6月29日の参院本会議で「働き方改革関連法」が可決成立しました。この法律は、労働基準法、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法など、8本の法律が一括された大改正であるため、新聞やテレビなどのメディアでも大きく報道されました。具体的には、以下の内容が大きな柱となります。


1 残業時間の上限規制の強化(罰則付)
2 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)
3 高度プロフェッショナル制度の創設(労働基準法などの改正)

 

派遣法については2の内容が該当します。なぜかメディアではあまり取り上げられていませんが、法律案要綱の約3分の1(全45ページ中の14ページ)というボリュームでもあり、こちらもけっこう大きな改正となります。



 

 


ちなみに今回の派遣法の改正内容をざっくりと挙げると、以下のような項目になります。

・労働者派遣契約
・不合理な待遇の禁止等
・職務の内容等を勘案した賃金の決定
・就業規則の作成の手続
・待遇に関する事項等の説明

・派遣先への通知
・派遣元管理台帳
・派遣先管理台帳

 

 

 


一番の目玉は、何といっても「不合理な待遇の禁止等」(第30条の3)です。さらっと読むととても難解な条文ですが、具体的な内容としては新しくなる短時間・有期雇用労働法第8条とまったく同じです。派遣労働者の均衡待遇について、パートタイマーや有期雇用社員と同じルールを適用するというのが、ここでの考え方です。

条文としては時間・有期雇用労働法第8条と同じ立て付けですが、ポイントは、均衡待遇の比較の対象は「派遣先に雇用される通常の労働者」という点です。「派遣先均衡方式」といわれる所以です。この点について、派遣元と雇用関係のある派遣労働者の待遇が、雇用関係のない派遣先の労働者と比較されるのはおかしい、という議論・見解は多数あります。

 



そこで今回の改正派遣法の不合理な待遇の禁止等の措置には、「派遣先均衡方式」に加えて、もうひとつ「労使協定方式」が存在します。それが次の条文である第30条の4です。こちらは条文上は“原則の例外”とされていますが、派遣元の現実的な事業運営の方向性等を考えると、むしろこちらを選択するケースの方が多くなるのではといわれています。

派遣元が労使協定を締結した場合には、その内容にしたがって、均衡待遇についても派遣元との比較において実施していくものとすることになります。そうすると、派遣元における労使協定のあり方がますます重要視されるようになっていきます。具体的には、協定において「派遣労働者の賃金の決定の方法」を規定することが求められることになり、今後派遣元は派遣労働者に適用される“賃金制度”をしっかり見直し、整備していく必要があります。


 


さらに、均衡待遇の比較対象として考慮される協定事項には、「派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額」(同条1項2号イ)が挙げられています。具体的な金額は省令で定められることになり、労働政策審議会での議論に委ねられるわけですが、「派遣先均衡方式」の実際の運営状況によっては実質的に有利不利が生じてしまう可能性もあり、今後の方向性を見定める必要があります。
 

そしてポイントは、「派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、その賃金を決定すること」(同条3項)とあるところです。このことが「協定方式」のひとつの要件とされているため、派遣元は今後は簡素なものであれ、派遣労働者のための“人事(評価)制度”を整備していくことが必要となります。

 



同一労働同一賃金の施行時期については、大企業が2020年4月、中小企業が2021年4月となり、労働時間の上限規制や高プロ、有給休暇などよりは少し先となりますが、派遣事業の運営全般にもかかる変革が求められるケースも多いことから、早めの対応が必要となります。派遣法については、とりわけ具体的な内容が省令等に委ねられる立て付けとなっているため、まずは今後の審議会の動向に注視したいものですニコ