度は裁量的な取扱いを認めるという内容です。

次の問1-4で過半数代表者の選出方法に触れていますが、36協定や就業規則の過半数代表者の選出の単位とは異なるケースが出てくることには留意する必要があるでしょう。



そして、労使協定への記載事項。


派遣労働者の賃金は最も重要な記載事項となりますが、労使協定自体に具体的な内容を定めず、就業規則、賃金規程等で網羅的に定めることも可能とされています。

この内容をどう理解するかですが、私は具体的に書きたくても書ききれないケースが想定されるからだと考えています。

就業規則(賃金規程)は過半数代表者の意見聴取も監督署への届出も必要なため、変更ごとに手続きは煩雑。

しかし、労使協定は届出は不要でそもそも1年ごとに見直すものなので、できれば協定にすべて書き込んで完結させたい。

このように考える人も多いと思います。

ただ、法定の協定事項のうち、以下の点をすべて協定に網羅することは実務的にはかなり難しいです。



☑ 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験等の向上があった場合に賃金が改善されるものであること

☑ 賃金の決定にあたって、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験等を公正に評価すること



具体的には、やはり就業規則、賃金規程に定めることになるケースがほとんどだと思われます。

この場合、「法第 30 条の4第1項各号に掲げる事項が 労使協定自体ではなく、就業規則、賃金規程等に定められている場合には、労使協定本体に加えて、労 使協定で引用している就業規則、賃金規程等もあわせて事業報告書に添付しなければならない」とあることにも留意したいものです。