昨日は、びわ湖ホール プロデュースオペラ  ワーグナー作曲 『ローエングリン』の1日目を観てきました。

 

びわ湖ホールHPの特設ページに、今回の公演について以下のように記載されているのを転載させて頂きました。

 

総力を挙げて制作するプロデュースオペラ セミ・ステージ形式で上演
びわ湖ホールが総力を挙げて制作する「プロデュースオペラ」は、「創造する劇場」を掲げるびわ湖ホールが、1998年の開館時より毎年、国内外から第一線で活躍するキャスト・スタッフを集め、芸術監督のもと制作し、全国、そして世界へ発信し続けてきたオペラ・プロダクションです。今回は、新型コロナウイルスの感染症拡大防止のため完全なる舞台上演ではなく「セミ・ステージ形式」で上演します。
※セミ・ステージ形式・・演奏会形式に照明など演出効果を加えた上演形式


ロマンティック・オペラ『ローエングリン』を上演
<びわ湖リング>後の注目のワーグナー第一作

ワーグナー畢生の大作<ニーベルングの指環>全四作を毎年一作ずつ新制作する一大プロジェクト 通称<びわ湖リング>を終えた沼尻竜典。その次に沼尻芸術監督が選んだのが、同じくワーグナー作曲の『ローエングリン』です。白鳥の騎士ローエングリンと公女エルザの悲恋を描き、「婚礼の合唱」「エルザの大聖堂への入場」「前奏曲」と音楽的にも聴きどころが多く、「ロマンティック・オペラ」としても人気の高い作品。四作すべてチケットが完売(『神々の黄昏』のみ新型コロナウイルスの影響で無観客上演)した<びわ湖リング>後の第一作として注目度の高い公演です。

 

*終演後のホールHPに掲載された写真をお借りしました。

 
セミステージ方式がどんな公演だったのかを、写真を見ながら記載します。
この写真は舞台の最奥手から客席に向かって撮影されたものです。ステージは4面舞台の二つを使用し奥行きをとっています。一番手前に写っている椅子に合唱のメンバーが出番に応じて着席し歌唱の際は立唱しました。合唱団はソプラノ14名、アルト11名、テノール12名、バス12名でびわ湖ホール声楽アンサンブルの現役メンバーとソロ登録メンバーを中心に構成されていました。歌唱中もマスク着用のまま、大変だったと思います。
合唱団よりステージ側にオケの京響が配置され、ピット内に大編成で収まると密になるという配慮から、ステージ上で演奏されました。上手後方に木管、下手に金管、コントラバスは合唱団の前。ファンファーレを演奏するためのバンダも左右サイドバルコニー下のステージ横に配置されていました。
そして、写真の青い幾層かに積まれた段がセミステージです。通常使用されていたオーケストラピット上部にあたります。
キャストの方は出番に応じて舞台袖上下双方から登場し、セミステージの左右中央を移動しながら、通常のオペラ公演よりは動きが小さいものの歌唱だけでなく身振り、表情の変化により演技をされていました。
衣装は下に掲載した写真のように、燕尾服とドレス(森谷さんのドレスは第1・2幕と第3幕では異なり写真は花嫁を思わせる第3幕のもの)でした。舞台装置はないものの合唱団の背後、上の写真を撮影している場所上方にスクリーンがあり場面に応じて効果的な画像が投影されました。

*「終演後の日本の宝たち」との注釈つきで掲載された写真をお借りしています。

座っておられる左が演出の粟國淳さん、右が沼尻竜典芸術監督、後列で立っておられるのが、左から、テルラムント役の小森輝彦さん、合唱指導の大川修司さん、ハインリヒ国王役の妻屋秀和さん、ローエングリン役の福井敬さん、エルザ役の森谷真理さん、オルトルート役の谷口睦美さん、王の伝令役の大西宇宙さんです。

 

いつも完売になるプロデュースオペラですが、昨日はコロナ禍の影響か、来客者は幾分少なく、前3列とサイドバルコニー最前部を使用しない会場の70~80%くらい。でも、1度目の緊急事態宣言明けからの公演では、一番の入りだったのではないかと思います。

来客には着物姿のご婦人も多数おられ、本公演のオペラ講座で講師をされた東条碩夫先生、プレトークマチネに沼尻芸術監督と共に出演された京都大学の岡田暁生先生、音楽評論家の加藤浩子さん(皆さんマスクされていましたが、東条先生・岡田先生は直ぐに判り、加藤さんは会場でお見受けしてきっとそうかなと思って、後でググったらTwitterに写真を投稿をされているのを確認しました)も来場されていました。

開演前や休憩中のホワイエは、人がかなり多く、会話を控えてとアナウンスされても、言うことをきく人は少ないようでした。マスクをしていれば大丈夫、とか、こういう生活にもう慣れてしまったということなのでしょう。

場内のカフェも昨日から営業再開となっていました。買われた方は、周りの方と距離をとって、飲むときだけマスクをずらしておられたので、街の飲食店が営業されているのと同じことかなと思います。他のホールもこれからは営業を徐々に再開されるでしょう。

 

そして、肝心の公演ですが、素晴らしかった!

 
昨年の「神々の黄昏」が無観客上演で無料オンライン配信となったので、一昨年の「ジークフリート」以来の生鑑賞でしたが、ホールの総力をあげて制作するというだけあって、やっぱりプロデュースオペラはすごいと思いました。
キャストは国内の方だけですが、トップ歌手が揃っていて、みなさん、素晴らしい歌声。
ローエングリンが十八番の福井敬さんは圧巻。
また、エルザの森谷真理さん、当初予定だった安藤赴美子さんが体調不良で交代と2/12付で発表されての出演。
本番まで1か月を切った状態で受託、しかも加藤浩子さんのTwitterによると昨日の公演がロールデビューだったとのこと。
それで、あの歌声、すごすぎます。特に第3幕のローエングリンの素性について、福井さんと掛け合うシーンはすごかった!
オペラや第九で聴いたことのあるハインリヒ国王の妻屋さん、テルラムントの小森さん、王の伝令の大西さんは勿論、安定の歌唱。
そして、僕は初見だったオルトルートの谷口睦美さんがまた素晴らしかった。第2幕でのテルラムントとの二重唱や、エルザに一旦寄り添うふりをしていながら態度を一変させ罵る魔女を見事に演じておられました。
 

今回の公演、セミステージ方式ゆえ、歌唱と音楽を充分に堪能する点では、通常のやり方よりも良かった点もあるように思います。

一昨年のジークフリートで主役の方の声がオケの演奏に負けて聴きずらいように思えたことも、今回の公演ではオケよりも主要キャストが客席に近い位置で唄われたこともあって全くなかったし、このやり方ならキャストの力量不足や体調不良がある場合でも観客の不満が減少するように思います。また、舞台装置にお金をかけなくて済む分、費用削減、ひいてはチケットの低価格化にも繋がると考えられるので、そういう利点も含め、沼尻芸術監督が新しいオペラ公演方式になるかもとおっしゃっているのは、頷けるように思います。

 

開演14時、2度の25分の休憩、4度のカーテンコール含め、終演18時45分と5時間弱の長丁場でしたがとても充実した公演でした。

 
指揮:沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)
ステージング:粟國淳
照明:原中治美
美術構成:横田あつみ
音響:小野隆浩(びわ湖ホール)
舞台監督:菅原多敢弘

管弦楽:京都市交響楽団

コンサートマスター:石田泰尚

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル

 

[キャスト]    
ハインリヒ国王:妻屋秀和    
ローエングリン:福井敬    
エルザ・フォン・ブラバント:森谷真理   
フリードリヒ・フォン・テルラムント:小森輝彦   
オルトルート:谷口睦美   
王の伝令::大西宇宙 
ブラバントの貴族Ⅰ:谷口耕平*    
ブラバントの貴族Ⅱ:蔦谷明夫*   
ブラバントの貴族Ⅲ:市川敏雅*    
ブラバントの貴族Ⅳ:平 欣史*)    
小姓:熊谷綾乃*、脇阪法子*、上木愛李*、船越亜弥*    
*びわ湖ホール声楽アンサンブル

 

最後に、ローエングリンってどんな話ということで、ウィキペディアに記載されているあらすじを若干、加筆や削除を加え転載します。

 

第1幕
第1場
前奏曲。アントウェルペンのスヘルデ河畔。ハインリヒ王がハンガリーとの戦いのために兵を募る。そこへフリードリヒが現れ、ブラバント公国の世継ぎゴットフリートが行方不明になり、ゴットフリートの姉エルザに弟殺しの疑いがあるとして王に訴える。王はエルザを呼び出し、釈明を促す。
第2場
エルザは夢見心地の様子で、神に遣わされた騎士(正体はローエングリン)が自分の潔白を証明するために戦うと話す。王の伝令が騎士を呼び出す。すると白鳥が曳く小舟に乗って騎士が登場する。
第3場
騎士は、自分がエルザの夫となり領地を守ること、自分の身元や名前を決して尋ねてはならないことを告げ、エルザはこれを承諾する。「神明裁判」によって、フリードリヒと騎士は決闘し、騎士が勝利するが、フリードリヒは命を助けられる。
第2幕
第1場
夜のアントウェルペン城内。庭の物陰で、フリードリヒは妻オルトルートに、決闘に敗れた自分が追放処分になること、エルザに弟殺しの罪を着せるようけしかけたのはオルトルートであることをもらして、悪態をつく。オルトルートは、騎士が決闘に勝ったのは魔法を使ったためであり、名前と素性を言えと迫られるか、あるいは体の一部でも切り取れば魔法が解けるという。フリードリヒは気を取り直し、2人は『復讐の二重唱』を歌う。
第2場
バルコニーに現れたエルザにオルトルートは嘆いて彼女の同情を誘い、さらに騎士への疑念を吹き込む。オルトルートはキリスト教以前の神々として、男神ヴォータン、女神フライア(のちに楽劇『ニーベルングの指環』にも登場する)の名を呼ぶ。
第3場
夜が明けると王の伝令が現れ、フリードリヒがまがい物の力を用いて神前決闘を為したことを咎め、ブラバントから追放し、神聖ローマ帝国騎士の称号を剥奪することを宣言する。これにより、フリードリヒは、フリードリヒ・フォン・テルラムントからフリードリヒ・テルラムントになる。
続けて王の伝令は、騎士がエルザと結婚してブラバントの守護者となることを告げる。4人の貴族が東方出征への不満をもらしているところへフリードリヒが現れ、企てを話す。
第4場
婚礼の式のために礼拝堂へ向かうエルザ。『エルザの大聖堂への入場』の音楽。突然オルトルートが行列を阻んでエルザを罵り、素性の知れない騎士を非難する。
第5場
ハインリヒ王と騎士がやってくるところ、フリードリヒも群衆に向かって騎士が魔法を使っていると告発し、名前と素性を明かせと迫り、エルザは動揺する。騎士はフリードリヒらをエルザから引き離し、「自分に答えを要求できるのはエルザただひとり」だと答える。エルザは騎士の戒めを守る事を高らかに宣言したため、騎士は「さあ!神の御前に赴こう。」と促し、2人は礼拝堂へと入っていく。
その後姿を、一人恨めしそうに見つめるオルトルート。しかし気が萎えるどころか、ますます復讐の念を強める。禍々しい者の勝利を確信した如き、不気味な音楽が流れて、幕が降りる。

第3幕
第1場
華々しい前奏曲のあと、『婚礼の合唱』(いわゆる「ワーグナーの結婚行進曲」)。
第2場
エルザと騎士は初めて二人きりになる。騎士はエルザに疑いの心を持たないように再三再四説く。しかし、エルザは次第に不安が募り、夫に対する疑念にも似た気持ちは抑えられず、とうとう騎士の素性を問い詰め、騎士は困惑する。そこへフリードリヒが仲間の貴族を率いて乱入し、エルザは即座に騎士に刀を渡す。騎士は渡された刀でフリードリヒを一撃で倒す。するとそこにむなしくも悲しい空気が静かに漂う。永遠のしあわせは瞬時に奪われた。しばらくの沈黙の後、騎士は、お付きの女官に命じてエルザを着替えさせる。
第3場
場面転換の間奏はトランペットとティンパニの壮大なファンファーレ。第1幕と同じスヘルデ河畔。王や大衆はいよいよ色づくも、エルザはうなだれて足取りも重く、続いて旧テルラムント臣下が亡主の遺骸を掲げて入場する。そこに騎士が登場するが、「皆さんと戦いに赴く事が出来ない。」と宣言し、同時にエルザが禁問の戒めを破った事を訴えた。騎士は続けて、悲しみ、苦しみ、逡巡するも、力を振り絞り、ハインリヒ王の前で、「私は、自分はモンサルヴァート城で聖杯を守護する王パルツィヴァルの息子ローエングリンだ」と名乗る(この名乗りの歌ではLohengrinを「ローヘングリン」のように発音するのが通例である)。白鳥が小舟を曳いて迎えにやってくる。ローエングリンは角笛と刀と指輪をエルザに手渡すが、指輪だけは丁重にエルザの手の中に置いた。復讐を遂げた事に満足したオルトルートはあざ笑うが、ローエングリンが静かに祈りを捧げると、白鳥は人間に姿を変える。その白鳥こそ、ブラバントの正嗣であり、オルトルートの魔法によって行方不明にされていたゴットフリートだった。叫び声を上げて倒れるオルトルート。ローエングリンが去り、エルザもまたゴットフリートの腕の中で息絶える。

 

演出により、一部、上記のあらすじとからは簡素化されている場面(例えば、第3幕第1場フードリヒがローエングリンに倒される場面は画像での表現のみとなっていたとか、第3幕第3場の最終場面でオルトルートが倒れエルザも息絶えるとなっている場面は、それを連想させる絶望のポーズをとって閉幕となった等)もありましたが、大筋は記載の通りです。

 

今日は、昨日と打って変わって、午後から、小野リサさんのコンサートに行ってきます。

まだ、ローエングリンの余韻が残っていますが、全く異なる内容なので、楽しんでこよう思います。