このブログでは、文教委員会の一般質問で取り上げたもう一つのテーマ「学童保育指導員の処遇について」の概要を報告します。

11月19日、とんでもない方針が示されました。
内閣府地方分権有識者会議の専門部会において、内閣府と厚労省は来年の通常国会で児童福祉法を改正し、同法に基づき厚労省令で定める指導員配置の「従うべき基準」を「参酌すべき基準」へと後退させるというのです。さらに政府は今月末にも閣議決定しようとしています。最悪です。

政府は、基準緩和の理由として指導員不足の解消を理由にしていますが、指導員不足の原因は賃金の低さに問題があるのであって基準が厳しいからではありません。この最低限の従うべき基準を廃止することは、放課後の子どもの安全と安心を投げ捨てることに他なりません。このことを冒頭に述べて質問に入りました。

堺市の放課後児童健全育成事業は、
①「のびのびルーム(厚生労働省所管)」
②「すくすく教室(文部科学省所管)」
の2つあります。

この2つを併せた平成29年4月1日〜平成30年3月31日までの行政区ごとの延べ開設日数は以下の通りです。
・堺区4,688日
・中区3,809日
・東区2,637日
・西区4,102日
・南区5,860日
・北区4,395日
・美原区1,758日

また、基本配置と追加配置指導員が一人でも充足していなかった日数と非充足率は以下の通りです。
〈基本配置数が充足していなかった日数〉
・堺区149日
・中区82日
・東区88日
・西区210日
・南区87日
・北区74日
・美原区45日
全体の非充足率は2.7%

〈堺市が必要と認めた追加配置指導員数が一人でも充足していなかった日数〉
・堺区2,252日
・中区1,623日
・東区944日
・西区1,973日
・南区1,882日
・北区1,748日
・美原区229日
全体の非充足率は39.1%

上記の実態を市教委に対し、実態把握はどのようにしているのか尋ねました。市教委はそれに対して「事業者から提出される業務日誌」により確認しているとのこと。そんな実態把握の仕方だけで事足りるとは到底思えません。それはさて置き、指導員不足の問題が堺市も例外ではないことが分かりました。

私から指導員不足解消のために「市教委として指導員の賃金に係る処遇改善は必要だと思うか」と率直に尋ねると、市教委は「指導員の賃金に係る処遇改善は課題であると認識している」と回答。「必要」と言い切ってくれなかったのは残念でしたが、少なくとも認識はしているようでした。

そうで有れば、課題をそのままにして良い訳はありません。そこで国の「キャリアアップ処遇改善事業」を活用することを提案しました(同事業を活用した名古屋市では年収500万円、橿原市では3年後に年収440万円に上がる予定)。

しかし、市教委の回答はこうです。
「賃金改善に必要な経費を補助するキャリアアップ処遇改善事業については、厚生労働省の補助金であり、文部科学省の放課後子ども教室事業(すくすく教室)には交付できないため、本市の事業に導入すれば同じ学校で類似の仕事内容をしている指導員に待遇差がでる可能性があるため、現段階において導入していません。しかしながら、指導員の処遇改善は課題であると認識しています」って、市教委は人ごとのようですが、そもそも待遇差ができる状態をつくったことに対して責任を感じていないのでしょうか。

その責任を感じているなら、厚生労働省と文部科学省所管の事業を同じ学校で実施していたとしても、市教委として指導員の処遇改善の取り組みを行うべきと指摘し、どうするつもりなのかとさらに問いました。

市教委は「本市としては、指導員の処遇改善を課題と認識しているところであり、厚生労働省所管の「のびのびルーム」だけでなく文部科学省所管の「すくすく教室」に勤務する指導員も含めた処遇改善の補助制度の構築や運営にかかる委託料の確保に努めてまいります」と答弁しました。

そこで問われるのは、如何にして確認に指導員賃金改善へと繋げていくかです。堺市の放課後児童健全育成事業は「公設民営」で、現在はプロポーザル方式で委託業務事業者選定をしています。

↑大阪学童保育連絡協議会の中の資料です。

そのような形態のもとでは(ご覧の通り)労働条件は白紙状態。内容が全く分かりません。

そう考えると、委託料の拡充をしたとしても処遇改善へと繋げていけるのかとの懸念がわいてきます。因みに、補助金と委託料の違いは簡単に説明すれば以下の通りかと思います。

〈補助金の場合〉
・継続的に実施される保障はない
・処遇改善の目的を持って支給できる
〈委託料の場合〉
・市単費になるので予算確保に当局と議会が関われる
・運営費全般に含まれるので行き先が不透明

こうやって見ると、労働条件が不透明なままで委託料を拡充し処遇改善を行ったとしても、市教委はその実態を把握することは出来ません。ここにもプロポーザル方式による問題があるのではないでしょうか。市教委は指導員の置かれている現実をしっかりと把握して低賃金を改善し、指導員不足を解消するべきです。

さて、冒頭に述べた国が指導員配置基準の緩和する動きに対して埼玉県議会、埼玉県東松山市議会、福岡県議会、岩出県議会、札幌市議会で「指導員配置基準堅持を求める意見書」が提出されています。

そこで、私は放課後児童健全育成事業の整備及び運営に関する基準の変更について市教委の認識を質しました。

市教委は「本市においては、平成27年度4月1日から『堺市放課後児童健全育成事業の整備及び運営に関する基準を定める条例』を施行しております。本条例において、放課後児童の健全育成、安全確保の観点から、国の放課後児童健全育成事業の整備及び運営に関する基準に定めるとおりとしております」と回りくどい答弁が返ってきました。


つまり、
・第5条 支援の目的(参酌すべき基準)
・第9条 設備(参酌すべき基準)
・第10条 児童の集団の規模(参酌すべき基準)
・第18条 開所日数、開所時間(参酌すべき基準)
・その他

は、既に「参酌すべき基準」になっているが市教委としては「放課後児童の健全育成・安全確保の観点」から「従うべき基準」でなくても、国の定めるとおりにしている(出来てないこともあるが目指してる)ということです。

要するに、遠回しと言えども、例え最悪の場合(基準緩和されたとしても)になったとしても堺市教育委員会は「放課後児童の健全育成・安全確保の観点」から指導員配置の基準を堅持する旨の答弁をさせることができました。

堺市議会議員
森田こういち

http://www.kensakusystem.jp/sakai-vod/committee/index.html

録画中継は、会議の翌日から起算して、概ね3日後(土・日・祝日を除く)からご覧いただけます。スマートフォン・タブレット端末からも視聴可能です。